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【実況中継】オカンこの世を卒業するらしい #4

よく寝たなぁ。開き直ったからなぁ。
1月4日の朝は、自分が自分にちゃんと戻っていた。

ぼんやりしていると、iPhoneが鳴った。
心臓がギュッとする。
オカンのいつもの担当医からだった。

「血圧が下がっています。今80です。個人差もありますが、60になったらあと数時間と思います。そのときには連絡しますね。最後に間に合わない可能性もありますが、ご了承いただけますか」
「はい」
「夜中にお電話してもいいですか」
「もちろんです」

本当にそろそろなんだろうな。
でも昨日の電話と同じな気もした。
先のことはわからない。

やっぱり今日も、自分を淡々と生きて、今を楽しもう。
さて、今日はなにをしよう。
そうだモーニングを食べに行こう。

実家には、電動自転車がある。東京よりずっと坂道が多い土地なので、電動自転車率が高い。スイスイと漕いで、並木道を登ったり、下りカーブを楽しんだりした。
お天気は最高によかった。
木漏れ日がキラキラしている。緑の葉っぱと、青い空。白い雲。
なんて気持ちいいんだろう。

郊外のカフェって感じの店に到着。
サラダセットというモーニングをいただく。
窓からは、木々と、郊外特有の整備された街並みが見えた。


さて、次はwifiのあるカフェに移動です。(カフェのはしごですな)
めずらしく、コンセントのあるカウンター席が空いていた。紅茶をオーダーし、Macを開いた、そのときに、iPhoneがなった。

「血圧が50です。何分後にこれますか」

おおーっと。突然ですな。
えーっと。Mac開いたばかりやけど、閉じましょね。
きっと隣の席の人、「この人来たばっかりやのにすぐ帰るんやな」って思ってはるやろな。
紅茶は一口だけでも飲んで行こう。
自転車はここに置きっぱで、24時間置いても150円やからよし。
タクシーは駅まで歩かんとないなー。
そんでもって弟に電話っと。

それだけのことを一瞬で考えた。

「タクシーで30分くらいで着くと思います」
「わかりました。待っています」

よし。

と思ったら弟からLINEが来てるではないか。

「オカンと2人だけにしてほしい」

へ?なんで?

電話すると
「説明のできない感情が湧いてんねん。お姉ちゃんと一緒にではなくて、俺1人でオカンと話がしたいんや」

わからんけどわかった。

「じゃ、病院の外で待ってるから、お先にどうぞ」
「ありがとう。2人だけの話が終わったら、呼ぶから」

弟らしいなーと思った。
昔からあの子(50代のおっさんやけど)は、ギリギリになってから大切なことを思い出す癖があるんよ。

タクシーの中で、いろんなことを思い出していた。

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