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足関節の可動域制限について

みなさん、こんにちは。
臨床をしていると頻繁に足首が固い人を見かけます。
この「足関節の可動域制限」は様々な弊害をもたらし膝痛や股関節痛、腰痛、はたまた肩こりの原因にもなり得ます。
ということで、今回は、足関節について考えていきたいと思います。
それではいってみましょう。

足関節の特徴

ヒトは通常は直立二足歩行で立ち、歩いたり走ったりします。その場合、地面と唯一接地している足部はいわば土台となるわけですね。
ここでいう足関節とは「距腿関節」のことをいいます。地面と接する足部から一番近接する大きな可動域を有する関節であり、この距腿関節が動かないと他の関節でその動きを代償しなくてはいけません。その多くは足部、膝、股関節で代償されます。距腿関節が動かないせいで他の関節に本来なら必要のない仕事が増え負担をかけることで、代償した関節に負の影響が生じていきます。
よって距腿関節がスムーズに動くことが、脚で身体を支えている際における機能的な身体活動ができる前提になります。
ここで、距腿関節の機能解剖のおさらいです。
距腿関節は蝶番関節に分類され主に水平軸-矢状面上の底屈-背屈(屈曲-伸展)の運動が行われます。
しかし純粋な底屈-伸展ではなく関節の構造上わずかに運動軸がズレるため回内-回外、内転-外転の運動がわずかに入ります。

距腿関節の特徴① ほぞ穴機構
距骨は距腿関節の関節面が前方は幅広で後方は狭いといった台形の形をしています。距腿関節の底背屈運動は距骨の「すべり転がり運動」が生じそれによって、底屈時は距骨後方の関節面が下腿骨と関節を成し、背屈時には距骨前方が関節面を成します。
そういった特徴から距腿関節の背屈時は距骨の関節面が広くなるために底屈と比べて関節の安定性が増します。

特徴② 関節運動軸のズレ
距腿関節は脛骨腓骨の運動軸のズレにより純粋な水平軸-矢状面上の屈曲-伸展運動ではなくなります。
内果が外果より前方に位置し、内果より外果の方が長いことにより前後上下に関節軸がズレています。

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上記の運動軸によって底屈時はわずかに回外-内転の動作が混じり、背屈時は回内-外転の動作が混じる複合運動になります。
余談ですが運動軸のズレ、底屈時の距骨後方関節面の狭さによる不安定性などにより足関節の捻挫は圧倒的に外側の捻挫(内返し捻挫)が多いです。

特徴③距腿関節を通過する筋肉と距骨
距腿関節には前後、内外に筋肉が走行しています。
前面を走行する筋肉は、前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋、第三腓骨筋。
後面はアキレス腱(腓腹筋、ヒラメ筋)、長母趾屈筋、長趾屈筋、足底筋。
外側は長腓骨筋、短腓骨筋。
内側に固有筋はなく、後脛骨筋腱、長趾屈筋腱、内反作用を持つ筋で言うなら前脛骨筋腱も走行します。

距骨は靭帯で唯一筋腱の付着がない特殊な骨で、表面の80%ほどが関節軟骨で覆われています。
筋腱の付着がないため筋肉の牽引による直接的な不良アライメントは起こりにくいですが、距骨の周りを通過する腱の固さによっては距骨の運動に制限がかかります。足関節背屈制限で考えたとき、多くの場合で悪影響を与えるのは前脛骨筋腱と長母趾屈筋腱です。

足関節背屈制限を引き起こす因子

いくつかパターンが考えられますが、わかりやすいところで言えば足関節伸筋群の機能不全、足関節屈曲筋群のタイトネスがイメージしやすいですね。

臨床でよく見ることが多い背屈制限のエラーは
①自動運動での背屈時の前脛骨筋腱の滑走不全

②PROM、自ら荷重をかけることによって生じる前脛骨筋の収縮を必要としない背屈での、前脛骨筋の過緊張

③ロードシス姿勢における立位時の慢性的な足関節底屈位による距骨前方偏移

④長母趾屈筋のタイトネスによる距腿関節背屈時の距骨の後方への「すべり運動」の制限

...などがあります。

①②は共に前脛骨筋腱がつっぱり棒のような作用を起こしてしまい生じます。①の場合は緩めれば解決ですが②の場合は前脛骨筋の自動運動を必要としない背屈動作で、前脛骨筋が収縮しないように使い方の訓練をする必要があります。

③は、立位姿勢におけるマルアライメントですので骨盤をはじめとする全身的な調整が必要です。
④に関してですが足関節背屈制限では非常に多くみられるエラーです。長母趾屈筋は距骨後面の長母趾屈筋腱溝を通過します。距腿関節の背屈は距骨の後方への「すべり転がり運動」が発生しますが、長母趾屈筋が硬くなっており伸張性が低下している際には距骨の後方へのすべり運動が制限されて、転がり運動のみとなった距骨は脛骨とインピンジメントすることになります。結果、背屈制限が生じます。

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④の検査法は簡単で、座位で患側の膝屈曲位、足関節最大伸展位の肢位で他動てきに母趾を伸展させます。その際母趾が伸展させにくかったり、足底に張りを感じたら伸張性が低下していると見ています。

治療は長母趾屈筋の筋腹にパルス通電を行い、長母趾屈筋のPNFストレッチを行うとほとんどの場合は伸張性がでます。長母趾屈筋は起始がなぜか外側にある不思議な走行をする筋ですので筋腹に刺鍼する際は腓骨の後縁から脛骨方向に直刺します。通電し母趾が屈曲すればOKです。

足関節背屈制限によって起こるエラー

立位時の土台となる足関節は可動域制限が発生すると他の様々な部位で代償動作を行います。
下肢の関節だと、背屈のかわりに
①踵骨の回内
②足部外転
③下腿外旋
④大腿骨内旋
が生じます。これらの動作はすべて「knee-in toe-out」の不良肢位となります。
日頃の歩行やランニング、また階段昇降など荷重位で足関節背屈が必要な運動の度に瞬間的なknee-in toe-outなどの代償動作が生じ、その積み重ねが膝痛、股関節痛、腰痛など様々な不調の原因となってきてしまいます。

足関節背屈制限は全身に悪影響を起こしかねません。
患者さんに自覚がない場合もありますので、こちらで正しく説明してケアしてあげられることが大事になると思います。
今回の記事が足関節背屈制限のアプローチとして、なにか少しでも参考になれば幸いです。


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