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タヌキのお弁当

タヌキ先生は、ふと思いました。

私の生徒たちのお弁当は、とても不公平だ。ある子はお肉と野菜たっぷりの栄養満点なお弁当。ある子はとてもカラフルな手の込んだお弁当。ある子はおむすびだけ。ある子はお弁当をいつも持ってこなくて水だけ飲んでいる。これはとても悪いことだ。私にとっては、みな同じ大切な生徒。それなのにお昼になるたびに、ある子は満ち足りて、そうでない子は悲しい思いをする。教師として、私はこれをどうにかしなければいけない。

そこでタヌキ先生はお昼休みに言いました。
「あー、食べるのをちょっと待ってください。そこの君、箸を置いて。よろしい。今から、先生はあなたたちのお弁当をすべて没収します」
教室はにわかにざわつきました。お弁当は、彼らの親が子供のために作ったもの。先生にそれを取り上げられるとは、思いもよらなかったことです。
「みなさん。みなさんが変に思うのも仕方ないでしょう。しかし、先生はみなさんのお弁当に差があるのを変だと思うのです。みんな同じ命をもって生まれてきました。どんな命も先生には大切な命です。お弁当の差をなくすことで、先生はみなさんを本当に同じように大切にできると思うのです。みなさんもお友達を、今よりももっと大切にできるようになるでしょう」

生徒たちは、なんだか変な気持ちになりましたが、先生に従い、順にお弁当を先生の机の上に積み上げていきました。すると、タヌキ先生は廊下から大きな鍋をひきずってきて、みんなのお弁当を次々とそこへ放り込み、大きなしゃもじでぐるぐるとかき混ぜました。生徒たちの何匹かは悲しくて泣きました。お弁当を持ってこれずに水だけ飲んでいる子でさえ、楽しい気分にはならないのでした。タヌキ先生はかき混ぜ終えると、満足して言いました。
「これを、これからみなさんに同じだけ分けます。紙皿を配りますから、一列に並んでください。そして、楽しくお弁当をいただきましょう!」

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