才能ある俳優/女優たちを一人でも多く世に出し、映画の世界を活性化することができるとしたら、これほどうれしいことはない。
現代日本において、俳優教育は軽視されている。
「俳優/女優は教育されて育つものではない。放っておいても才能ある者は見いだされるものだ」という強固な考えが広く根付いている。
その結果として、二つのことが起きている。
ひとつは、見いだされた特定の俳優たちばかりがどの作品を見ても飽きるほどに出演しているという事態。
もうひとつは、見いだされることのなかった俳優たちが、オーディションなどに参加する機会も無いなか、わずかな可能性を期待して映画監督が講師をするワークショップに殺到しているという事態。
ワークショップに参加できている者はまだ良いほうで、多くは、映画の現場とは縁もゆかりもない演技指導者の下で、現場で必要とされる演技とは程遠いことを教わっている。
そのような者たちは悲惨で、訓練している間の時間を失うばかりか、嘘を教えられることで本来持っていた才能も同時に失ってしまう。
特に若い時期には、誰の言葉を信じればよいかわからないので、学ぶ場所、頼る場所を間違えて、年月と才能を無駄にする可能性が非常に高く、時には再起不可能なほどダメージを受ける。
実際そのような悲惨な事例を沢山目にしてきた。
「アクターズ・ヴィジョン」と名付けた演技ワークショップを行っている。
上に述べたような俳優/女優をめぐる「劣悪な環境」を改善したいという思いが根本にある。
俳優/女優に限らない話だが、「能力ある者、努力する者が正当に報われる健全な社会」を築かなければならない。
俳優/女優の卵たちが、彼ら/彼女らの持っている豊かな可能性を無駄にすることがないように、そして、可能性のある卵たちを間違いなく育てられるように。
才能ある俳優/女優たちを一人でも多く世に出し、映画の世界を活性化することができるとしたら、これほどうれしいことはない。
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