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白糸の里(静岡県)での田植え体験

初めての田植え体験。選んだ場所は、静岡県の「美しいふじの国品格のある邑」に認定されている「白糸の里」。

新東名「新富士インター」から139号線を一路北へ。生憎の曇天ながら、信号待ちの間にふと運転席から見た先に富士山頂が垣間見えて少し期待が高まる。(県東部出身なので、この姿の富士山頂を眺めるのは初めて。新鮮。)
渋滞もようやく落ち着いたところで、幹線道路を離れた道に入る。南へ進路をとった先に、豊かな自然に囲まれた原地区の風景が広がってきた。初めて足を踏み入れる地域、事前に連絡を受けていた住所で設定したナビ通りに進むが、目指す圃場らしきものは見当たらない。改めて、もう一つの目印である本源寺を設定して車を進める。次のナビ案内も終了、まだ目的地らしきものが見えない。水田をイメージしながら車を進める。とっ、お寺の裏に車を進めた瞬間、地域の方が「平成の棚田」と称している、区画整理された棚田が目に入る。代掻きされた圃場に水が張っていて、澄んだ水面がとても清々しい。さらに車を進めるとイベント会場を確認することができて一安心。集合時間の10時から5分遅刻で到着。

案内に従って駐車すると、白糸の里のイベント窓口を担当されている宇居さんが車まで近づいてきてくれて、笑顔でご挨拶頂き、「遅れている方もいるのでゆっくり準備して下さい」と声をかけて頂いた。初めて訪れる場所、かつ遅刻、さらにこの活動を決めてから初めてのイベントで緊張していたものの、すっと入れた感じ。(感謝。感謝。)

準備を整えて、受付へ。参加費用は2千円。事前に印刷されていた領収証、昨年(2017年)に収穫された「白糸コシヒカリ」(1kg)と「白糸の里」のイベント(竹灯籠、ウォーキング等)のパンフレットを頂く。正直、田植えを体験させて頂く上に、お土産まで頂いてと嬉しい気分。
(余談ながら、イベント会場には圃場の中にもかかわらず、簡易トイレも設置されており、ロングドライブ後に救われた。)

参加者の受付が一通り済んだところでイベントの開会。白糸の里の会長である渡邊さんからのご挨拶。この地区は、戦後の食糧増産に貢献した地域で、10年間で合計3,600俵(=216,000kg)のコメを供出。また52億円の助成を受け20年間かけて圃場整備を進めて「平成の棚田」と称する水田を整えてきたなど、この地域の稲作にまつわる歴史の説明を受ける。白糸の里での田植え体験イベントは2回目の開催とのことで、今回は29名が参加。昨年、田植え、収穫に参加したリピーターの姿も見られた。

圃場に入る前に、苗の分け方(1株2~3本程度)や、植え方の実演指導を受ける。内容はとてもシンプル。進め方を理解した後、圃場に移動し、横一列で圃場に足を踏み入れた。これまで収穫期に圃場に入った経験はあったが、田植え前の水田は初めて。土壌はとてもゆるくて、引き込まれる様に足が沈んでいく。ひざ下の長靴でギリギリ水面上に出ている状態。足はすっかり泥に包まれていて、足を引き抜いて次の1歩を踏み出すのが一苦労。隣では市議会議員さんのお孫さんが水田と格闘。何度も尻もちをついて最後には全身ドロドロになっていた。(きっと楽しんだだろうな。)

さて、本題の田植え。白糸の里の方が、目印となる紐を横に張っていてくれたおかげで、稲を植えこむ場所は分かったものの、苗を小分けにする作業が意外と難しい。稲の根が長くしっかり張っているため、苗から2~3本だけを分けるのが難しく、5本程度の塊でようやくしっかり根も取り分けられる様な状態。また、田植えを後ろ向きで進める際に、自分が足を置いたところがくぼみになってしまい、それを均す作業も必要だった。思いの外、手間がかかった。が、次第にペースをつかみ、移動して次のラインに植え付けるまで、事前に準備ができる様になった。想像していた程、中腰の姿勢は辛くなく快適なペースで田植えを進められた。

