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【声劇】お好み焼き創世記(3人用)

利用規約:https://note.com/actors_off/n/n759c2c3b1f08
♂:男女不問=1:2
約15分~30分
上演の際は作者名とリンクの記載をお願いします。

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【登場人物】

難波(男女不問):お好み焼き屋さん歴30年のベテラン。 愛情を込めて営業中!! 可能なら関西弁。

梅田♂:会社のウザイタイプの上司。 でも後輩の面倒見は意外に良い。 可能なら関西弁。

渋谷(男女不問): 東京から出張で大阪に来ている会社員。 気になると思考が停止する癖がある(?)

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難波:「はいよっ豚玉お二つ、お待たせしました♪」

梅田:「おっ待ってました! くぁ〜♪ このソースの香りがたまらないねぇ♪」

渋谷:「はぁ〜これが大阪のお好み焼きなんですね! 超美味そうですね♪」

梅田:「はっはっそうだろ♪ 空気を含んでふっくらと、荒みじんにしたキャベツがたっぷりで食感も楽しい! そこに特製のソースとマヨネーズ。ふりかけた鰹節で、こっちの心も踊ってしまう♪
大阪に来たら絶対に食べないといけない、ソウルフードだ♪」

難波:「ありがとうございます♪ さぁ、冷めない内に召し上がってください♪」

渋谷:「あ、はい♪ では、頂きま……す……?」

梅田:「……ん? 渋谷、どうした?」

渋谷:「いや『どうしてお好み焼きっていう名前なんだろう?』と、ふと思ってしまって……『好きな物を焼く』から『お好み焼き』っていう割りには、素材が凄くシンプルじゃないですか?」

梅田:「あぁ〜確かに『豚肉』と『キャベツ』、『鰹節』に『青のり』……
まぁ種類によっては『海鮮』や『モダン』ってのもあるけど、スタンダードはこの『豚玉』……『お好み』って言う割には、確かにシンプルな──」

難波:「あら、梅田さんも知らないんですか?」

梅田:「いやぁ〜そんな事考えた事もなかったからねぇ。難波さん、なんか知ってるのか?」

難波:「そりゃあ、長年お好み焼き屋をやってますから♪」

渋谷:「──ぜ、ぜひ教えて欲しいです!!」

梅田:「そうだね、俺もぜひ。関西人である以上、知っておきたいところだ。難波さん、教えてくれないか?」

難波:「ふふっ、仕方ないですねぇ〜……じゃ〜私の手をジッと見てください♪」

渋谷:「手を……?」

梅田:「手を……」

難波:「はい、ジ〜っと……良いですか? いきますよ♪ (指パッチン)」

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渋谷:「──んぉっ!? な、なんですかっここ!?」

難波:「ここは『大坂』。
山のさち、海のさちと、様々な食材が集まる大坂は、食材の宝庫『天下の台所』と言われてました」

梅田:「おぉ〜ちょんまげ着物の人ばかりだ──おっ渋谷、お前!?」

渋谷:「あっはっはっ!! 梅田さんも、超似合ってるじゃないですかw」

梅田:「えっ? おぉ!? 俺の髪が、無い──あ、あった……てっぺんにチョコンとまとまって、あったw」

難波:「──どんなに凄腕の商人でも『売れ残り』は出てしまう……
しかしこの時代、生モノを貯蔵しておく事は出来ませんでした」

梅田:「お? あぁそうか……冷蔵庫なんて、まだ無かっただろうからなぁ」

渋谷:「じゃ、じゃあそれは廃棄するしかなかった訳ですね……」

難波:「はい──あっこれどうぞ」

渋谷:「──は、はい!? どうも……え、これは?」

難波:「ここの台詞、お願いします♪」

渋谷:「えっ? あ……ここを読めば良いんですか? え、え〜と……
『(棒読み) あぁ〜今日も売れ残ってしまった……これで3日続けて同じ飯だ』」

梅田:「なんだなんだその棒読みはぁ〜。もっと腹から声出して演じねぇ〜と♪」

渋谷:「そ、そんな急に言われても(汗」

難波:「──なんて、夕げ朝げになるならまだマシな方です。
我が子の様に育てたモノを腐らせるっていう事もある訳ですから、世知辛い世の中です。
はい次、梅田さんもよろしくお願いします♪」

