この夏、子どもも大人も性の話に触れてみませんか?
「おすすめの本や動画を教えて!」という質問をよく頂きます。
あくまで個人的な好みに基づいていますが、私たちのオススメを年齢別にまとめてみました。
書籍:全年齢向け
★「赤ちゃんってどうやってできるの?」いま、子どもに伝えたい性のQ&A (アクロストン、主婦の友社)
いきなり自著ですみません。笑
3から9歳の保護者向けとなっていますが、イラストをたくさん入れたので読み聞かせにも使えます。また、小学校高学年ぐらいからは子どもが自分で読むこともできます。「子どもが自分で読み進めている」という感想をたくさん頂いています。
生理、射精、セックス、赤ちゃんが生まれるまでをポップなイラスト付きで解説しています。またセックスなど子ともに説明しにくいことを、その子の成長に合わせてどう説明するのかなども載せています。noteでこの本の半分ぐらいは立ち読み出来ますので、ご参照ください。
アートディレクターさんにもご参加いただき、カラフルなクラフトやイラストが満載です。私たちの活動の目的の一つ「リビングに置いておきたくなる性教育の本」になったと自負しております。また、日本の性教育の本は「母と子どもでの性教育」がテーマのものが少なくないのですが(なんで?)、そのこともあり父でも母でも性別に関係なく一緒に学べる本にしました。
書籍:未就学児向け
★あっ!そうなんだ性と生―幼児・小学生・そしておとなへ (浅井春夫、安達委雅子、北山ひと美、中野久恵、星野恵、エイデル出版)
未就学児から小学生向け。分かりやすいイラストで性の話が一通り書いてあります。親子で読んでも良いし、子どもが1人で読んでも十分理解できると思います。これが一冊あると、子どもから性について聞かれた時にイラストを見せながら説明することも楽ちんです。
★赤ちゃんが生まれる-いのちの冒険旅行 (著・ニルス タヴェルニエ、監修・杉本充弘ブロンズ新社)
未就学児から中高生向け。タイトルはかわいらしく、外観が絵本の作りですがかなりマニアックに赤ちゃんが生まれるまでの話が書かれている本。子ども自身が読むのも、読み聞かせするにも文字が多すぎますが、お子さんと一緒に眺めて所々一緒に読むのがおすすめです。私たちはワークショップや授業におススメ本を持参しているのですが、この本は子ども達から一番人気があります。イラストはほぼCGですが本物そっくり。科学的な知識を得るにはばっちりです。
★幼年版 赤ちゃんが生まれる
未就学児から小学校低学年。上の赤ちゃんが生まれる-いのちの冒険旅行の本の写真を集めたもの。簡単な言葉で解説されてます。子どもの読み聞かせに良いです。
書籍:小学生向け
★ポップコーンエンジェル (マンガ・手丸かの子、監修と解説・山本直英、子どもの未来社)
小学校中学年から中高生向け。下に紹介しているロケットボーイズ、レインボーキッズと並んで性教育マンガの最高峰と私は思ってます。お子さんの性別に関係なく、3冊読むと良いと思います。
生理でどんなことが起こるかとか、困りごとにはどう対処するのかなどが分かりやすくマンガで解説されてます。マンガで足りないところを解説文で補足していますが、ここに書いてあるのは親から子供へ説明する際の参考になることが満載です。ちなみにマンガの絵柄はちょっと古い感じ(この本自体が2001年刊行だけど、テイストは昭和寄り)ですが、我が家の子ども達は大好き。この漫画をもう何周していることか分かりません。下の二冊もそうですが、大抵の図書館に置いてあります。娘さんのいる父親は特にこれを読んでおくことをお勧めします。
★おれたちロケットボーイズ (マンガ・手丸かの子、監修と解説・金子由美子、子どもの未来社)
小学校中学年から中高生向け。男子の思春期の性について書いてる本はただでさえ少なく、本当に貴重なマンガです。勃起、夢精、射精等の基礎知識もばっちり分かります。
★マンガ レインボーkids (マンガ・手丸かの子、監修と解説・金子由美子、子どもの未来社)
小学校中学年から中高生向け。LGBTについてのマンガです。こちらも優しく、リアルな目線で描かれています。親子で楽しんで学べるマンガです。
★ソーリ! (著・濱野京子、画・おとないちあき、くもん出版)
おススメ本の中で唯一の児童文学作品です。ジェンダーギャップ、民主主義、人種差別など、多岐にわたる内容を積み込んでいるのに、ストーリーが面白いという凄い作品です。小学校中学年から大人まで楽しめます。読書感想文の宿題にも良いのでは。別の記事に詳しい書評を書いてます。
書籍:中学生・高校生向け
★はなそうよ!恋とエッチ (すぎむらなおみ、えすけん、生活書院)
養護教諭の先生方が書いている本。中高生が必要な知識が分かりやすいイラストと共に解説されています。実際に学校で先生方が遭遇したケースも載っており、中高生のみではなく大人、保護者にとっても役に立ちます。子どもが1人で読み進めていくのにも向いてます。(本のサイズは大きいのですが)
