1日5分の免疫学(22)Ⅰ型アレルギー
本「じゃあ、アレルギーについて勉強するで!」
大林「ピーナッツバター!花粉!金属!」
本「自分の体の成分(自己抗原)に対する反応もある」
大林「味方を敵と間違えて攻撃する悲劇……自己免疫疾患!」
厚生労働省HP「アレルギーallergyとは、ギリシャ語のallos(変じた)とergo(作用・能力)とに由来し…」↓↓↓
本「アレルギーとは、過剰な(必要のない)免疫防御反応。Ⅰ型~Ⅳ型に分類される」
大林「それ何度読んでも忘れる。どれがどれやら」
本「1番重要なのはⅠ型アレルギーや。まずこれを覚えろ。Ⅰ型アレルギーの代表的なものは、蕁麻疹、アナフィラキシー反応、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど」
大林「さらっと死ぬやつ混ざった?!」
<Ⅰ型アレルギーの基本>
★即時型(反応出るのが早い!)
★IgEが結合したマスト細胞が主役
<Ⅰ型アレルギーの起き方>
①抗原が侵入
②マクロファージ・樹状細胞・マスト細胞が炎症性サイトカインを放出
③抗原提示を受けたCD4ナイーブTがTh2に分化、IL4を放出
④同じく抗原提示を受けたB細胞がTh2に出会って形質細胞に増殖&分化、IL4の影響で抗体のクラススイッチはIgE!!!
⑤IgEがマスト細胞に付着し、その状態で抗原がIgEに結合してマスト細胞の表面にある受容体がクロスリンクすると、マスト細胞が活性化されてヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどを放出!
大林「Ⅰ型アレルギーはマスト細胞が悪役(ドジっ子?)で表現されたりしてるけど、どっちかというとIgE作ってる形質細胞が…」
本「目立つのはマスト細胞だからな」
大林「気の毒」
本「抗体は抗原に結合するもの。IgGなら好中球の貪食して一件落着」
※復習※
抗体=免疫グロブリンimmunoglobulin、略称はIg。大別してIgG,IgA,IgM,IgD,IgEの5種類。G,A,M,D,Eの由来はギリシャ文字のγガンマ、αアルファ、μマイクロ、δデルタ、εエプシロン。
大林「IgG…暗記法は『グルメのG』!好中球の貪食効果がUPする!」
本「少し詳しく言うと、好中球はIgGのFc部分に対する受容体FcγRを持ってるんや」
大林「好中球にはIgGを掴む受容体(FcγR;エフシーガンマレセプター)があるから、IgGのくっついた抗原は貪食が捗る…」
本「そして、マスト細胞はIgEのFc部分に対する受容体FcεRⅠを持ってる」
大林「エフシーイプシロンレセプターワン!」
本「このマスト細胞の受容体に抗原と結合したIgEが二つ以上またがって結合すると、マスト細胞は活性化される」
大林「ん?どういうこと?」
本「抗原とセットになった抗体によるクロスリンク…つまり、受容体が架橋されると活性化するんや。これをFcレセプターのクロスリンクという!」
大林「なんでクロスリンクしないと活性化しないの?核スイッチは同時に二人が押さないとダメ的なやつ?」
本たちは答えない!!!!
本「さて、特定の抗原によってIgEが産生されやすい性質のことをアトピー性atopyまたはアトピックatopicという」
大林「その性質というかアトピー体質ってなんでそうなるの?生来的なもの?環境?」
本たちはなかなか答えない!難しそうだ!
本「マスト細胞に似た細胞がいるの知ってるか?」
大林「好塩基球!」
本「働きがそっくりで、違いは、マスト細胞は組織に存在するのに対して、好塩基球は血液中に数パーセント存在するのみ。血液中で好塩基球が増えてたらⅠ型アレルギーを疑っていい」
大林「マスト細胞は未熟の段階で骨髄を出てから組織に出て分化するらしいんだっけ?組織に移ってから分化するのはマクロファージと同じだな!」
本「クロスリンクで活性化したマスト細胞がばらまく脂質メディエーターで生じるアレルギー反応は、数分から数十分とスピーディーに生じる」
大林「即時型アレルギー反応!」
本「またの名をアナフィラキシー反応anaphylaxi」
大林「死ぬやつ?!」
本「言っておくけど、アナフィラキシー反応がすべてアナフィラキシーショックに繋がるんとちゃうで」
【日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドラインより】
アナフィラキシー:
アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与えうる過敏反応。
※大林注記「与えうる」であって、すべてのアナフィラキシー反応が死ぬ!というわけではない。基本は「即時型アレルギー反応」という意味で読んだ方が冷静に学べる。
アナフィラキシーショック:
アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合のこと。
大林「医療用語で、ショックとは血圧が(急激に)下がってしまうこと」
本「アトピー性皮膚炎に関するトンデモ情報は多い」
大林「この前もツイッターで炎上してたなぁ」
本「実はⅠ型アレルギーって厄介でな、マスト細胞さえ止めれば解決ってもんじゃない、IgEとマスト細胞による即時型からTh2による遅延反応型へ続いていくんや…」
大林「Ⅰ型アレルギーの話にTh2が?!」
本「まあ実際この話はⅣ型アレルギーなんやけど。Th2系のサイトカインは好酸球の増殖を促す」
大林「好酸球といえば遅れてやってきていつまでもいるやつ!」
本「せや、好酸球により組織の慢性的な炎症破壊が生じる」
大林「あぁ……だからアトピーってなかなか治らないのか」
本「とはいえ、蕁麻疹やアナフィラキシー反応といったⅠ型は、即時型反応だけで終わることがほとんどやで」
大林「アトピーはⅠ型→Ⅳ型なのかぁ」
本「類型としてはⅠ型だけどな、Ⅳ型も含むって覚えとき」
大林「アトピーといえばステロイドが気になります!」
本「好酸球による炎症に対しては副腎皮質ステロイド薬が使われる。ステロイドは好酸球だけでなく全ての白血球の働きを止める」
大林「ひえぇ、やっぱりそうなんだ。推しにステロイドは危険……」
本「でも治療のためには、まずは慢性化した炎症を鎮めないといけない」
大林「きちんとコントロールされた投薬であれば、危険は最小限の筈」
《今回のポイント》
アレルギーにはⅠ型~Ⅳ型まであるよ!
一番メジャーなのはⅠ型アレルギーで、反応が早く出て、わりと短期間で収まるのが特徴。
アナフィラキシー反応は、ショック状態(一気に低血圧になる)に陥ると命にかかわる。
アトピー性皮膚炎も、類型としてはⅠ型。慢性化にいたるのはⅣ型の反応。
ステロイドはきちんとコントロールされた投薬であれば、副作用よりもメリットの方が多く得られる。
次回は、Ⅱ型アレルギーについて勉強します。