梅田:「──ん? 俺の番か? よっし、見てろよぉ〜 (咳払い)
『(大げさに) 毎日同じ物を食うってぇ〜のもっ飽きる一方だぁ〜! どうだい? 一つにまとめてぇ、食べてはっ、アッ、みねぇ〜かいぃ〜?』
っと、どうだ♪」

渋谷:「少し、わざとらし過ぎませんか?」

梅田:「これくらいしないと雰囲気が出ないだろうよ♪」

難波:「ふふっ♪ ──なんて提案があったモノだから、商人達はお互いのお店の『売れ残り』をドドッと集めて鍋にしました。
翌日は蒸し、そのまた翌日は焼き物と──」

渋谷:「毎日パーティですね♪ 楽しそうだ」

梅田:「でも売れ残りなんだろ? 楽しそうだけど、なんか……なぁ?」

渋谷:「でも『無駄を出さない』っていう、今の時代に欠けてる、大切な部分があったんですね。商人達の発想力の強さを感じます」

難波:「──その残り物を少しでも減らすという行いは、瞬く間に大坂中の話題となりました。
『今日は──』あっここも梅田さん、渋谷さん、お願いします」

梅田:「あいよっ了解!」

渋谷:「──自然にですよ!」

梅田:「なっ!? わ、分かってるよぉ〜…… (咳払い)
『今日は八百屋で野菜が結構売れ残ってしまったみたいだが……どうする? 』」

渋谷:「『野菜かぁ〜……鍋は昨日食べたしなぁ〜……そうだねぇ〜よしっ今日は【お残り焼き】にするってのはどうだ?』」

梅田:「『それだったら肉屋と魚屋にも声をかけようか! ちょっと電話を──』」

渋谷:「──そんな台詞ないですよっ! この時代に電話ってなんですか!!」

梅田:「ちょっとくらい良いじゃねぇか……茶目っ気だよ♪ 茶目っ気♪」

渋谷:「もぉ〜……」

難波:「──なんて盛り上がっていますと、やがて将軍の耳にも届いてしまいます……時の将軍『豊臣秀吉』その人です」

渋谷:「と、豊臣秀吉っ!?」

梅田:「おいおい、天下人が出てくるとは……話が大きくなってきたねぇ〜」

難波:「農民の出である秀吉公が興味を持たない訳がありません。
単身、馬にまたがり颯爽さっそうと城下町へ走り出しました」

梅田:「さすが秀吉さんだ……好奇心旺盛」

渋谷:「上り詰めた人の行動力……見習わないと、ですね……」

難波:「お付の人も付けずに、城下町に突然現れた秀吉公に、商人達も大慌て……秀吉公は威厳たっぷりにこう言いました──
あ、ここは梅田さん、兼任けんにんでお願い出来ますか?」

