『Red(島本理生 著)』を読みました
傷を抱えて生きることを免罪符にしても良いかという疑問
個人的な感想になるが登場人物は全員が屑。
率直な感想を述べると昼ドラ版のアウトレイジとも考えられる。
誰しも自分が一番可愛いのだ。が、一番可愛いハズの自分が外圧にせよ内圧による束縛にせよ愛せなくなった時に人は壊れる。
きっかけは単なるセックスレスだったのかも知れない。
しかしそれは一側面に過ぎない。
家庭、仕事、社会的役割、生育環境、性別、本当にあらゆる呪縛が絡みつく中でバランスを失った極地が描かれたのが本作である。
評価したい点は、子を守るために主人公が最後に妥協点を見出したことである。
文字通り子供は自身の半身である。
何に代えても守らなければならい。その決意を固めたことは評価しなくてはいけない。
この小説はともすれば危険だ。
ストレスという危うさを孕む現代人にとって、自身の都合の良い解釈をして本作を免罪符にすることだってありうる。
それほどに強烈な描写が多い。
さて、タイトルに題した通り個人的には登場人物達の人間性を評価しない。
彼らなりの事情があることは承知のうえで、人は全体の中で生きていくのだ。結果的に元に戻ったとはいえ、彼らの壊れ方は反社会的だと思う。
慮るべきとは思うが、文明人は言葉を持つのだ。
黙って察せは人として許されない。
…とわかっていてもこういう作品が生まれるのは現実にどれほど強靭に上記の言葉のやり取りを実施できている人間が少ないかの裏返しなのかもしれない。
勧めるべき人には刺さりまくるだろう。
これを読みたくなるような精神状態にはなりたくないものだ。