『外国籍接客チェックリスト』がスタート! 知識を学んでフレンドリーな不動産会社へ
“所変われば品変わる”とはよく言いますが、日本の賃貸住宅に関しても同じことが往々にして当てはまります。違いを笑って許容できたらいいのですが、なかには残念なことに、日本と外国の風習の違いから、借りる側・貸す側・間を取り持つ不動産会社の三者の間で齟齬が生じることも…。それにより客として来店した外国籍の方が不快感を覚えたり、トラブルを懸念した不動産会社やオーナーが貸し渋りをしたりする場合も少なくないようです。
住宅弱者に含まれる外国籍の方々。難民を含む外国籍の方々の住まい探しをサポートしたい不動産会社が接客の際に活用できるようにと、FRIENDLY DOORプロジェクトでは、2022年10月18日より、『外国籍接客チェックリスト』の提供をスタートしました。
今回はその全容をご紹介します。
『外国籍接客チェックリスト』ができた背景
“日本国籍でない”ということだけで、お部屋探しが難航してしまい、住宅確保要配慮者としても配慮が必要とされる外国籍の方々。
具体的にどんな難しさがあるのかを知るため、LIFULL HOME'Sでは「住宅弱者の『住まい探し』の実態調査」を通じて外国籍の方たちの声を集めてきました。
2022年5月に実施した最新の調査では、外国籍の方のうち40.5%が、「内見や契約手続きで差別を受けた/不平等さを感じた」と回答。
さらには、「社会的立場を理由に差別や不平等を感じたり、オーナーや不動産会社から退去を迫られたりした経験の有無」に関する問いに対して、シングルマザーやLGBTQといった他の層に比べて、「ある」と回答した人の割合が突出して高い結果に。“外国籍であることを理由に退去させられた”という事実は、調査メンバーの間に衝撃が走りました。
また、お部屋探しの段階においても、在日の外国籍の方の4割の人が「外国籍であることがハードルとなり候補物件が少なかった」と感じた、という結果が出ています。
差別や不平等は、相手の立場を理解し、意識を変えれば解消できること。
部屋を借りたい人、部屋を貸したいオーナー、その間を取り持つのは不動産会社です。お部屋探しの要ともいえる不動産会社の人たちに対して、外国籍の人への知識を深め、円滑な入居につなげてほしいという思いから、このチェックリストは生まれました。
『外国籍接客チェックリスト』とは?
『外国籍接客チェックリスト』は、不動産会社向けのチェックリストです。
全23問の設問に答えることで、「外国籍に関する基本的な知識を有しているか」「より顧客満足度の高い接客ができているか」を診断することができます。
「基礎知識」と「不動産会社対応」の2つで構成され、目標得点は計19点以上です。
回答後に各設問へのフィードバックがあり、質問の意図するところ、留意するポイントなどを具体的に学ぶことができる仕様となっています。
このチェックリストは、公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会内で発足されたあんしん居住研究会の会長であり、長年外国籍の方の賃貸物件への入居促進に尽力されている荻野政男さんに監修いただきました。
このnoteでは、萩野政男さんへの外国籍の方をめぐる賃貸住宅のインタビュー『外国籍の人向け賃貸のプロに聞く 共生社会実現のために不動産会社ができること』を過去に掲載させていただいています。ぜひご一読ください。
それでは、『外国籍接客チェックリスト』の内容をのぞいていきましょう!
