今年も、たんぽぽ綿毛のドライフラワーをつくる。
ぽかぽかと陽のひかりが足元を照らすなか、黄色く鮮やかに彩るたんぽぽのとなりで、一足先にゆらゆらと春風をまつ。
繊細で、儚いたんぽぽの綿毛をみるたび、どうしてずっとこのままでいてくれないのだろう、と思っていた。白くてまるっこいふわふわのすがたは、ちいさな生きもののようで、愛らしい。きりとした白色でない、ふっくらとしたやはらかな白色。
持って帰りたくて大事に抱えていても、気がついたら、頭のつぶれたちっちゃなてるてる坊主のようなすがたになってしまう。
1年前、何が何でも「まっしろしろすけ」を手中におさめると心に決めたわたしは、まるこいまま、たんぽぽの綿毛を保存する術を身につけた。
この子が1年前から飼っている、まっしろしろすけ。
上からみるとまんまるで、横からみると下がすこし、ぺちゃっとつぶれているのがまた、愛らしい。
あれから1年。この子は、梅雨の湿気にも、夏の暑さにも負けず、ぽわぽわのまま、毎晩わたしの帰りを待ってくれている。
よっぽどぞんざいに扱わない限り、彼は(彼女は?)色あせることもなく、このままのすがたでいてくれるようだった。いつまでも、わが家でゆったりくつろいでいて。
さて、今年も春がやってきた。
まっしろしろすけ、収穫の時期です。
※決して人さまの敷地内から、連れて帰ってきてはいけませんよ。思いやり、大事。否、つかまる。
ドライたんぽぽのつくりかた
・用意したもの
・はさみ
・ニッパー
・針金
・たこ糸
・かわいい入れもの(プリンの空き瓶や、ガラスのお皿など)
正直、どれもなくても、つくれることにはつくれるので、なくても問題なし。自然を愛する気持ちをもって。
①たんぽぽ選び
きもちよくお日さまがでているときが収穫のとき。
くもりや雨、晴れた日でも夕方以降は、たんぽぽもしゅんとしちゃうので。
そっと息を吹きかけただけで飛んでいってしまうたんぽぽの綿毛を、そのままのかたちで保存するには、ふわふわになる前に確保することが大事。
というわけで、咲きほころびた色濃いたんぽぽを横目に、ポンチョに身を隠す照れ屋な子をさがす。
こういうの。
ポンチョたんぽぽをみつけたら、ある程度茎の長さを保ってぷちっと。長ければ、後々ちょんぎってしまえばいいだけなので。
ちなみに、写真右下の黄色いとんがり帽子をかぶった子でも大丈夫。
とんがり帽子を、すぽっと。
参考程度に、
・茎が太いたんぽぽはおおきくてふわふわになりやすく、長さがあっても、茎が細いと意外とちいさい
・綿毛になったときの目安のおおきさは、ポンチョ姿から縦に1.5倍くらい、横に2倍くらいになる気がする。想像より意外とおおきくなるので、お気をつけて
・開きがはじまっているものはばらけやすいので、きゅっと身を縮こませているたんぽぽか、ほんとうはとんがり帽子姿のたんぽぽが好ましい
でかい子はこのように茎が太い
わが家にやってくるまっしろしろすけの赤ちゃんを抱えて、いそいそと帰宅。
②綿毛にする
そのまま、ぽんとお皿の上に置いておくだけでも立派に開くのであとはお好み。
愛らしい子がたくさんいて予想以上に連れて帰ってきてしまったので、今回は、花束とガーランドにする。
まずは花束。
真下でちょきり。はさみがない場合は手で、もぎり。
上からまっすぐにすーっと、針金を通す。
こんな感じ。
束にしたときにバランスがよくなるよう、ちょうどいい長さで針金をちょきり。
これを気の済むまでつくる。
お次はガーランド。
根本より少し長めに茎を残して、くるくる糸を巻き付ける。
巻き付けた糸を、1本の糸に、きゅっと1回だけ固結びをする。そうすることで、位置の移動が可能。
長さもランダムに、お好みで。
あとは、日の当たらない室内でそっと待つだけ。できれば乾燥した場所が好ましい。
ぜったいに触らないことと、それぞれ成長スピードがまったく異なるので、気長に待つことが大事。
③完成
3日ほどで、ほとんどがまんまるの綿毛に。
ほわほわと、踊りだしそうなほど全身でひろがる姿は、どこか凛としていて輝きを放っているようにすらみえる。
もう少し開きそうな子もいるので、そっとしておこう。
ちょっぴり摘んで、ふうわりと飛んでいきそうに飾るのもかわいい
時間がたてばたつほど、強めの風に吹かれても動じないくらいつよい子に育つので、立派に首が座るまで、赤子のように、やさしく触れてあげてください。
―――
春の陽気にうつらうつらしていると、気がついたら街中が色で溢れている。
春に咲く花はみな、あっという間に朽ちてしまう。
足が地面から浮いたように、ぼんやりいつまでも桜を眺めていて、さまざまな木の芽が芽吹きはじめたころに、ハッとする。
また春を逃してしまった。
胸いっぱいその空気を吸い込み、鮮やかな色をみて、全身で春を感じていたのに、春がおわると、春を忘れてしまう。
ずっとそばにいたはずなのに、その空気も、その感覚も、ふいとどこかへ消えてしまうのだ。
しかし、たんぽぽの綿毛なら。
息をのむほどうつくしく、繊細で儚い綿毛を胸に、1年中春を抱きしめていられる。
あたらしい土地へはばたこうとしているいのちをここに留めてしまうのはちょっとばかり心が痛むけど、全身全霊愛を注いで育てていくから、安心して私に守られてくれ。
・おまけ -ノゲシ編-
たんぽぽと同じ要領で、ドライノゲシをつくることもできる。
が、たんぽぽより遥かにむつかしかった。
たんぽぽのようにただほうっておいているだけでは、2割ほどしか開いてくれず、きれいに開いても、少しつついただけでぽろぽろと崩れていってしまう。
ノゲシとは、まだまだ距離を縮める必要がありそうです。
追記 2021.04.17
ノゲシもしっかりひらいてくれたので瓶に詰めました
一一一
今年も間に合ってよかった。お出迎えしてくれる子たちが増えたので、毎晩にまにましながら帰宅しています。
実はたんぽぽ、春から秋にかけて、咲いているところは咲いているので、見かけたら挑戦してみてください。
以上、ひそかな春のたのしみでした。
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