憧れの聖地インカ・トレイル2〜豊かな国家アンデスを心で感じる
リマの空港ロビーの片隅でシュラフに包まり一夜を過ごした私ですが、当たり前のように良く眠れず。
重い身体を引きずるように、クスコ行きの小さな飛行機に乗り込みました。
眼下には茶色い大地と、白い雪を被ったとんがった山々。
「お母さん、念願のインカの地にとうとう来たよ、一緒にこの景色を見たかったね」
私の母は活発な人で、学生時代は山岳部に所属。結婚して子育てが一段落してからは、あちこち海外に出かけていました。
神話や遺跡が大好きで、南米も「オンナひとり旅」をして、子供のころにペルー遺跡の写真をたくさん見せられた記憶があります。
その当時は別段興味もなかったのに、刷り込みって大きいですよね。
今ではすっかり亡き母の後を追うような経験を積んでいると思います。考えてみれば、著書「天岩戸神話を歩く」を書くキッカケも母の言葉からでした。
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茶色い大地にドドドドド〜ンと着陸し、やってきました!目的地クスコです。
空港の標高は、3248Mという高地なので、いきなり空気薄いー
4名で6人分の大荷物をピックアップし、ゆっくりゆっくり歩きながら出口へと向かうと、バケツのような大きな箱に入った沢山のコカの葉っぱが目に飛び込んできました。
そう、ここでは古くから高山病予防のためにコカを常用する習慣があるのです。
あれですよー、日本では違法のコカインですからね。
とはいえ、若葉ではなく乾燥させたコカの葉をお茶などにして飲んだりするのです。
近づいてクンクン嗅ぐと、落ち葉の匂い。周りの人はみんな掴んで口に入れるので、もちろん私も。
クチャクチャ噛むと、「ひ〜〜〜〜、ま、まずい!」
けど、身体のためにと、ガバッと取ってポケットに入れ、ことあるごとに噛み続けていました。
余談ですが、コカ・コーラが発明された当初は、コカの葉から抽出したコカインの成分が微量含まれていて、そもそも薬として開発されたそうです。コカ=コカイン
もちろん現在は含まれていませんのでご安心を(笑)
さて、リーダーを失った私たちは一体どうしたら良いのでしょうか?
待合室に出ても誰もいない。
Iさん曰く、「確か現地のガイドさんがいるとか?いないとか?言っていたような」と、一筋の光のような言葉を思い出し、探しに行くことになりました。
しばらくすると、Iさんが女性と共に歩いてくるではありませんか!
その方は、現地ガイドのミチコさんというクスコ在住の日本人女性。
彼女の元に我らがリーダーからメールが入っていたそうで、キョロキョロしている日本人グループを探していてくれたのです。
夕方になるとリーダーたちが無事クスコに到着しました。
聞くとヒューストンからの飛行機には、タッチの差で間に合わなかったそうです。すぐに翌日の便への振替とかけ合いましたが、残念なことに満席で取れないとのことで、急遽コロンビア経由でクスコ入りをしたということでした。
ともあれ全員フラフラでしたが、生きてるし荷物もあるし、万事オッケーということですね!
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クスコには高度順応のため2泊滞在しました。
インカトレイルは、標高4,200M地点にある峠を越えていくので、そのためには少しでも身体を慣らしておくことが必要です。
日本でよく聞く言葉に「富士山で高山病になった」とありますが、そもそも高山病というのは、「どういうことで、どんなことが起きて、その対処法とは」について、以前記事にしたので、よかったらこちらをどうぞ。
普通、日本からのツアーだとクスコ滞在は1日だけでマチュピチュ行って、次にどこかへ行って〜
と弾丸になることが多いようですが、ゆっくり滞在ができたので、クスコ近郊の遺跡を見ることができました。
それにしても、インカの石造建築技術には驚かされました。
「カミソリの歯一枚も通さない」と、よく言われますが、単に四角に石を削るだけではなく、角を落として丸みをつけたり、大きさや角度を変えて耐震性を高めたりと、驚愕的な技術力なのです。
**サクサイマワン遺跡
**ケンコー遺跡
**タンボマチャイ遺跡
インカトレイルを歩く前に、インカ文明の中心クスコの遺跡を見れてよかったです。
インカと言えば、お伝えしてきたように石造建築技術が有名ですが、経済基盤は実は農業でした。
アンデス地域は3つの地域に分類され成り立っていたのです。
・乾燥した海岸砂漠地帯の「コスタ」
・高度差による多様な環境を持つ「シエラ」
・広大なジャングル地帯の「セルバ」
元々アンデスの世界では、インカ帝国以前から土地の所有観念のようなものがなく、この異なった地域から効率よく産物を集め、公平に分配することができる者が評価されていました。
3つの個性的な地域が、近接、相互依存していたことによって領土支配ではなく、人間支配という豊かな国家を作り上げたのではないでしょうか。
数々の人間の手によって造られた遺跡をみていると、アンデスの人たちの暮らしや想いが伝わってきて、これから歩く「インカトレイル」への期待に胸がはち切れそうになりました。