第45回 あなたの意思決定を変える!バイアス克服トレーニングと応用方法
この記事は、あなたのために書きました
意思決定の精度を高め、ビジネスやプライベートで成果を生み出したい人
自己改善に取り組む意欲があり、思考の癖やバイアスに気づきたいビジネスパーソン
成長のために具体的なトレーニングを通して柔軟な判断力を身に付けたい方
序章:ある朝、心の「もう一人の自分」と目が合った
朝、出勤のためにいつもの道を歩いていると、「今日も同じルートかぁ…」とぼんやり感じたことはありませんか?あなたの足が向かうのは「最速でもっとも効率がいい」道かもしれませんが、無意識に決めたそのルートが本当にベストなのか、考えたことはあるでしょうか。
目には見えないけれど、私たちの脳の中には小さな「無意識の司令官」が住んでいます。彼(あるいは彼女?)は、私たちの行動や決断に日々指令を出し、少しでも安心でラクな道を選ばせようとしてくれるのです。でも、この無意識の司令官が必ずしも私たちの「最良の判断」を助けているとは限りません。彼はあくまで「楽に」「効率的に」脳のエネルギーを節約するのが得意なだけ。ちょっと不思議に思えるかもしれませんが、実際、私たちの行動の90%以上が無意識のうちに行われているというデータもあるのです(出典:American Psychological Association, 2020)。
たとえば、仕事で会議に出るとき、つい「上司の意見には逆らわないほうが無難かな」と考えてしまうことはありませんか?無意識の司令官が「ここはあえて流されておくのが得策だ」と囁くのです。あなたがその場の空気に流されやすいのは、この小さな司令官が原因かもしれません。しかし、これが意思決定や人生の大事な場面でも同じだとしたら、少し考えたくなりませんか?
この記事では、この「無意識の司令官」に気づき、操られずに「自分で選択する力」を取り戻すための方法を紹介していきます。まずは、メタ認知を通じて、自分の思考をもう一人の自分として見つめるスキル。次に、脳の神経可塑性を利用して柔軟な思考を育むトレーニングなど、バイアスに対抗する具体的なテクニックをお伝えします。
「いつも通りの選択」で済ませないための第一歩です。私たちが気づかないうちに「他の選択肢」や「新しい道」が見えなくなっているかもしれないことに、まずは気づくことから始めてみましょう。
第1章:まずは知るところから始めよう — バイアスの正体とその種類
私たちの脳は、見えない「思考のクセ」や「バイアス」の影響で意識せずに多くの判断を下しています。たとえば、どこかで耳にした「朝のコーヒーが頭をすっきりさせる」という情報を信じ込んで毎朝コーヒーを飲むとしたら、それもある種のバイアスかもしれません。科学的根拠がないわけではないにしろ、もしかしたら緑茶やただの水でも同様の効果が得られるかもしれないのです。こうした小さな習慣にも無意識のバイアスが潜んでいるのです。
1-1 思考を偏らせる「バイアス」の正体
バイアスとは何か?その見えざる力
バイアスとは、私たちが瞬時に判断を下すための脳の「ショートカット」機能ともいえます。例えば、ある選択肢に対して「いい感じ」と思った瞬間、それは脳が過去の経験や知識を元に効率よく結論を出すために働いた結果です。しかし、この「ショートカット」が必ずしも最良の判断につながるわけではありません。むしろ、私たちが無意識に行う選択の多くが、このショートカットによってバイアスがかかり、思考の柔軟性や判断の正確さを損なう原因になることがあります。
確証バイアス — 自分の思い込みを強める魔法の眼鏡
バイアスの代表例として「確証バイアス」があります。確証バイアスは、私たちが自分の信念や意見に合った情報ばかりを集め、反対の情報を無視する傾向を指します。たとえば、「週末のプロジェクトは完璧に進むはずだ」と信じていると、少しの遅れや問題を軽視し、「まあ、大丈夫だろう」と楽観視してしまうことがよくあります。このバイアスがあることで、失敗やトラブルの兆しを見逃しがちになるのです。
アンカリング効果 — 初めての情報に引きずられる思考の重み
次に「アンカリング効果」があります。これは最初に得た情報に強く引きずられる現象で、値段交渉や購買決定の場面でよく見られるバイアスです。例えば、何かの商品の最初の提示価格が「高すぎる!」と感じても、後から他の選択肢が提示されると、最初の価格が基準(アンカー)として頭に残り、「それより少し安いなら…」と感じてしまうことがあります。アンカリング効果は、初期情報が正しいかどうかに関係なく、私たちの判断を一方向に引き寄せる力を持っているのです。
1-2 バイアスを実感するための「3日間の思考日記」
実践:3日間の「バイアスチェック日記」
ここで、実際にバイアスを実感するための簡単な方法として「3日間の思考日記」を試してみましょう。たとえば、仕事や日常の中で選んだことに対して、「なぜそうしたのか?」を書き出し、理由を振り返ってみるのです。意識せずに選んでしまったルートや、会議で無意識に同意した意見について、「どうしてそう思ったのか」を冷静に考えてみてください。
この方法を試すことで、普段の判断がどれほどバイアスに左右されているかを、じっくりと自覚することができます。研究によれば、日記を書くことで自己認識が深まるという効果があることがわかっています(出典: American Psychological Association, 2019)。
日記の振り返りと気づき
3日間の日記が終わったら、内容を振り返ってみましょう。バイアスの影響が強く出たケースとそうでないケースを比べてみると、「自分はどんな状況で偏りやすいか」「どういう時に冷静さを欠きやすいか」が見えてくるはずです。例えば、上司や年上の意見に流されやすいのか、自分の決定に確信が持てない場面で他人に影響されやすいのか、パターンを見つけ出すことで、これからの判断が一段と鋭くなります。
この章では、私たちの思考を縛るバイアスの代表的な例と、それが日常にどのように影響するかを見てきました。次章では、バイアスの存在を意識しながらも、それに囚われない「客観的な視点」を持つための具体的な方法について探っていきます。
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