基礎知識
基礎知識は、全6問で構成されています。
ここでは、契約において必要な、外国籍の人が日本にいるうえで重要な“資格”や証明書などについての知識を問います。
実際の設問を見てみましょう。
1問目はこちら。
外国籍の方が日本で生活するための在留資格について把握している、という設問です。
まず、“在留資格”とは、入管法によって定められた、外国籍の人が日本に入国・在留するための資格のこと。これは入国査証のビザとはまた別に必要なものです。
日本で行うことができる活動や、日本において有する身分・地位を類型化したもので、全部で29種類に分類されています。
たとえば、短期滞在は観光客や会議参加者といった最大90日以内の滞在の人に向けたもの、永住者、日本人の配偶者など身分・地位に基づくもの、特定活動はワーキングホリデーなど就労の可否が指定される活動によるもの、文化活動や留学など就労が認められないもの…といった具合に分類されており、ステータスによって滞在の期間や就労の可・不可が定められています。
またぜひ知っておきたいのは、難民申請中の方の場合。難民申請直後は、就労不可の期間があり、その後はケースバイケースで就労の可・不可が定められます。
中長期在留者には「在留カード」が交付されるため、身分証明書のひとつとしてコピーを取るとよいでしょう。
残留資格に関しては、出入国在留管理庁のホームページ内で一覧が掲載されています。
別の設問も見てみましょう。
外国籍の方の入居サポートサービスや政府などの入居受入れガイドラインがあることを知っている、という設問。
外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居のために、国土交通省と公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会の協働による「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」が公開されています。
「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」では、賃貸人、仲介事業者・管理会社向けに、外国籍の方の入居に対応するための実務上のルールをまとめています。
また、契約書等の見本が14の言語に翻訳されています。
言葉の意思疎通に不安があっても、指差しで確認できるように工夫されているので、現場で活用できます。
不動産会社対応
次に、店頭での対応について焦点を当てた「不動産会社対応」です。
このパートは、「問合せ時、来店時、内見時」「申込時、契約時、引越し・入居後」の2つのシチュエーションに分けての設問となります。
「問合せ時、来店時、内見時」が7問、「申込時、契約時、引越し・入居後」の10問、の全17問の構成です。
各シチュエーションから1問ずつ見ていきましょう。
まずは「問合せ時、来店時、内見時」から。
【来店時】 日本で住宅を借りる際に必要になる費用が日本特有であることを理解している、というこちらの設問について見てみましょう。
諸外国では、共益費が家賃に含まれていることや礼金や保証委託料が存在しないこと、保証人を求めない国がほとんどであり、“部屋を借りる”と一口に言っても、海外と日本では異なる点が多々あります。
日本では当たり前と思って説明を省くと、後々のクレームや契約破棄に発展しかねません。
「賃貸借契約の結び方が海外とは異なる」という前提を理解し、丁寧な説明を通して双方が納得した円満契約となるよう努めましょう。
それでは、次の設問。
【契約時】部屋の使い方や隣近所の付き合い、共用部のマナーなどを説明する理由が分かる、という設問です。
先述の初期費用同様、生活面においても習慣の違いが行き違いを生む場合があります。
土足厳禁のルール、共用部分の使い方、ゴミ出しのルールなど、日本とは生活様式が違うことを念頭に置いて説明し、細かい部分もしっかり伝えることが重要です。
なかでも、ゴミの分別方法は特にクレームが多いといわれています。
日本のゴミ出し方法を理解していないことが問題になることが多いので、自治体のルールを理解してもらうため書面にして分かりやすく伝えましょう。
また、近隣とのクレームやトラブルを回避するには、日ごろからの近所づきあいが重要です。
部屋の両隣・上下の住人、管理人への挨拶をしてもらうよう促してみてください。
おわりに
外国籍のお客様がお見えになったとき、ちょっとした緊張が走ることは少なからずあると思います。その緊張も、対応の仕方や必要書類についての予備知識があれば、和らぐはずです。
さまざまなお客様が訪れる不動産会社だからこそ、どんなお客様にも対応できる素地を養っていきたいもの。そのためにFRIENDLY DOORのチェックリストを大いに活用してもらえたらと思います。
▼参考
LIFULLプレスリリース:【不動産業界初】LIFULL HOME'S、外国籍居住者の基礎知識や接客方法への理解を促す「外国籍接客チェックリスト」を不動産会社向けに提供開始