江戸時代の鍼灸術の書『療治之大概集』⑥
こんにちは、鍼灸やまと治療院です。『療治之大概集』の6回目です。
しばらくは病の説明と使用穴が続きます。
※『療治之大概集』の原文はこちら。
飜胃
【原文】
【意訳】
翻胃
膈噎、飜胃の病は、七情が過剰になった為に五臓の火が強くなり、それにより身体の津液が少なくなり痰が多くなる。その所為で脾胃が衰えてしまい、その結果、食物を消化して運化することができなくなってしまうのである。このようにして、膈、噎、飜胃の病になるのである。
「膈」は朝に食べたものを夕方に吐き、夕方に食べたものを朝に吐くものであり、「噎」は、食べたものが胃まで行かず喉で戻ってきてしまうものである。便が羊の糞のような状態になっている場合は予後不良だといえる。
使用穴は、中脘(嘔吐に良い)、三里(食物が下らないのに良い)、天突(膈噎に良い)、太白、肺兪などが良い。
【補足説明】
「翻胃」は「反胃」などとも書きます。「胃がん」なども翻胃になります。現代では器質的な問題のないものを鍼灸で治療すると良いでしょう。
癆瘵
【原文】
【意訳】
虚弱体質
以下のような原因で発症する。
・心腎が疲労して傷られた。
・風寒暑湿といった邪気に冒されて痎瘧が長引いた。
・咳嗽になり、寒邪が内側に入ってしまった。
・房事過多や食事の不養生などの生活の乱れ。
症状は、羸痩、脱毛、頭汗、夢精、尿の白濁、腹部腫瘤、といったものがある。
使用穴は、百会、上脘、下脘、膏肓(骨の下に刺す)、四華の穴(灸)、などが良い。
噦逆
【原文】
【意訳】
噦逆(しゃっくり)
病の後に不養生をして胃が弱り内部が冷えて発症する。
胸から出るものは治りやすい。
臍の下あたりから出てくるものは、陰虚の火が上に昇っているもので治りにくい。
使用穴は、上脘、肩中兪、梁丘、などが良い。
頭痛
【原文】
【意訳】
身体の弱い人が風寒の邪気に冒されて、邪気を発散できないと片頭痛になる。髪を洗って乾かないまま風にあたって、頭が冷えた状態で寝てしまうと頭痛になる。
太った人の頭痛は気虚湿痰である。
痩せた人の頭痛は血虚痰火である。
風寒の邪気にあたって、悪心・空嘔するのは「頭風」である。
左側が痛いのは、風と血虚である。
右側が痛いのは痰と気虚である。
頸項部が痛いのは風邪である。
頭の内部が強く痛いのは「真頭痛」という。これは朝発症すれば夕方には死亡し、夕方発症すれば翌朝には死亡する。
使用穴は、百会、前頂、列欠、合谷、曲池、肩井(項が引き攣るのに良い)、印堂(両眉の間にあり、前頭部が痛いときに良い)、などがある。
【補足説明】
「真頭痛」は脳の器質的な疾患です。鍼灸適応外です。
心痛
【原文】
【意訳】
胸痛・心窩部痛
痛みがひどく、手足から肘や膝の関節を過ぎるまで青くなっているものを「真心痛」という。これは、朝に発症すれば夕方には死亡し、夕方に発症すれば朝には死亡する。
これ以外では、以下のような原因で心窩部痛がおきる。
・邪気に冒されたため
・生魚を多食したため
・痰が心包絡に集まって動かず、経絡を傷ったため
使用経穴は、天突、鳩尾、章門、中脘、不容、などである。
【補足説明】
胃の痛みと心臓の痛みが同じになっています。
「真心痛」はいわゆる心臓発作です。本文に書かれている通り、鍼灸適応外です。
眩暈
【原文】
【意訳】
眩暈(めまい)
視界が暗くなり、家が揺れている様で起き上がると倒れてしまいそうになる。
太った人がなるのは、気虚湿痰が原因である。
痩せた人がなるには、血虚痰火が原因である。
急に発症するのは、風痰が原因である。
使用穴は、百会、承山、足三里、水溝、章門、などである。
【補足説明】
「眩暈」は鍼灸治療が非常に効果的。
しかしながら、眩暈に鍼灸が効くということを知っている患者さんが少ないのが問題。もう少し鍼灸の効果を周知できると良いのですが・・・。
腰痛
【原文】
【意訳】
腰痛
無理に力を出して重いものを持ったり、房事過多で水を浴びるかのように汗をかいたりすると、腎を傷るものである。多くは腎虚となる。
使用穴は、委中(刺絡が良い)、腎兪、足三里、章門、懸鍾、などである。
【補足説明】
腰痛は現代でも鍼灸の効果を知っている方が多いと思います。
今回はここまでです。
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