しばらくして、機械植えの希望者を募る声があり、早々に応じて隣の圃場に移動。こちらも初体験。希望者は、家族で訪れて畔からビデオ撮りをしていたお母さん、伊豆で英語教師をしているオーストラリア人(本国の家族は農家で、本人も日本で農業をやりたいとのこと)と、自分の3人。クボタの乗用式の田植機で一度に5条の作付けができるもの。クラッチを切って、ギアを入れ、苗を乗せたパネルを水田近くに下してから、徐々にクラッチを戻して前進させる。先に作業を行ったお母さんの運転を見ていて、水田は必ずしも真っ平でないため田植機を真っ直ぐに進めるのも大変そうな印象を受けていたので、多少緊張してスタート。横にあるガイドを先に植えた稲のラインに合わせて慎重に進める。リズム良く苗が植えられていく。(心地よい感触)。意外とスムースなので、少し慣れたところで、大胆にも湾曲していた稲のラインの矯正に挑戦。方向転換もきっちりこなして、オーストラリア人にバトンタッチ。約1時間半の田植体験を終えた。

水田から上がって、用水路で長靴の泥を洗い流す。ゴムを通じて感じる水温が冷たくて気持ちが良い。富士山の雪解け水を農業用水に利用できる自然環境ってなんかすごい。その冷たい水で、手や顔も洗って、圃場に張ったテントに向かった。

白糸の里のご婦人の皆さんに用意して頂いた、白糸コシヒカリのおむすび、豚汁、お漬物
の昼食を頂く。甘味があり、程よい粘りもある食感で思わず3個頂いてしまった。野外で作業後に食べる昼飯は格別。(小学生の頃、父、祖母に連れられて山の畑に作業にいって、そこで作ってもらった豚汁とおむすびの昼食を思い出した。)

昼食の席で、会長の渡邊さん、色々お世話頂いたイベント窓口の宇井さんとお話しする機会を頂いた。渡邊さんは22歳で徴兵されて満州へ。24歳で終戦を迎えるも、シベリアに抑留されて4年後の28歳に帰国された。その後、農協に入り、地元の農業事業に貢献されてきたとのこと。宇井さんは、退職後のセカンドライフ(と勝手に称して良いのか)。農業の傍ら、地域の皆さんに巻き込まれる形で白糸の里の活動を行っているとのこと。HPの管理や参加者との交信は全て宇井さんが担当されている。

お二人の話から、地域を管轄する富士農林事務所の管内の水稲の耕地面積は115ヘクタール。その内、「白糸の里」の原地区の面積は約20ヘクタール。単収は平均8俵/反以上あるとのこと。(年間約96,000kg以上の収量。) 以前は、ササニシキも作付していたが、現在はコシヒカリが中心。霧が多く、コメ以外の他の作物の栽培にはあまり適さないとのこと (だが、昼夜の寒暖差が大きく、また富士川水系の原川の水を農業用水として使用して、逆に水稲耕作に適した地域ではないかと感じた。)

原地区の美しい景観を多くの方に知ってもらおうと、平均年齢70歳以上の皆さんで活動。(運営のための)参加費を頂くものの、お返しもして、なるべくお金はかけないように運営している。田植えや稲刈りの他、2月23日(富士山の日)の竹燈籠、6月の梅収穫、ウォーキングなどのイベントを開催。竹燈籠のイベントにはクラウドファンディングも活用したとのこと。

とても親しみ易い方々で、話はつきなかったものの参加者がポツリポツリと帰り始めたので、田植えを指導頂いた皆様、昼食を用意して頂いたご婦人の皆様にご挨拶をして、白糸の里をあとにした。9月には稲刈りが予定されているので、参加を楽しみにしている。

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