梅田:「お、俺が豊臣秀吉を!? さすが難波さんっ見る目があるねぇ〜へへっピッタリな配役♪」

渋谷:「えぇ〜……不安しかないんですけど……」

梅田:「俺以外に誰がやるっていうんだ? 秀吉公と言えば俺、俺と言えば秀吉公!! 任しとけ♪」

渋谷:「大丈夫かなぁ〜……」

梅田:「(咳払い) では失礼して──
『そこの者……ワシが豊臣秀吉である! 天下人の豊臣秀吉である!! 誰がなんと言おうと豊臣秀y──』」

渋谷:「自己紹介は良いから、進んで下さいよ!」

梅田:「ん〜もうちょっと役にひたらせてくれても……」

渋谷:「ほら早くっ」

梅田:「うぅ〜……『今、大坂を賑わしておる【お残り焼】なる物を、喰ろうてみたい!』」

難波:「秀吉公の言葉に商人達は、常に『残り物』があっては増税の危険があると思って、その場は──」

渋谷:「『も、申し訳ありません! あいにく今日は【残り物】がございません……』」

梅田:「『なぁ〜にぃ!! その方ほう釜茹かまゆでの後、打首獄門うちくびごくもんの刑に──』」

渋谷:「──重いっ! 刑が重過ぎますよっ!! もぉ〜それが言いたいだけじゃないですぁ〜」

梅田:「気分が乗っちゃって♪」

渋谷:「『乗っちゃって♪』じゃないですよぉ……難波さん、すいません。続きお願いします」

難波:「はいw ──しかし、好奇心旺盛な秀吉公、一歩も引く事無く、再び威厳を込めて──」

梅田:「『なれば仕方なし。しかしワシはその【お残り焼】という物に興味が絶えぬ……そのほうに命ずる! 明日、日の沈む刻に、大坂城にて待つ。持って参れ!!』」

渋谷:「やれば出来るんじゃないですかぁ〜」

梅田:「──だ、誰に言ってんだ! 出来るよ!! 俺だってちゃんと出来るよ!!」

渋谷:「だったら最初っからやって下さいよ!!」

梅田:「っんだと! 渋谷てめぇ〜!!」

難波:「まぁまぁまぁまぁ (汗
ケンカはまた後でお願いしますよ」

梅田:「うっ……な、難波さんに言われてしまったら……」

渋谷:「すいません……」

梅田:「お、おぉ……俺も……すまねぇ〜……」

難波:「はい、じゃ〜続けますね♪
(咳払い) 商人達の会合は、鶏が朝を告げるまで続きました」

渋谷:「『ど、どうするよ。俺達の【残飯飯ざんぱんめし】を天下人食わせて大丈夫なのか?』」

梅田:「『し、しかし……秀吉様が【食いたい】と言ってんだ、持って行かない訳にはいかないだろう』」

渋谷:「『だとしたら、どの商店の食材でお残り焼を作ったら良いんだよぉ〜』」

難波:「商人達は、どの商店の『残り物』が良いか……美味しかった残り物、そしてその組み合わせを必死に思い出し、そして遂に『残り物』ではない『お残り焼き』を持って大坂城へおもむきました」

梅田:「ついにこの時がやって来た訳だ……」

渋谷:「ど、ドキドキの瞬間ですね……一言『不味い』と言われれば、首が無くなるかもしれない……」

難波:「ええ……まさに命をかけた『お残り……ではない焼き』。
それを秀吉公に献上けんじょうすると、秀吉公は大胆に口へと運びました。
──するとっ一口口にするや否やっ秀吉公の怒号が大阪城を揺らした!! ──はいっ梅田さん!!」

梅田:「『たばかりおってぇぇ!!』」

渋谷:「──っ!?」

梅田:「『ワシは【お残り焼き】を食いたいと申したのだっ! これは【残り物】ではないっ!!
この野菜には、まだ瑞々みずみずしさが残っており、新鮮その物!! 農民の出であるワシを、愚弄ぐろうするか!!』」

