理想のキッチン探し③新百合ヶ丘
今週は、新百合ヶ丘に行ってきました。川崎市のこの町は確か、ママたちの憧れの町って昔聞いたな。一度取材で行ったことがあるけど、きれいな駅前だったな。そして沿線には仲よしのお友達もいるし、下北とか代々木上原とか便利になるのはありがたいな、と思って出かけました。
不動産屋はひとつ前の百合ヶ丘駅前。こっちは昭和っぽい町で、でも、焼けに坂が多い。不動産屋のお兄さんも、坂がきついんで車で行きましょうとおっしゃる。インターネットで見て行ったキッチンの間取りはこんな風。
広さが必要な割に利便性を求め、しかし払える家賃は多くないというので、だいたい築20~30年物が多くなる。あの頃流行ったカウンターキッチンになることが多いんですが、これは微妙。写真を見ると、コンロを置く形なので3口ガスコンロは断念しないといけない。でも、壁面が多いので本棚はたくさん置けそう。
問題はキッチンの作業スペースがとても狭いこと。収納がどうやら住んでいた人が後から入れたらしく、いろいろカスタマイズされている。
右手の壁の奥が冷蔵庫置き場なんですが、どう考えても今ある3ドアの冷蔵庫を入れたら入口が飛び出して、コンロ前のスペースがとても狭くなる。それから後付け収納の右手の黒い穴の部分が電子レンジ置き場で、いちいち低くしゃがんで作業しなければならない。不便。シンクは広いけどねー。
キッチンは基本的に狭い方が作業しやすいと思うんです。待ったをかけられない作業が多いため、すぐに必要な道具や調味料などを取り出せることが必要。しかし、あまりにも狭いと作業が難しくなる。そしてこの電子レンジだけ置ける収納は、トースターと炊飯器の置き場に困る。台の上かもしれないけど、ごちゃごちゃしてしまう。中途半端にカスタマイズされているというか、前の住人のためにカスタマイズされていることによって、私にとっては使い勝手が悪くなっている。やっぱり無理。
もう一つ無理な理由は、この物件、4階建てなんですが、階段しかなくてここは3階なんですよ。それはちょっと疲れた時にしんどいなと思いました。周辺が坂が多過ぎることも気になりました。今の町も坂が多いのですが、住み慣れたせいか、きつくない道もたくさんあるような気がする……いや、物件探しを始めて町の条件をいろいろ挙げていくと、今の23区内の町はやっぱり住みやすいんですよね。いいところがたくさん見えてくる。おしゃれタウンで自転車圏内のところもあるし、庭のある家も多くて散歩のときは花や緑や実を楽しめたりする。スーパーも生鮮食品に強いところ、肉が安いところ、おしゃれ食材が多いところと使い分けができて、こだわりの豆腐屋と八百屋がある。パン屋がイマイチなのがパン好きとしては残念ですが、自転車でがんばっていけばおいしいパン屋さんのある町にも行ける。それに結構出歩くので、出先でおいしいパンをゲットすることもあるので、何とかなってはいます。ああ、今の町、好きだなあ!!
住宅展示場の理想のキッチン
新百合ヶ丘に帰ってきて駅前散策をしようとしたら、目の前に住宅展示場が。一度、ピンのキッチンも見たほうがいいかも、と思いきって、国産材を使うという古河林業の展示場に入ってみました。
商談をしている、三世代同居らしい裕福そうな親子の横で所長さんが説明してくださるんです。最初のうち、私はキッチンに幻惑されて耳に入ってきませんでした。作業スペースは広いし、食洗機が内蔵されていて、もちろん3口コンロで、シンク前に縦長の窓が二つもついていて、プライバシーを守りつつ眺望と解放感を担保している。横に冷蔵庫スペースもある。そう、今日みた物件は冷蔵庫を開けると目の前がコンロ、というのは温度差で問題があるのではないか、と思ったけど、それもこの展示場にはない。使いやすく開けやすい引き出し。木材を使った温かみのある扉……ああ!!
参ったなと思いました。はい、私の貧困な想像力で生み出す理想のキッチンなんて、お金のある人たちの間ではとっくにデフォルトだし、問題なんかないんですよと言われたみたいな感じです。物件探しをある程度したら、集めた台所の特集雑誌や書籍を読んで想像力を高めよう!と思っていたのに、もう全然現実のほうが先に行っている感じなのです。
郊外の勉強はできました
その後駅前に戻ると、イオンにイトーヨーカドーなど大型スーパーが三つも四つもある。大手のスーパーは見てもたぶん一通りそろっていることが想像できるのであえて中身はみませんでした。
ABCマート、ディーン&デルーカ、サンクゼールに久世福商店、ユニクロ、無印。おしゃれな洋服屋さんにチェーンのいろいろなおいしいお店。だいたいあるものはある。しかし、港北ニュータウンには3つの書店チェーンがあったのに、ここは有隣堂だけ。ブックオフもあったので、中を見たけれど、大半がマンガ!大人向けの棚は単行本が二列、新書・文庫が二列だけ。見るべき資料はいっさいない。大学がある町だからもうちょっと文化的な香りがあるかと思ったけれど……。
だんだん気づいてきました。郊外の中核都市に行けば、チェーンならたいていのものが揃う。生活には困ることがない。治安もよさそうで子育ても女性が住むのも安心と言える。でも、帰りに武蔵小杉で紀伊国屋書店にも行ったけど、サラリーマン・子ども・主婦しかこの町にはいないの、と思わせるようなラインナップしかおいていなくて、私の役に立つ本はない。
そうやって町巡りをしていると、たいていの文化と生活は両立しない、という首都圏のいびつさに気づかされる。子育て中の人だって文化が必要な人もいるだろうし、シングルでも生活必需品がそろってほしい人はいるはずなのに、それぞれが両立しない。中央線に行けばそろうのか?
それから私が求めている文化って何? 生活史の役に立つような衣食住の歴史や世界との比較、ジェンダー。それは仕事の資料なんですよね。でもそれは教養の部分でもある、と私は信じたい。あと、個人の店。古い町には古くて家賃が安い家をリノベしてカフェだの雑貨店だの開く人がいる。面白い人がいる。そういう一通りのものがそろいそうな町は、だいたい家賃がとても高い。下北、三茶、中央線もそういうところ。高い!
問題はキッチンではなく、住む町のことなのか?
理想と現実のすき間に
と思っていたら今日、夫が「近所にむちゃいい物件が出た!」と言うのです。1985年に建てられた1戸建てで134㎡もある。三階建てで、地階は半地下なので仕事部屋に、小屋裏もあって、地階は全部図書室に出来る。和室もある、L字型キッチンは広くて趣味も悪くない。家賃はちょっと高めだけど、これだけ広ければもう引っ越さなくていい。人も泊められる。
すぐに行きましたよ。すると、すると! うちの近所も坂があると言いましたが、坂ノ途中の家です。そして、物件の前にはコンクリの歩きにくい細い階段が。そこを降りないと玄関にたどり着けないのです。自転車を置けない。しかも、奥まった空間に無理やり建った家は、周囲を全部家に囲まれていて敷地ギリギリ。壁も頑丈そうだし、家の中はすばらしい。しかし、この立地は!! 断念しました。夢はまたしても破れたのです。
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