『BtoBマーケティング偏差値UP』を読んで
■初めに
クライアントと接していて、感じるのはどの業種や業態でも
顧客情報が整理されていないという課題です。
・自社サービス利用者
・LTV
・流入元
などなど、聞いてもわからないという経営者の方や担当者の方が殆どです。
これはもちろん改善すべきですが、ある種当たり前になっている文化に感じました。
今回の選書は、『BtoBマーケティング偏差値UP』という書籍になります。
日経企業のマーケティング事情や今後の必要性を知る事で、御社のWebチームの提案や自分自身のインプットによる、必要スキルの網羅を行います。
■書籍紹介
■日経企業の社内事情
多くの企業は、マーケティング部門とセールス部門に分割されており
上手く機能させるどころか
お互いの領域を取り合うようなポジションを取っているとの事でした。
確かに、リスティングプラスのクライアントでもマーケティング担当とセールス担当がいながら、マーケティング担当が現場の状況を把握していなかったりと部署間の隔たりが強い印象です。
大きな課題点として、企業の多くは自社のターゲットを把握していない、明確に設けていない事にあると考えられます。
広告を運用する以上、自社のターゲットとなる層を伺うと、多くの企業は曖昧な解答をします。
・獲得したい理想の顧客
・良く商品を利用する顧客
・市場にいる顧客
などなど、そもそものターゲットの前提が定まっていない事が多数です。
これは、日経企業の多くが「プロダクトアウト」寄りのビジネスを行っている事に由来します。
モノを作れば売れた=製品があるから、それを売るというプロダクトアウト現象が日本では当たり前になっていました。
しかし、時が進み情報社会となった日本では選択肢が多い中で狭いポジショニングを築いていく必要が出来上がり、
マーケットインの考え方が主流となりつつあります。
マーケットインは若い企業の動きでは、顕著ですがプロダクトアウト時代の会社では浸透しておらず、
業界の常識や社内権力者の鶴の一声でプロジェクトが進む事が多い状況です。
こういった企業はマーケティングではなく、広告を出して売る、営業をして売るが主流だったので
組織としては存在するものの、ぶつ切りされた組織体制になっています。
さらに、そもそも導入しているMAツールなども使いこなせていない場合が多く、
顧客情報の乱立や特定部署での保有に収まってしまっているケースが見受けられる様です。
つまり、多くの企業は何故商品が買われているかの情報が断片的にしか持ち得ていないという課題が隠れています。
■機能していないなんちゃって組織
インサイドセールスという言葉は、近年注目されつつあります。
自社マーケティングにで集まった顧客に対して、セールスではなく
ヒアリングを徹底して案件化するいわゆる中間ポジションを指します。
企業の多くは当然、会社存続の為にもインサイドセールスやデジタルマーケティングなどの流行している言葉に載せられて組織論などを導入するも、機能していない事が殆どです。
ここで言うインサイドセールスの機能していない場合とは、
例えば、インサイドセールス=ヒアリングだから若手や新人などに適当に電話を掛けさせれば良いという考えです。
案件化する際には、込み入った話をしなければ最前線のセールス部隊へは話が通しにくいですし、
決定率を上げるためのヒアリングができないケースもあります。
また折角のマーケティングの成果である、リストを保有していてもただ電話をかけてリストを枯渇させているケースもある様です。
この様に、組織に部署を作っても直ぐには機能しないケースが殆どです。
また、そもそも決裁権のある組織のトップ層が腰が重く組織変革にあまり乗り気でない場合もある様で、必要と分かっていても取り入れられない事情などもある様です。
人員不足以外にも、企業内のしがらみが存在する事もあるみたいです。
■マーケティングに戦略は必須
戦略とは元々、戦争などで軍師が策定する戦争学問に近いものになります。
また、一般的に戦略と戦術という考えが浸透していますが、
実際には戦略、戦術、戦闘教養の要素が存在します。
マーケティング戦略自体は下記の要素で成り立ちます。
■目的
戦争によって得られる成果
■戦略
目的を達成する為の基本的な計画
人、もの、金、時間、ネットワーク、情報
様々な要素を組み合わせる必要がある
■戦術
戦略達成の為の具体的なシナリオ
■戦闘
戦術を実行する個別の戦い
■戦闘教養
戦闘を行う際の決め事。
戦い方や先方、得意技や勝ちパターン
目的があっての戦略のため、戦略成功=目的達成になり得ます。
この内、戦闘教養とは自社にとっての得意技になります。
ある特定の状態に陥れば受注できるなどの、見込みを作る方法です。
この時、
「戦略」には自由度を与えず、「戦術」には自由度を与える必要があります。
本書では、下記の例が秀逸でした。
とある山岳会は、かつては有名なクライマーを数多く排出していた伝統ある会でした。
しかし、事故やスタークライマーの離脱が相次ぎ会はやがて人数減少などの下降路線へ。