渋谷:「『も、申し訳ありません! いの、いの、命だけはご容赦ようしゃをぉ〜!!』
──あっ!? 勢いで謝っちゃったけど……梅田さんなんですよねぇ」

難波:「商人達は即座にこうべを垂れますが、秀吉公の怒号は止まりませんでした。農民の出とは言え、さすが天下人の迫力です」

梅田:「ワシは豊臣秀吉! 天下人なるぞぉ〜! ひれ伏せぇ〜!! ひれ伏せぇ!! 地面に頭を擦り付けろぉ〜!!」

渋谷:「うぅ〜難波さん、こんな人に頭下げないとダメなんですか?」

難波:「ま、まぁ今は『豊臣秀吉の役』と『商人の役』なので、え〜……お願いします(汗」

渋谷:「釈然しゃくぜんとしないですけど……(ため息)
『すいません……すいません』」

梅田:「(大袈裟に) ──がっ! あっが高ぁぁ〜いぃ♪ ぬはっぬははは♪」

難波:「『申し訳ございません』を繰り返す商人達をしり目に、秀吉公は再び箸を持ち、二口、三口と続けて……そしてついに『お残り焼き』を完食してしまいました」

渋谷:「怒ってたのに全部食べたんですか!?」

梅田:「『ふぅ〜……その方共ほうどもよ──これはワシの求めた【お残り焼き】ではない。これはワシが好む物を組合せた物……』」

渋谷:「さっきとは打って変わって、穏やかな良い演技だ……梅田さん、こんな演技も出来たんですね……」

梅田:「うるせぇっ、良いシーンなんだから、黙ってろ!」

渋谷:「あ、すいませんw」

梅田:「(咳払い) え〜……『皆が【好む物】を混ぜ食らう事が出来る。良き食い物よ……』」

渋谷:「『ははぁ〜! ありがたきお言葉……』」

梅田:「『しかしっ! ワシをたばかった罪は重い!! なんじら商人っ全ての者に命ずる!!』」

渋谷:「『──っ!?』」

梅田:「『今後【お残り焼】と申す事を禁じ、【お好み焼】と改名せよ!! これは豊臣秀吉からの勅命ちょくめいであるっ!!』」

渋谷:「『──っ!? あ……ありがとうございます!!』」

難波:「商人達の知恵は『豊臣秀吉』の舌をうならし、『残飯食ざんぱんしょく』を『一般食』へと押し上げたのです……」

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渋谷:「──っうぉっと……あ、元の場所に戻った……」

難波:「はい、おかえりなさい♪」

梅田:「苦しゅうない苦しゅうない♪ ワシをあがたたえよ! ふはっふははは」

渋谷:「梅田さん梅田さん……終わった。終わってますから──」

梅田:「ふぇ!? あ、戻ってる……もうちょっとだけあのままでも──」

渋谷:「あのまま続けてても、梅田さんの場合、一揆いっきを起こされるだけですって……
──でも『お好み焼き』が元々『お残り焼』って名前で、それを豊臣秀吉が名前を変えさせたとは……知りませんでした♪」

梅田:「それは確かにそうだな。ずっと大阪に住んでいたのに、そんな歴史があったとは……さすが難波さんだ♪」

難波:「そりゃ知らないはずですよ♪ 私が作った話なんですから♪」

渋谷:「……えっ?」

梅田:「……えっ? つ、作った? それって……え? じゃ、じゃあ、さっきまで見てきたのは──」

難波:「私の台本です♪ 名演技でしたよ♪」

渋谷:「ちょっ、ちょっとどういう──え? じゃあ〜【お残り焼】は!?」

難波:「そんな言葉、たぶんありません♪」

渋谷:「【商人達の知恵】は!?」

難波:「どうなんでしょ? 知りません♪」

梅田:「マジかよっ!! 豊臣秀吉もいなかったのかぁ〜!!」

難波:「はい、そんな人いません♪」

渋谷:「──いやいやっそれはいたでしょ!!
えぇ〜……じゃあ〜『お好み焼き』の名前の、本当の由来は──」

難波:「ん〜……なんか、千利休せんのりきゅうが作ったとか何とか……?」

渋谷:「曖昧あいまい!? ま、まぁ〜千利休せんのりきゅうも凄いですけど……えぇ〜……」

梅田:「……ふふっ……ふふふっ……」

渋谷:「う、梅田さん……?」

梅田:「はっはっはっは! これはやられたな!! 完全に騙された♪」

渋谷:「クク……ま、まぁ〜すっかりやられましたね♪ 気持ち良いくらいに騙されました♪」

難波:「えぇ、全力で嘘の話を演じてくれてました♪ ありがとうございます♪」

梅田:「あぁ〜……ここまでガッツリ騙されると気持ちが良いな♪ はぁ〜……全力で演じたおかげで、お腹もペコペコだ! 渋谷っ、お好み焼きを食おう!」

渋谷:「そうですね♪ ──って言っても、もうすっかり冷めちゃってますよ」

難波:「あ、本当ですね (汗) すぐ新しいの作り直しま──」

梅田:「──いやいやいやいや! このまま頂こう!!」

難波:「──えっ……でも……」

渋谷:「そうですね♪ 今日は『お好み焼き』よりも『お残り焼』の気分です♪」

難波:「──あ、そうですかw? じゃ〜サービスで『お残りビール』もお付けしときますね♪」

梅田:「おっ嬉しいねぇ〜♪ 『お残り』なら仕方がない!! 遠慮なく貰っておこうか♪」

渋谷:「はいっ♪ 頂きます♪」

全員:「(テキトーに爆笑)」

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