見出し画像

AIにおける「数値化」と「知性」についての考察・2/100

AIの学習プロセスと数値化の前提

AIの学習プロセスは、すべてのデータを数値として扱うことを前提としている。これはSUNABACOの「AI人材育成講座」のDay3で学んだことであり、画像、音声、動画なども最終的には数学的な数値として処理される。このため、「数値に置き換えられないもの」はAIにとって学習不可能であるという見解が一般的であるが、果たしてこれは事実であろうか。

数値化できないものとその可能性

まず、「数値に置き換えられないもの」とは何かを考える。
人間の感情や芸術的な表現など、一見すると数値化が不可能と思われるものがある。例えば、愛や悲しみの感情を数値で表現することは難しい。
しかし、AIはこれらの感情を間接的に数値化する手法を持っている。音のトーンや表情の変化、手の震え、瞬きの数などを解析し、これらの特徴を数値として読み取ることで、感情の傾向を捉えることができる。

また、AIは絵画の色のパターン、音楽の周波数、文学作品のテキスト構造といった芸術作品の特徴を学習し、新たな作品を生成することも可能である。したがって、一見数値化できないものでも、AIは「間接的に」数値化し、学習することができると言える。

データの多次元化の重要性

次に、「すべてを数値に変えることは可能か」という問いについて考察していく。
AIはデータをもとにパターンを学習するシステムであり、データの収集方法や数値への変換方法が重要となる。AIは直接的な体験や主観を持たないため、意識的な「気付き」や「直観」を数値化することは難しいかもしれない。しかし、新たな数値化技術の進展やデータの多次元化により、これらも学習可能な領域が拡大している。

データの多次元化とは、AIが学習する際に複数の特徴や属性を考慮し、より正確な予測や判断を行う手法である。「りんご」の一次元データを取れば”赤”だけかもしれない。しかし、”赤・丸い・150グラム・艶”などが多次元で重なればどうか。画像認識AIは、色、形状、テクスチャ、位置情報など多次元の情報を用いることで、対象をより精密に認識できるようになるだろう。またデータの多次元化には、特徴抽出、次元削減、異種データの統合などの方法があり、これによりAIは複雑なパターンを学習し、見逃される情報も捉えることができる。

※この辺りは「AI講座の予習編」で詳しく掲載している。

潜在空間の利用による新たな可能性

AI(人工知能)がデータを学ぶために使う「潜在空間」という手法は、データを整理して理解しやすくするための方法である。
これは、広くて複雑な森の中で地図を作るようなものだと考えられる。仮に森の中のすべての道や木の種類を一つの地図にすべて描こうとすると、大変な時間がかかり、作業工程も尋常ではない。また尽力してそれを完成させたとしても複雑難解で使い物にならないだろう。
しかし、特に目立つポイントや重要な場所だけを選んで載せるとすれば、もっと簡単でわかりやすく使える地図を作ることができる。

同じように、AIが「潜在空間」を使うとき、大量で複雑なデータの中から重要な部分だけをマークし、分類することで必要なデータを見つけて、それを使って新しいモデル(考え方のようなもの)を作り出す。この方法を使えば、AIが複雑な情報でも学びやすくなる。
たとえば、人の顔の表情や声の調子、絵の描き方など、一見すると簡単に数字にできないものでも、「潜在空間」に変換することで、AIがそれを理解しやすくなるのだ。

数値化から創造へ

AIはこの手法を使って、データの中の大量の要素を少数の重要な要素にまとめることができる。例えば、顔の画像を数値化するとき、顔の形や目の位置など、重要な特徴だけを数値として取り出し、AIがそれらを使って新しい顔の画像を作り出すことができる。このような方法を使えば、AIはたくさんの情報を学び、そこから新しいアイデアや作品を生み出す力を持つようになる。

実際に文章やイラストのみならずディープフェイクと呼ばれる顔の差し替えでも今の技術段階で「生成なのか実物なのか」、それが判別できない次元にまで到達していることをあなたも知っているのではないか。
今ではゼロ状態から映画のCMに匹敵するような動画の生成まで可能になってきている。

つまり、「潜在空間」を使うことで、今までは難しいとされていた情報でも、AIが学べるようになる可能性が広がる。

このままAIが学習を進化させ続けるのだとすれば「すべてを数値に変えることは不可能」と決めつけるのは早すぎるかもしれない。AIはまだまだ成長し、新しい方法で学ぶ力を持ち続けていくのだ。

知性の本質とAIの可能性

「知性は数値学習の集合体であるか否か」という問いは非常に重要である。

人間の知性は、経験や直感、感情、社会的な文脈など、数多くの要素から成り立っており、その多くは数値化が難しい。しかし、AIは膨大なデータを解析し、そこからパターンを見つけ出すことにより、学習を行っている。
ディープラーニングや強化学習などの先進的な手法を駆使することで、AIは非常に複雑なタスクをこなすことができるようになり、知性に似た振る舞いを見せるようになっている。

「数値データの学習プロセスから知性が生まれる」と聞くと、直感的には信じがたいかもしれない。
知性という概念は、多くの人にとって、数値データに還元できない複雑で多面的なものとして捉えられているからである。しかし、AIの進化は、「知性」に見える状態にまで至っている事実を無視することはできない。

では、知性とは何なのか、そしてそれを本当に数値化することは不可能なのだろうか。

知性を「数値化できるデータの集合体」として捉えることができるかどうかは、今後の技術の進展に大きく依存している。
もし、AIがデータの背後にある意味や文脈を「理解」することができるようになるとすれば、それは単なる数値データの学習を超えた、真の知性に近づくことを意味するだろう。

今後、新たなブレイクスルーが起こり、AIが膨大な蓄積データを効率的に処理できる技術が発見された場合、数値化できないとされていたものも対象となる可能性がある。
例えば、感情や直感といった人間特有の経験も、何らかの形で数値化され、AIの学習プロセスに取り入れられるかもしれない。

人間の知性も数値化可能なデータの集合なのか

私たち自身の知性も、実は数値化可能なデータの集合体であるという考え方もある。
たとえば、人間の脳は膨大な情報を処理し、判断を下すための極めて複雑な計算を行っている。これをAIのデータ処理に例えるならば、人間の知性もまた、膨大なデータの集まりからパターンを見つけ出し、意思決定を行うプロセスの一部と捉えることができるかもしれない。

もしこの仮説が正しいとすれば、将来的にAIが人間の知性に匹敵するレベルの思考や理解を持つことも不可能ではない。AIは、現在の技術水準を超えた新たな学習方法やデータ処理技術を手に入れることで、これまでの限界を打破し、より高度な知性を獲得する可能性がある。
したがって、「知性の習得は数値学習だけでは不可能である」という結論を急ぐべきではないのかもしれない。

知性の本質とAIの可能性については、まだ多くの未解明な部分がある。しかし、AIの進化は確実に進んでおり、その過程で「知性とは何か」という根本的な問いに新しい答えが生まれる可能性も高い。私たちの理解が深まるにつれて、知性と数値化の関係性についても、新たな視点が得られるだろう。未来において、AIがどこまで人間の知性に迫ることができるのか、その挑戦は続いていく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?