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1日15分の免疫学(98)アレルギー疾患③

アレルギーの遺伝的・環境的な感受性について

本「アレルギー疾患発症の感受性には遺伝的環境的両方がある」
大林「どちらかヒットで発症ではなく、両方ヒットで発症ってことか」

本「西欧での研究で、被験者の最大40%の人多種多様な環境アレルゲンに対してIgE応答を示した」
大林「多種多様……ひぇぇ」

本「アトピー患者はアレルギー性鼻炎・結膜炎、アレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を2つ以上発症することが多い」
大林「アトピーマーチってあったな」

本「ちなみにこの3つをすべて発症している患者はアトピー三徴候atopic triadと言われる」
大林「アトピー性の鼻炎・結膜炎、喘息、皮膚炎……QOL下がる」

本「ゲノムワイド関連解析(GWAS)により、アトピー性皮膚炎とアレルギー性喘息の疾患感受性遺伝子40以上発見されている」
Genome-Wide Association Study:ゲノム情報に基づいた遺伝的要因を考慮し、同一疾患でも個人の病態やリスクに応じた層別化を行うことで、それぞれの患者に最適化した医療の提供を目指すもの。 日本人集団27万人を対象とした、大規模な疾患バイオバンク。

大林「40以上も関係してるの?治療するのに大変だ」
本「アトピー性皮膚炎アレルギー性喘息共通する感受性遺伝子がある」
大林「たとえば?」
本「IL-33レセプターIL-13遺伝子座はアレルギー喘息とアトピー性皮膚炎両方に強く関連している」
大林「へぇ」
兵庫医科大「IL-33は様々な臓器の上皮細胞や血管内皮細胞の核内に局在し、組織傷害によって短時間で細胞外に放出されます。しかし、その産生機序は未だ不明な点が多いのが現状です」
大林「お!そうだったんだ!前にわからなかったとこが解決!」

本「アレルギー性喘息とアトピー性皮膚炎の両者の疾患感受性遺伝子候補の1つは高親和性IgEレセプターFcεRⅠのβサブユニットで、染色体11q12-13に存在する」
大林「ほぉ…染色体の名前と言うか分類の書き方全然わからん…」
本「他のゲノム領域で5q31-33は少なくとも4つの疾患感受性を高める可能性を持つ候補遺伝子を含んでいる」
大林「ふむん…」

本「この反応にはIL-3,IL-4,IL-5,IL-9,IL-13,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が含まれる。特にIL-4のプロモーター領域の遺伝子変異がアトピー患者のIgE値上昇と関連している」
大林「IL-4か、推しが作ってた気がするぞ」
Wiki「活性化CD4+ T細胞をはじめ、マスト細胞NKT細胞などによって産生される。IL-4はアレルギー惹起作用抗感染症を示す。気管支喘息免疫疾患であり、その病態形成にはTリンパ球が重要な役割を果たしている。アレルギー疾患の発症に関与するといわれるTh2細胞への分化にはTh2サイトカインと呼ばれる分子群の寄与が大きく、IL-4IL-5IL-13などと共にTh2サイトカインの一つに数えられる。」

本「第5番染色体領域の二つ目の遺伝子セットはTIMファミリーである」
大林「ティム?」
本「T cell immunogloblin domain, mucin domain」
大林「T細胞抗体ドメイン??なにそれ!」
本「3つのT細胞表面蛋白質(Tim-1,2,3)と主に抗原提示細胞に発現するTim-4がコードされている。マウスではTim-3蛋白質はTh1細胞に特異的に発現してTh1応答を負に制御する」
大林「負に制御……つまり抑制するのか」
本「Tim-2とやや弱いがTim-1はTh2細胞に選択的に発現してTh2応答を負に制御する」
大林「つまり、3つのTIM遺伝子変異アレルギーと関連するってこと?」
本「気道過敏性airway hyperreactivityすなわち反応性亢進hyperresponsivenessと相関している。TIMに変異がある人特異的刺激物でも喘鳴息切れを伴う気道狭窄が起きる」
大林「非特異的刺激物……刺激物ならなんでもってこと?」
本「アレルギー疾患の発症を誘発する遺伝子あるいは遺伝子群の同定には、患者群と対照群について大規模の複数の研究必要
大林「アレルギー解明まで先は長そうだ…だからトンデモ医療詐欺が跳躍跋扈しちゃう」