★北欧に学ぶ 好きな人ができたらどうする (作・アンネッテ ヘアツォーク、絵・カトリーネ クランテ、ラスムス ブランホイ、訳 枇谷玲子)
デンマークで描かれたマンガです。思春期の女の子と男の子の恋愛を軸に性の話について学べるのですが、この本ちょっと変わった作りになっていて、クライマックスで「おお!」となること間違いないです。以前に詳しい書評を書きましたのでご覧ください。
★ジェームズ・ドーソンの下半身入門:まるごと男子読本 (著・ジェームスドーソン、訳・藤堂嘉章、太郎次郎エディタス)
中高生の特に男子向け。とにかくノリの良い本です。男子向けの本としては個人的には一番好きです。イギリスで大ヒットした男子向け性教育本の翻訳版。フランクな語り口で、学校での悩み、パートナーとの付き合い方、セックス、避妊のことなど中高生に伝えたい内容が網羅されています。イラストも軽い感じで、ボリュームのわりにサクッと読めます。中高生男子が自分で読むのには丁度良いと思います。
★マンガでわかるオトコの子の性-思春期男子への13のレッスン (著・染谷明日香、監修・村瀬幸浩、イラスト・みすこそ、合同出版)
中高生男子向け。ピルコン(サイトの欄を参照)の代表、染矢明日香さんの本。マンガで分かりやすく中高生男子の思春期の悩みが書かれています。たまに首をかしげたくなるマンガ的表現(トイレに保健の先生が出てくるとか)がありますが、内容がまとまっていてサクッと読めます。
書籍:大人向け
★性の幸せガイド (関口久志、エイデル研究所)
保護者向け。データやグラフはこの本が一番まとまっています。エビデンスに基づいたものを知りたい方におススメです (私たちはこの本かなり読みこんでいます)。また実際の子ども達の事例も豊富に載っていて、そこを読むだけでも若者の性の実態がつかめてきます。今の子ども達の性の全体像を掴むのにはうってつけの本です。
★教科書にみる世界の性教育 (橋本紀子、池谷壽夫、田代美江子、かもがわ出版)
世界の性教育について。教科書を中心に8か国の性教育の比較が載っています。この本を読むと、とりあえず日本の教科書がイケてないことがよく分かります。ヨーロッパの性教育に関する記事や書籍はよくありますが、日本と同じアジア圏の中国、韓国についても載っています。世界の性教育とくらべ、日本がいかに遅れているかを実感させてくれつつ、同時に性教育の知識も得られるのでおすすめです。
★地図とデータで見る性の世界ハンドブック (著・ナディーヌ カッタン、ステファヌ ルロワ、訳・太田 佐絵子、原書房)
世界中での性のあらゆる状況について分かる本。世界のどこで売春が行われているか(提供する側、顧客両方の面)、戦争において兵器としてレイプが用いられていた歴史、いわゆる結婚が意味をなさなくなっている状況など、普段あまり考えない、けれども重要な視点の話が満載です。フランスのスワッピングマップまであり、性に対する文化や考え方がいかに違うのかがよく分かりました。ヨーロッパの話題が中心ですが、日本も売春のテーマで出てきます。海外へ売春ツアーに行く人がこんなにいるとは、と驚きました、、。
値段はちょっと高い(3300円)ですが、その価値があります。
★13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル (山本潤、朝日新聞出版)
Springという、「性被害当事者が生きやすい社会の実現を目指す当事者団体(HPより)」の代表理事である山本潤さんが書いた本です。性被害当事者であるご自身の体験、支援者がどのようにアプローチをするか、刑法の問題点は何かなど性犯罪をとりまく現状がとてもよく理解できます。
2017年に刑法性犯罪は110年ぶりに大改訂されていますが、公訴する時効が設定されていること、暴行脅迫要件があること、性的同意年齢が13歳であることなど問題が山積みです。今年はその改定見直しの年。検討会が開催されており、注目のテーマです。今年読むべき一冊だと思います。
★ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた-あなたがあなたらしくいられるための29問 (著・一橋大学社会学部佐藤文香ゼミ生一同、監修・佐藤文香、明石書店)
「どうしてフェミニストは萌えキャラを目の敵にするの?」など、よく話題になるようなテーマについてジェンダー研究を元に分かりやすく解説されています。私はこれを問題集のように使ってました。一個一個の問いについて考える→解説を読む、というプロセスで自分がまだ理解できていなかったことなどが確認できます。
「男女平等を目指す世の中で女子高の意義ってなに?」、、「フェミニズムって危険な思想でしょ?」、「性欲って本能でしょ、そのせいで男性が女性を襲うのも仕方ないよね?」など扱っている分野も広いので大人が性の知識をアップデートするのにとっても役に立つ本です。
★百合のリアル (牧村朝子、星海社新書)
LGBTQ+全般のこと、SOGI(性的指向、性自認)のことがとても分かりやすく解説されています。ストーリー仕立てで解説が進んでいき、読みやすさ抜群。この分野について学びたい方はまずはこの本が良いのでは。
