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鍼灸はがんに効くのか?

はじめに言いますが、鍼灸でがんが治るわけではありません
ただし、その周辺症状に対しては有効なケースも多くあります。
担当のドクターと相談しながら治療を進めるのがいいでしょう。

鍼灸治療の概要

鍼灸は日本では補完代替療法として位置づけられていますが、中医学においては漢方と並ぶ確立された治療法です。鍼灸治療は陰陽五行理論や経絡経穴学説に基づいており、経穴に鍼や艾(もぐさ)などを用いて刺激を与えることで治療を行います。鍼灸の効果は、患者の体質や症状に応じて異なるため、多様な方法が採用されています。鍼灸は特に痛みや副作用の軽減を目的とした治療として注目されています。

がん治療における鍼灸の役割

がん治療の現場でも、鍼灸は補完的な支持療法として利用されています。がん患者に対する鍼灸の主な目的は、抗がん治療による副作用の軽減や患者のQOL(生活の質)の向上です。欧米の研究でも、がん治療における鍼灸の有効性が報告されており、痛みや吐き気の軽減、倦怠感の改善が確認されています。

鍼灸による痛みの軽減

鍼灸治療は、がんによる痛みの軽減に対して一定の効果があるとされています。特に耳介鍼治療は、無作為化比較試験においても高い効果が報告されていますが、全体的には限られたサンプルサイズや研究デザインの不備から、統一的な結論を得るにはさらなる研究が必要とされています。鍼灸による疼痛管理は、特に薬物治療と併用することで効果が高まる可能性があります。

吐き気や嘔吐の軽減

化学療法による悪心や嘔吐の軽減には、経穴刺激が有効であるとされています。電気鍼や指圧療法も、悪心や嘔吐の症状を軽減するために効果的であるとされており、いくつかのメタアナリシスでもその有効性が確認されています。鍼灸治療は、化学療法による急性期の嘔吐に対して特に有効であることが報告されています。

倦怠感の改善

がん患者における倦怠感の改善にも鍼灸が用いられています。数多くの研究で鍼灸が倦怠感を軽減させる可能性が示されていますが、他の試験では効果が確認されていないため、結論には至っていません。特に灸治療が、標準的なケアに加えて倦怠感の改善に寄与するという研究結果もありますが、さらなる質の高い研究が求められています。

その他の症状に対する効果

鍼灸は、がん患者の術後の尿閉や睡眠障害、ホットフラッシュ、放射線性口腔乾燥などにも利用されています。特に術後の尿閉に関しては、鍼灸が残尿量を減少させる効果が報告されており、放射線治療による口腔乾燥症状に対しても、唾液分泌量を増加させる可能性があります。しかし、これらの効果についても、質の高いエビデンスを得るためにはさらなる研究が必要です。

精神症状への影響

鍼灸治療が、がん患者の不安や抑うつなどの精神症状を軽減するかどうかについても研究が進められています。現時点では、鍼灸治療が精神症状の軽減に有効であるという決定的な証拠は不足しており、これについてもさらなる臨床研究が必要です。

免疫機能の向上と副作用

鍼灸治療が、がん治療に伴う免疫機能の低下や骨髄抑制を改善する可能性も検討されています。いくつかの研究では、鍼灸が免疫系を強化し、白血球の増加に寄与することが報告されています。また、灸治療は、がん患者の化学療法による白血球減少を改善する効果があるとされており、その有効性が注目されています。

有害事象と安全性

鍼灸治療は、一般的に安全とされていますが、軽微な有害事象として、痛みや皮下出血などが報告されています。これらの副作用は、重篤なものではなく、適切な施術が行われれば安全に治療を受けることができるとされています。

結論

鍼灸治療は、がん患者に対する補完代替療法として、痛みの軽減、倦怠感や吐き気の改善、免疫機能の向上など、多岐にわたる効果が期待されています。しかし、依然としてエビデンスの質やサンプルサイズの問題が残されており、今後の研究によってその有効性と安全性がさらに明確になることが期待されます。

参考文献:日本緩和医学会


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Yazawa@鍼灸師/よもぎ栽培
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