本「IgE応答での二つ目の遺伝子変異は、HLAクラスⅡ領域に関連して特定の抗原に対する反応性に影響している」
大林「HLA……MHCクラスⅡか」
本「ペニシリンなどの薬物アレルギーは、HLAクラスⅡやアトピー素因の有無は関係ないと考えられていたが、一部の薬物HLA分子の抗原結合溝に結合したペプチド抗原の構造を変化させて特定のHLA対立遺伝子と相互作用して変化したペプチドが自己免疫型の応答を引き起こすことが実証された」
大林「途中から何言ってるか頭が追いつかなくなった……難しい、意味不明。とりあえず遺伝子変異も関係してるということだけわかった」

本「アフリカの経済後進国における喘息発症率は低く、非アフリカ系アメリカ人よりアフリカ系アメリカ人は喘息発症率と重症度が高い」
大林「つまり遺伝環境相互作用ってわけか」

本「アトピー性疾患増加の原因として、遍在する微生物に対する曝露状況の変化が1989年に示唆され、最終的に衛生仮説に至った」
大林「一時期強かったよね衛生仮説。今はどうなの?」
本「蠕虫感染とアレルギー疾患発症の強い負の相関から、過度に単純化された解釈であるとされた」
大林「だよね、わかりやすくてお茶の間にも広まった説だったけどさ」

本「ベネズエラで長期間抗寄生虫薬による治療を受けた子供はアトピーの有病率が高いことが示された」
大林「寄生虫治療したということは寄生虫がいたのか…なのにアトピー?たしかに衛生仮説では説明がつかない」
本「それに蠕虫強いTh2細胞依存性IgE応答惹起するから矛盾も生じる」
大林「たしかに。対蠕虫戦はTh2細胞の本領発揮だよね」

本「すべての感染症アトピー発症防御すると考えうる。ちなみに現在の衛生仮説の基本的な考えは、幼少期の病原微生物や常在細菌叢に対する曝露の減少によってTreg細胞の産生低下をきたして、ありふれた環境抗原に対するアレルギー反応の発生リスクが増えるというもの」
大林「Treg細胞(制御性T細胞)は免疫界の守護神だもんなぁ、最後の砦」

制御性T細胞擬人化紹介


本「多くの研究により、過剰な2型応答を抑制する機構アトピー患者では障害されていることも示唆されている」
大林「本来は抑制される反応だもんな」
本「アトピー患者の末梢血中のCD4陽性CD25陽性Tregは、非アトピー個体のTregと比較してTh2サイトカイン産生抑制作用弱く、この機能低下花粉の季節より顕著となる」
大林「な、なんだってー?!なんで?花粉なんで?!」
◆復習メモ
T細胞:胸腺(hymus)で分化・成熟する免疫細胞。ヒト細胞表面にあるMHC分子を認識し、自己と非自己を区別することができる。

T細胞の主な種類
CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞(Th1Th2,T17,Tfhなどがある)と制御性T細胞Treg:Regulatory T cellに分かれる)
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
・CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)

本「マウスの実験によると、Treg機能を高める治療が、喘息や他のアトピー性疾患に有益と示唆されている」
大林「おぉ~!いやまって、さっきの花粉の時期に顕著になる理由は?」
本は答えない!!!

まとめ

アレルゲンは一般に無害な抗原だが、感受性を有する個体ではIgE抗体応答が誘導される。
抗原は、粘膜からごく少量が体内に侵入して2型応答を誘発する。
IL-4,IL-13などによりアレルゲン特異的ナイーブT細胞Th2細胞へ分化誘導される。
アレルゲン特異的Th2細胞は、IL-4,13を産生してアレルゲン特異的B細胞IgEにクラススイッチ誘導する。
アレルゲン特異的IgEは、マスト細胞好塩基球の表面にある高親和性IgEレセプターに結合する。
IgE過剰産生は、遺伝的要因、環境的要因両方の影響をうける。

大林「まとめだけ理解できた」
本「次節は、アレルギー反応の機構について」
大林「推しがあまり出て来なくて退屈だな……いや、アレルギーもTh2細胞が出てくるけどさ」

今回はここまで!
細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
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