★どうせカラダが目当てでしょ (王谷晶、河出書房新社)
「自分のからだのことを他人がとやかく言うな!」という感じで、髪、乳、爪など体の各パーツ(表情や声もある)にまつわる「ルッキズム」とか、「女性らしさの押し付け」の呪いをガンガン撃破してくれてて、爽快です。ウンウンと頷きながらあっという間に読破しました。
★フェミニスト現象学入門-経験から「普通」を問い直す (稲原美苗、川崎唯史、中澤瞳、宮原優 編、ナカニシヤ出版)
「女の子らしい身振りとは何か?」、「なぜ月経を隠さなければならないのだろうか?」、「外見を気にしてはいけないのか?」、「性別違和とは何か?」など、たくさんの人が経験するような出来事を元に、それぞれの事象のことを問いただしています。ここに記述されている経験は、私自身が体験したものと似ている部分もあり、自分の人生を振り返りつつ読んでいました。きっとみなさんも自分のことがこの本の中に書かれていると思います。
★フェミマガジン エトセトラ(巻によって責任編集が違います、エトセトラブックス)
現在3冊出ているエトセトラ。Vol 1は「コンビニからエロ本がなくなる日」(田房永子 責任編集)、Vol 2「We love 田嶋陽子」(山内マリコ、柚木麻子 責任編集) 、Vol 3「私の私による私のための身体」(長田杏奈 責任編集)。
どれも読みごたえがあります(Vol 3には私たちのインタビュー記事も載せて頂いてます)。この秋には石川優実さん責任編集のものが出る予定とのことで、楽しみ!
★からだと性の教科書 (著・エレン ストッケン ダール、ニナ ブロックマン、訳・高橋幸子、NHK出版)
ノルウェーの医師2人が書いた本。女性(生物学的)のからだの仕組み、月経、避妊、中絶、婦人科疾患のことが本当に詳しく書かれています。この領域を深く学びたい方向けです。この本には専門的なことまで書いてあり、本当に一般の人向けなのか不思議に思うこともありますが、ノルウェーでは大ヒットしたとのこと。それだけでも性教育先進国の凄さを感じます。
日本語訳監修は産婦人科医で、性の講演を学校やその他で沢山されている高橋幸子さんです。
サイト、ブログ
★ピルコン (https://pilcon.org/ )
中高生向け、保護者向けに性教育講演や、啓発活動を行っている団体のサイト。性教育界隈ではトップレベルの団体です。こちらが運営しているサイトではからだのこと、健康のことについてまとまって学べるページがありますが、特に妊娠・中絶、避妊、アフターピルの項目は大充実です。困ったときにこちらのページにアクセスすることで、どこに相談すればよいか等がすぐ分かります。
★パレットーク(https://note.com/palette_lgbtq)
小学校高学年、中高生、保護者向け。ジェンダーのこと、LGBTQのことを中心にマンガや文章で分かりやすく解説しています。パレットークのマンガを読むだけで現在の社会における性の問題点はかなり見えてきます。マンガのイラストはおしゃれで、ストーリーはシンプルで心にグッとくるものも。私たちの性教育の授業もマンガ化して下さいました。インスタグラム、ツイッター、noteで発信されています。
★セイシル (https://seicil.com/)
社会問題を分かりやすく伝えるコンテンツ作成の「ちゃりつも」と、セルフプレジャーで有名な「TENGA」によるサイト。「男性は胸が大きい女の人がすきなの?」とか、リアルな質問に複数の専門家が答える形式です。下の命育と好みが分かれるところだと思いますので、まずは覗いてみてください。
★命育 (https://meiiku.com/)
デジダルクリエイターの方々が中心となり、専門家と協力して作られたサイト。こちらも性のことについてまとまっています。
動画
★性的同意を紅茶に例えた動画 (https://www.youtube.com/watch?v=-cxMZM3bWy0)
中高生、保護者向け。ネット上で話題になっていた動画です。性交渉に限らず、他人に何かをする前には同意を取る必要があります。でも「雰囲気が壊れる」とか、「男はリードしないと」などの思い込みで同意をきちんと取らない人もおり、それが性暴力の温床にもなっています。
この性的同意の取り方を分かりやすく、面白く伝えているのがこちらの動画。ただ性的同意とは何なのかを全く分からない状態で観てもあまり理解できないかもしれません。
・AMAZE (https://pilcon.org/activities/amaze)
小学生~中高生向け。もともとはアメリカのNGOが作成したものをピルコンが翻訳したもの。思春期のこと、性暴力のこと、性感染症のことなどをアニメーションで教えてくれます。アニメのテンポがよく、サクサクすすんでわかりやすいです。
以上です。コロナや猛暑で家にいる時間が長くなっている今、是非、性の本やサイト、動画などにふれてみてください。