その中でも、若手が入る時期はあり、チャンスを待っている状況でした。
そこで、再度、山岳会の復活を目論見、
「3年以内にエベレストの北壁を無酸素で制服する」という戦略を立てました。
目的=山岳会の復活に対して、難易度の高い登山を行う戦略です。
この後の誰と誰を登山させるか、装備は何を持たせるか、これらの決め事は戦術になります。
上述した、戦略への自由度を与えてはいけないというのは
エベレストの隣にあるローツェに登るという判断を下さない事です。
ローツェは世界4位の標高を誇る山でして、
ルート次第ではエベレストよりも難しいと言われています。
しかし、山岳会の復活に基づくスポンサーの確保や会員数増加を狙った際には
知名度を誇るエベレストに劣るローツェに妥協する訳にはいかないのです。
3~5年後にIPOを狙う目的で、その為には20年度は会社として○○の予算を追う。
こういった流れがある際に、簡単に追う予算を変える事は本来では出来ないという事です。
この様に、物事を因数分解すると自分達の行っている領域の判断や影響度がわかります。
よく言うリスティング広告の入札調整やキーワード追加なども戦術レベルでしかなく、
ビジネスをどれだけスケールさせたいかという目的からその為に必要な売上と現状のCVRを算出し、
乖離を見出しまずそこに到達させる戦略を考え、その直下に戦術を置くべきだったのです。
ビジネスも大局を見据えない事には、
物事が進みません。
一方、戦争でもビジネスでも最強の戦略は奇襲と呼ばれています。
奇襲は圧倒的な戦力差を埋める働きをします。
日本の真珠湾攻撃やかつての桶狭間の戦いなどはこれに該当します。
ビジネスでも、かつてはMicrosoftが他の計算ソフトの息の根を止める為に
書店に大量のExcel関連の書籍を並べて
占有した事や
Appleが携帯ではなくiPhoneを市場へ投下した事など記憶に新しいです。
■自社製品の立ち位置を知る
突然ですが、この図は1960年にエベレット・ロジャーズ教授に提唱された
イノベーションのベルカーブと呼ばれる曲線です。
実は本日に至るまで、市場での製品浸透度を推し量る普遍的なモデルとして採用されてきました。
イノベーター=初期市場
2.5%
アーリー・アダプター=初期市場
13.5%
アーリー・マジョリティー=初期主要市場
34%
レイト・マジョリティー=後期主要市場
34%
ラガード
16%
このベルカーブの理論はビジネスマンであれば誰もが理解すべき点であります。
扱う自社製品がベルカーブのどの位置にいるかで扱う戦略などが異なってくるからです。
一方、アーリー・アドプターとマジョリティの間にあるキャズム、
これは溝を現します。
一般的に、アーリー・マジョリティまで浸透したらその製品は市場で成功している見方ができるのですが
多くの製品はそこまで行きつかず、溝にハマっている事を揶揄しています。
一刻も早い脱出とそもそもの溝に落ちない取り組みが大切です。
■BtoB市場におけるカスタマー・ジャーニー・マップはジャーニーしない
BtoB商材、例えばパソコンのセキリュティなどは契約年数が複数年単位になっている事が多く、その他のクラウドサービスなども例に漏れません。
カスタマー・ジャーニー・マップとは、
顧客の購買に至るまでの1連の流れを可視化したものです。
当然、BtoCならば考慮すべき点ですか
toBの場合はジャーニーしない可能性が存在します。
導入が未検討から検討に入るスイッチが企業単位の為、
予測がしづらく
ある日突然、社内で必要になるケースがあるからです。
もちろん検討段階の選択肢に入っている事は重要ですが、カスタマー・ジャーニー・マップで
初回の接触点を明確に設ける事が難しいという、つまりジャーニーしないという理由はここにあります。
そして、契約が決まれば複数年はそのサービス領域へのセールスチャンスは失われます。
怖い事に、冒頭お伝えした顧客管理ができていないと、既にサービス導入した顧客へ無駄にステップメールを送信していたりと
セールスではなくノイズを続ける事になり再起は失われるでしょう。
つまりは、ビジネスチャンスの扉が閉まる前に日頃から自社をリーチする取り組みをしていく(おく)必要があるのです。
■まとめ
今回の書籍はマーケティングに関しての書籍でした。
その為か、普段見慣れるWebマーケティングに関する記載は極小数で、
MAはわかるもののSFAやリード・ジェネレーションなどなど
Webマーケティングでは出てこない領域の言葉が多数でした。
マーケティングという更に大局から見ていくと、まだまだ知らない要素がありますし
あらゆる企業がデータの取り扱いに苦労している現実を目の当たりにしました。
今後は戦略・戦術の観点から、マーケティングそしてWebマーケティングに対して、一貫性をもった提案ができる様にいたします。
■具体的TO DO
・提案資料で明確に戦略・戦術の説明を行う
→目標売上など聞く事を癖づける
→目標売上や利益などビジネスの根幹に携わる数値を把握する、理解する