【乙庭植物図鑑】20230215 チャメロプス フミリス (Chamaerops humilis var. cerifera)
これまで、著書や歴代ブログやwebメディアなど、さまざまな媒体に植物の解説を書いてきましたが、結構情報が散逸している状態になってきたので、マイペースではありますが、note.に私の植物や植栽に関する知識をまとめていきたいと思います(ライフワークにできたらいいな😊)。
今日は、先日メンテに行ったクリニックで植栽で、私が最初に植えてからかれこれ7年くらい経過し、迫力のある姿になってきた耐寒性のヤシ チャメロプス フミリス (Chamaerops humilis var. cerifera)を紹介します。
チャメロプス フミリス は、チャボトウジュロという和名でも知られる、
モロッコのアトラス山脈高地をはじめとする北アフリカ〜南欧地域の地中海沿岸部原産の比較的矮性で耐寒性のあるヤシの仲間です。
原生地では岩の多い乾燥した場所や断崖などにも生えている姿が見られます。
チャメロプス フミリス は、ヤシ仲間の中でも最も耐寒性の強いものの一つです。またヤシらしい扇状葉とコンパクトにまとまる姿が美しく、世界の温帯気候の広く造園に用いられている種です。
日本でも2010年以降、アガベなどの乾燥地系植物と組み合わせて、ワイルドでモダンな雰囲気のドライガーデンデザインにも多く用いられるようになってきました。
耐寒性・耐高温多湿性ともに優れ、夏は40度越えの酷暑、冬はマイナス5度程度になる乙庭のある群馬県前橋市でも弱ったりすることなく夏冬問題なく越せる頼もしい素材です。
チャメロプス フミリス種はチャボトウジュロの和名のごとく、日本にも自生しているヤシであるトウジュロ(Trachycarpus wagnerianus)やワジュロ(Trachycarpus fortunei)に似た扇状の分裂葉がオーナメンタルで美しく、またシュロのように木立ちしてどんどん大きくなることもなく、コンパクトに多頭群生化していく姿の美しさから、トロピカルムードのある耐寒性の新感覚庭園素材として乙庭でも注目しています。
緑葉の基本種フミリスは、チャメロプスというよりはむしろ「チャボトウジュロ」の名がしっくりくる、棕櫚の木が連想させる現代の感覚ではややダサめと判断されてしまいがちな昭和園芸っぽいノスタルジーな雰囲気を漂わせつつ、シュロのように高く木立ちせずコンパクトにまとまる面白素材です。
このちょいダサテイストをとても現代的な雰囲気の植栽に織り交ぜると、昭和期の植栽のシュロのイメージとのモダンなガーデンデザインとのギャップが痛快で意外な驚きを含んだ植栽になります。いわゆる乙庭好みってやつですね。
モロッコの高地原産で厳しい環境に自生する植物のため、暑さ寒さ・乾燥によく耐え、日本の関東平野部以南の気候環境下でもとても育てやすいヤシです。
乾燥には強いですが、あたたかい時期には比較的水を好みます。
海外の文献などでは最終的な高さ4.5mとのことですが、もともと成長がとても緩慢ということもあり、日本では年数をかけても1.5〜2m程度の高さが現実的サイズです。
大型の宿根草のようにお手頃なサイズ感で楽しめますね。
ヤシ科の葉はアガベやユッカなどとも異なる形状で非常にオーナメンタルな存在感もあり庭での絶好のフォーカルポイントになります。
チャメロプス フミリス種では、いくつかの変種が確認されていますが、その中でもパウダーブルーの葉色となるの変種 セリフェラ (Chamaerops humilis var. cerifera) が日本では特に人気が高いです。
が、基本種のフミリスも、生産者がたくさんの種子を輸入してまくと、葉色に個体差があり、ごくまれに変種 セリフェラと遜色のない美しいパウダーブルーの個体が出現することがあります。
ごくまれに現れる基本種 フミリスのパウダーブルー葉個体は、昭和っぽいシュロの文脈ではなく、現代的なモダンドライガーデンのデザイン素材の雰囲気が強く漂いとても通っぽくお洒落な素材といえるでしょう。
性質は全般的に丈夫でマイナス10℃程度の耐寒性があると言われていますが、寒風や強霜に晒されると葉傷みすることがあります。
もともと生育が緩慢で復旧に時間がかかりますので、なるべく寒冷期に葉を傷めないよう、北風や強霜に晒されない、南向きの暖かい場所に植えるとよいでしょう。
■チャメロプス フミリス
■ 学名 : Chamaerops humilis var. cerifera
■ ヤシ科 耐寒性常緑樹
■ 花期 :
■ 樹高 : 4.5m(原生地での最大樹高、日本の栽培下では最大2m程度)
■ 耐寒性 : 強い
■ 耐暑性 : 強い
■ 原産地 : 北アフリカ、南ヨーロッパ等の地中海沿岸地域
最後に私 太田敦雄の著作や掲載誌をいくつかご紹介します。
2024年1月16日発売(本記事執筆時点では発売前)のガーデニング雑誌「Garden&Garden vol.88 (Spring 2024)」。
巻頭特集「風景ガーデニング」にて、私 太田敦雄 / ACID NATURE 乙庭 を8ページにわたり掲載いただいています。私の設計案件の中でもこれまで一般誌で解説紹介していない2つの住宅を実例に写真豊富に、自分が思い描く植栽風景を形にしていく思考のコツなどについて解説しています。私のページ以外も人気ガーデナー、ガーデンデザイナーさんの多様な植栽事例をお楽しみいただけます。
私と、おぎはら植物園の荻原範雄さん、フローラ黒田園芸の黒田健太郎さん・和義さんご兄弟との共著作「グリーントータルプランツブック」。前半の1/3を私が執筆担当しており、実例も交えた植栽論と植物の解説をしています。
私の最初の著作本「刺激的・ガーデンプランツブック」は、出版社のご都合で現在絶版となっていますが、この本に書いた内容も含めて、今後の出版物に盛り込んで、なんらかの形で情報としてこれからも手に入るようにはしていきたいと思っています。
noteの「乙庭植物図鑑」では、これまでの著書では解説していない植物も積極的に取り上げていく予定です。
自分だけの特別なお庭造りの参考になれば幸いです😊✨