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病院薬剤師が学んだ"薬の粉砕について"【調剤と情報/2024年7月刊行】

大学の製剤学などでも学習した
製剤上の工夫や薬の粉砕による影響

病院という場で働いていると
実は患者さんが服用する時に居合わせる
というタイミングはそう多くありません。

しかしながら
今後在宅医療に関わる上では
服用困難な患者さんに対する課題に
直面するケースが多くなると思われます。

一歩踏み込んだ治療の提案を目指し
7月発刊の「調剤と情報」等を参考に
改めて製剤の勉強していきます!



そもそも粉砕が必要?

錠剤が飲み込めない場合の対応として
まず1番に看護師さんから聞かれるのは
粉砕できるかどうか」かもしれません。

粉砕可否の判断をするにあたり
まずは"インタビューフォーム"を確認。
他には"錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック"等
データが集積されている資料を調べます。

一方で、まず1番初めに考えるのが
粉砕以外の選択肢」という方は
どれくらいいらっしゃるでしょうか?

粉砕以外の対応について
本書では以下の方法が紹介されています。

*粉砕以外の対応例

▷外用剤への剤形変更
▷口腔内崩壊錠への剤形変更
▷小さい錠剤への変更
▷1日1回投与製剤への変更で負担軽減

粉砕可能であれば粉砕しよう!ではなく
薬剤師としての知識を最大限に活かして
剤形変更なども提案していけるといいですね。


粉砕で起こる問題点

●粉砕のデメリット

粉砕により生じる問題点は
色々な側面から考えることが大切です。

・効果や安全性の変化
・苦味やにおいが強くなる
・潰瘍や麻痺
・暴露

▶︎苦味やにおいが強くなる
食事に混ぜることで
食事拒否につながる可能性もあり
注意が必要です。

▶︎潰瘍や麻痺
代表的な薬剤はビスホスホネート製剤
直接粘膜に作用しないように
服用上の注意点の指導は大切です。

▶︎暴露
抗癌剤など医療従事者にも危険がある薬品は
Hazardous Drugs(HD)と位置付けられ
個人防護具の着用が推奨されています。


●現場で気をつけるべき具体事例

pHの観点から配合時に生じる問題について
今回は以下の2種類を例に紹介します。

酸化マグネシウム
オルメサルタンメドキソミル

内服薬の場合
胃酸(pH1)を通過することから
比較的、酸に強い薬物が選択されます。

一方で、胃酸で分解する薬物は
腸溶性製剤となっています。

したがって、考える必要があるのは
塩基(アルカリ)性での安定性になります。


<酸化マグネシウム>

最も使用されている薬剤の1つです。

酸化マグネシウムの懸濁液は
pH10-11の強アルカリ性を示します。

そのため、混合した薬剤の
色調変化や含量低下などの問題
起こす可能性があります。


<オルメサルタンメドキソミル>

オルメサルタンメドキソミルは
オルメサルタンをエステル化した
プロドラッグ製剤です。

このエステル結合の加水分解は
酸性では可逆的ですが
アルカリ性では非可逆的に起こります。

そのため
アルカリ性での溶液では
分解が起こりやすくなります。

以上から
プロドラッグ化を目的として
エステル化されている内服錠

酸化マグネシウム錠の混合粉砕は
避けるのが望ましいといえます。


今回勉強してみて

今回は臨床現場で行われている
錠剤の粉砕に関する問題について
薬学知識を活かした対応を学びました。

処方監査では
腎機能や相互作用など様々な側面から
最適な医療を考えていきます。

今後はさらにもう一歩
実際の服用場面も考慮して
よりよい医療を届けられたらと思います。

今回学習した本書では
徐放性製剤の特徴や製剤上の工夫について
まだまだ興味深い情報が記載されています。

ぜひ皆さんも手に取って
日々の薬剤師業務のなかで
ご活用いただけたらと思います!

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