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相続土地国庫帰属制度の概要2(国庫帰属Vol.3)

 前回の”相続土地国庫帰属制度の概要1”では、どのような土地を国に返せるのかというテーマで解説しましたが、今回は、承認申請における手続費用や費用負担のシミュレーションをご紹介します。

 法務局に35年勤務した経験からしましても、相続土地国庫帰属は本当に画期的な制度ですし、使える制度です。

 ただ、費用負担が大きなネックとなっていますが、子孫に負の財産を遺さないという想いを持たれた方々に向けて、少しでも有益な情報をお届けしたいと思います!


1 承認申請の審査手数料

 審査手数料は、土地一筆につき14,000円です。
 この審査手数料は、承認申請書に収入印紙を貼って納付します。

【重要】承認申請を途中で取り下げたり、却下や不承認の判断となった場合でも、審査手数料は返還されません。

2 負担金

 負担金とは、承認後に国に納付すべき10年分の管理費相当額です。
 原則として、土地一筆につき20万円となりますが、市街化区域などでは面積区分に応じた算定となります。

 「え~、土地を国に返すのにもお金を取られるの!」とお思いでしょうが、国庫に帰属した後、国がその土地を管理し、草刈りや樹木の剪定(せんてい)などの作業を行いますから、その一部を前納により申請者が負担することになっています。

 国庫帰属が承認されると、法務局から負担金の納入告知書が郵送されてきますので、日本銀行(代理店でも可)に30日以内に納付してください。納付期限を過ぎた場合は、国庫帰属の承認が失効します。

対象土地の面積 = 登記記録上の地積を基準
対象土地の地目 = 登記記録上の地目を基準としますが、登記記録上の地目と課税上の地目とが異なるときは、課税上の地目を基準とし、現地調査や管理予定庁の意見を踏まえて決定します。


【宅地の場合】

〈原則〉20万円(面積にかかわらない)
〈例外〉宅地が、都市計画法の市街化区域又は用途地域にあるときは、次の面積区分により負担金を算定します。

【田や畑の場合】
〈原則〉20万円(面積にかかわらない)
〈例外〉農地のうち、①都市計画法の市街化区域又は用途地域にあるとき、②農業振興地域の整備に関する法律に定められた農用地区域内にあるとき、③土地改良事業等の施行区域内あるときは、次の面積区分により負担金を算定します。

【森林の場合】
 次の面積区分により負担金を算定します。

【その他の土地(雑種地や原野など)】
 20万円(面積にかかわらない)

3 負担金の合算申出

 承認申請の対象土地が二筆以上あり、それらが同一の土地区分で隣接している場合は、それらを一筆の土地とみなして負担金を算定することができます。

4 費用負担のシミュレーション

 価値観は人それぞれですし、祖先から脈々と引き継がれた大切な財産ですから、国に返す必要はありません。

 ただ、その土地を所有することに何の思い入れもなく、所有することがマイナスとなるのであれば、売却や贈与など、民間での利活用を進める選択肢もあります。

 これからの時代は、地域によって不動産に対する資産価値やニーズが変化していきますので、長期スパンで考え、何よりも子孫に負の財産を遺さないということを検討しなければならないのかもしれません。

【編集後記】

 何度も申し上げますが、相続土地国庫帰属制度は、これまでにない画期的な制度ですし、必ずしも高いハードルではありません。
 審査手数料や負担金が高額になるというのがデメリットですが、10年、20年、30年と長期スパンで考えますと、負担が大きいと言えるかどうかです。

 当事務所が受任している福岡県内の土地は、3000平方メートルを超える広大な土地であるため、その上に生い茂った樹木を伐採するだけで300万円を下りませんし、負担金も100万円となる見込みです。
 また、別に受任しています北海道の土地は、170平方メートルくらいですが、都市計画法の用途地域に該当するため、審査手数料と負担金で約70万円になりそうです。

 そんなに費用をかけてまで国庫帰属をしなければならないのか、若しくは、将来を見据えた判断なのか、あなたの価値観はどうですか…


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