痛みについて

Fifteen Years of Explaining Pain: The Past, Present, and Future

EPの定義と目的：

EPは、痛みの生物学的プロセスに対する理解を変化させることを目的とした教育的介入です。その核心は、痛みの概念を、組織損傷や疾患の指標ではなく、身体組織を保護する必要性の認識の指標へと変えることです。EPは、痛みを生物心理社会的な現象として捉え、その理解を深めることで、痛みの経験を変えることを目指しています。

EPとは？
痛みの説明（EP: Explaining Pain）教育的介入のこと。その中心的な目標は、痛みの概念を、組織損傷や疾患の指標ではなく、身体組織を保護する必要性の認識の指標へと変化させることです

EPの理論的枠組み：

EPは、概念変化学習、健康心理学、および痛み関連の神経免疫科学に基づいています。特に、概念変化学習は、既存の知識や信念に挑戦し、痛みを線形的なプロセスではなく、創発的なプロセスとして捉え直すことを促します。

従来の治療法との違い：

EPは、従来の認知行動療法（CBT）や、初期の多角的疼痛管理プログラムの教育的要素とは異なります。CBTは、痛みを管理することに重点を置いていましたが、EPは痛みの根本的なメカニズムに対する理解を深めることを目指します。

EPの具体的な内容：

• 侵害受容と痛みの関係：危険メッセージ（侵害受容）と痛みの間の変動的な関係を説明します。

• 状況の影響：痛みに対する状況の強力な影響を理解させます。

• 危険伝達システムの過敏化：痛みが持続するにつれて起こる危険伝達システムの過敏化を説明します。

• 複数の保護システム：痛みがその1つである複数の保護システムの存在を示します。

• 生物学の適応性：生物学の適応性（神経可塑性を含む）について説明します。

EPの形式：

EPは、個別指導、グループセッション、セミナー、小冊子、物語形式など、さまざまな形式で提供されます。

EPに対する誤解：

EPは、痛みを管理する方法、痛みを抱えながら日常生活を送る方法、痛みの原因が組織から脊髄や脳に移ったという考え、または痛みが「すべて頭の中にある」という誤解と混同されがちです。

EPの正確な概念：

EPは、痛みの生物学的プロセスを教え、痛みが過保護になりうることを理解させます。また、危険メッセージが脊髄で調整されること、脳が痛みを抑制できることを教えます。

EPの有効性

• 行動的証拠と生物学的妥当性：EPは、認知的な脅威価値の変化が知覚反応に影響を与えるという行動的証拠に基づいています。また、脳の様々な領域が痛みの認知的な調節に関与しているという神経イメージング研究も、EPの生物学的妥当性を支持しています。

• 臨床的効果：複数のランダム化比較試験（RCT）で、EPが様々な臨床状態（慢性腰痛、線維筋痛症、むち打ち症など）において、痛みの軽減、身体機能の向上、破局的思考の減少に有効であることが示されています。しかし、単独での長期的な改善には限界があり、生物心理社会的な枠組みに基づく多角的アプローチの一部として利用するのが最適です。

今後の展望：

EPの効果を高めるために、脳トレーニング戦略や神経可塑性を促進する介入（薬理学的、刺激、内因性手段）との組み合わせが検討されています。また、急性疼痛後の慢性化を予防するためのEPの役割も注目されています。

結論：

この論文は、EPが生物学的に妥当な治療アプローチであり、痛みの理解を変化させることで、痛みの経験を変える可能性を示唆しています。EPは、単独の治療法ではなく、生物心理社会的な枠組みに基づいた多角的治療の一部として、患者の痛みの理解を深め、より効果的なリハビリテーションへと導く重要な要素となります。EPは、痛みに対する新しい視点を提供し、痛みを抱える人々の生活の質を向上させるための有望なアプローチです。

参考文献：https://www.jpain.org/article/S1526-5900(15)00682-3/fulltext