1日10分の免疫学(56)IgE介在性免疫③
マスト細胞について
本「マスト細胞は、中枢神経系と網膜以外の血管が分布するすべての組織(体表の粘膜や上皮組織)に存在する」
大林「うーん、いまいちどこなのかピンと来ないんだけど、脳と脊髄と網膜以外の組織表面に幅広く居るってことかな。さすがは警備員!」
※「休み時間の免疫学」でマスト細胞は警備員に例えられています
本「マスト細胞は、局所の外傷や感染の注意喚起をして、組織損傷の修復を促す役割を担っている」
大林「マスト細胞は、感染等を察知したらほかの細胞たちに注意喚起して、修復の促進もしているってことか」
本「マスト細胞は、TLR(Toll様受容体)やIgG、IgAのFc受容体ももっている」
大林「TLRは自然免疫の病原体センサーだよね。IgGとIgAを結合する受容体も持ってるってことは、マスト細胞は自然免疫と獲得免疫の両方に参加してるわけだ」
本「IgEによるFcεRⅠを介したマスト細胞活性化は、マスト細胞に脱顆粒を起こし、エイコサノイドをつくらせるだけだが、他の受容体を介した活性化は他の免疫細胞を召集したり組織修復を促進させる」
大林「えぇと、FcεRⅠ(エフシー イプシロン レセプター1)というマスト細胞上の受容体とIgEが結合したときは、脱顆粒とエイコサノイド産生しかしないってことか。エイコサノイドってどんな作用があるの」
本「エイコサノイドとは、低分子炎症性メディエーター」
大林「つまり、マスト細胞にIgEが結合したら脱顆粒と炎症性メディエーターが出るだけってことね」
本「マスト細胞から放出されたメディエーターにより、循環中の白血球はマスト細胞の活性化してる局所に遊走する」
大林「白血球……この場合は好酸球、好塩基球、好中球、そして我が推しのTh2ですね!」
本「これらの細胞は共同して爆発的な反応を起こし、寄生虫を排除する」
大林「頼もしいねぇ」
本「相手が寄生虫だったら、寄生虫を排除する恩恵は免疫応答による障害を上回るが……」
大林「肉を切らせて骨を切る!でも、無害な抗原が相手だったら……」
本「なんの利益もなく組織の損傷や機能不全を起こすことになる」
大林「とてもつらい」
本「アレルゲンが増えて頻繁に刺激を起こすと、そのたびに多くのマスト細胞や好酸球が集められ、反応が強化されていく」
大林「同じ敵に対してどんどん防衛が洗練され、迅速化、強化されていくんだよね。普段なら心強い軍拡なのに……無害な抗原相手のアレルギーだと得られるものがなくてつらい」
好酸球について
本「好酸球はエオシンeosinに強く染色されるのでその名がついた」
大林「遅延型……4型過敏反応に登場する好酸球は遅れてやってきて長居するんだよね!」
本「好酸球は、気道や消化管、尿生殖路の上皮直下の結合組織に存在する」
大林「血中にはいないの?」
本「少しだけいる。好酸球の持つ毒性分子は微生物や寄生虫を直接殺す」
大林「マジで?!強いな!そんな強い毒を持っていてヒトは大丈夫なの?」
本「健康なときは骨髄での好酸球の産生を制限している」
大林「なるほど、普段は少ないのか」
本「感染や抗原刺激によりTh2が活性化されてIL-5等が分泌されると、骨髄での好酸球の生成と末梢血への放出が増える」
大林「そういえば先日、好酸球増加症っていうのを見かけたな」
本「例えば、ある種のT細胞リンパ腫ではIL-5が作られ続けて好酸球が増え続ける」
大林「するとどうなる?」
本「好酸球が増加しすぎると心内膜や神経に障害を受けることがある」
大林「ひぃ~持っている毒素が強力ゆえに!」
好塩基球について
本「好塩基球はヘマトキシリンなどの塩基性色素で染まる。顆粒がマスト細胞と類似しているが、分化は好酸球に近い。好酸球と好塩基球の数は相互に制御されていると考えられている」
本「好塩基球は数が少ないため研究が困難だった」
大林「あ~、白血球の約1%だっけ。困難だった、ということは今は色々わかってきてるってことですね!」
本「好塩基球は、自然免疫において感染組織に集まってTLR(Toll様受容体:Toll like receptor)などを介して活性化して脱顆粒し、適応免疫応答の初期には二次リンパ組織にも集まり、IL-4,IL13を分泌してT細胞をTh2細胞応答へと誘導する」
大林「それは古い入門書にも書いてた!」
大林「でも、Th2は他のTh0をTh2に誘導するサイトカインを出すけど最初に誘導してる細胞は不明だって言ってたよね?もしかしなくても好塩基球なんじゃない?」
本は答えない!
本「好塩基球はCD40リガンドを発現していて、抗原で活性化したB細胞のCD40と結合するとIgEやIgG4へのクラススイッチを誘導する」
Wiki「リガンドとは、生体分子と複合体を形成して生物学的な目的を果たす物質のこと。標的タンパク質上の結合部位に結合することでシグナルを生成する分子」
大林「要はくっつくんですよ!くっついて役目を果たすんですよ!」
※大林は自作の物語に登場するキャラクターにリガンドという名前をつけている
大林「ん?!B細胞のクラススイッチ誘導はTh2の機能だけじゃないの?好塩基球も?!」
本はこの疑問に答えない!
本「そうして作られた特異的IgEは好塩基球のFcεRⅠに結合して、好塩基球は活性化する」
大林「好塩基球が活性化するためにB細胞をクラススイッチさせてるみたいな流れだなぁ」
本「マスト細胞、好酸球、好塩基球は協調して働くことが多い」
大林「なるほど同僚。名前や分類としては、好中球・好塩基球・好酸球を3種セットで覚えるけど、働きを覚えるなら、好中球※貪食細胞/マスト細胞・好塩基球・好酸球みたいなセットかな」
本「マスト細胞の脱顆粒で炎症反応が始まると好酸球や好塩基球が遊走を促進され、好酸球の脱顆粒によりマスト細胞や好塩基球も脱顆粒する。IL-3,IL-5,GM-CSFなどにより好塩基球の脱顆粒は増強され、好酸球と好塩基球の増殖分化活性化に関与する」
大林「全部繋がってるな!IL-3とかはわかるけど、GM-CSFって何さ?!」
Wiki「GM-CSF(Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor:顆粒球単球コロニー刺激因子)は、多能性造血幹細胞に分化を促すサイトカインの一種」
大林「名前が長すぎて到底1度では覚えられない!」
今回はここまで!