どっちに転んでも辛い
『望み』を読んだ。子供だけど子供すぎない年齢の少年が自分の周囲で起こったトラブルを自分の力でどうにかしようと考えた事で起こる事件の話。もうとっくに大人になった自分は読んでいてまずは親に相談して対処法を考えた方がいいと思ってしまうのだけど、子供の立場からしたら迷惑かけたくないとか反抗期もあったりして言いたくないとか色々思いや考えがあるんだろうな。ただこの小説では親の語る話をどうでもいいような感じで聞きながらもちゃんと自分で考えて受け止めているのが分かるからきっと素直に話せていればこういう結末にはならなかったように思えて辛かった。自衛の為に用意していたナイフだって持って行っても同じ結末になったかもしれないし、たらればを考えたらきりがないんだろうな。そして犯罪者になっていてもいいから生きていて欲しいと思う気持ちも人を傷つけるような子供じゃないんだと思う気持ち、どちらも間違っていないしどっちの考えを持っていても攻められないからそこも辛かった。追い打ちをかけるようなマスコミの描写も読んでいて嫌な気持ちになるくらいリアルに感じられた。せめて家族がこの後落ち着いたら少しでも穏やかに生活できる日が来ると良いなと思った。先が気になって一気に読める小説だった。
#読書の秋2020 #望み