事業計画策定のポイント②
はじめに
株式会社アクリア、コンサルタントの横山です。
今回は、
(3) 事業計画策定の流れ
(4)事業計画のチェックポイント
を取り上げていきます。
※なお、本コラムでは、ピッチ資料に含まれるような会社概要やビジネスモデルといった定性的な情報よりも、定量的な数値情報としての「事業計画」にスポットを当てて取り上げていきます。
(3)事業計画策定の流れ
~川上から川下まで、一貫性のあるストーリー~
事業計画を策定するにあたって、まずはどこから手を付けたらいいでしょうか。
最初から数値の算定を行いたくなるところですが、それでは、なかなか上手くいかないことが多いかと思います。
それは、計画数値は様々な前提を踏まえたものである必要がありますが、こうした前提が十分に検討されていない段階で数値を算定してしまうと、一見、数値間の整合性は取れていたとしても、例えば、下記のような観点から問題を抱えたものになってしまうことがあるためです。
そのため、事業計画の策定にあたっては、下記のようなステップを踏んで、
計画数値の前提となる事項から計画数値まで、順を追って検討する必要があります。
いわば、川上から川下まで一貫性のある事業計画を策定することが大切です。
①会社の目指す世界観の確認
会社の目指す世界観とは、例えば、会社の方針(MVV:ミッション、ビジョン、バリュー)商品やサービスによって解決したい課題(ペイン)・解決策(ソリューション)、それらを達成することによって社会にどのような変化をもたらすことができるのか、あるいは会社のあるべき将来像といったものを指します。
まず、会社の目指す世界観を確認することで、経営の軸や方向性を明確にすることができ、それらと矛盾のない事業計画の策定が可能となります。
②経営環境分析
会社の目指す世界観を確認した後は、経営環境の分析を行います。
経営環境とは、会社の経営を取り巻く世の中の情勢のことを指します。
経営環境の分析を行うことで、社会や業界の動向、自社の強み・弱みといったものを把握することができます。
また、それらの分析結果を用いて、経営戦略の立案に繋げていきます。
③経営戦略立案
経営環境分析によって理解した内容を踏まえて、経営戦略の立案を行います。
経営戦略とは、会社の目指す世界観を達成するために、会社の置かれた経営環境において、取り得る方策のことを指します。具体的には、商品・サービスの価格設定、アプローチする市場や顧客像の想定、販売購買のチャネルの決定といったものが該当します。
経営戦略を立案した後は、その戦略によって見込まれる成果や発生するコスト等をより具体的に検討するために、数値への落とし込みを行うフェーズに移行します。
④数値への落とし込み(財務諸表の作成)
計画数値の前提となる事項の検討が済んだところで、いよいよ、数値への落とし込みとなります。
数値は①~③の前提事項を踏まえたものとしますが、算出された数値を見ながら、必要に応じて、①~③に立ち返って検討を行います。
(2) 事業計画のチェックポイント
~多角的な視点で検討する~
事業計画は、社内外に向けた重要な場面で用いられることから、その合理性が求められます。
したがって、多角的な視点から検討を行い、内容を磨き上げていくことが大切です。
最後に、より良い事業計画とするために、押さえておくべき主なポイントをお伝えさせていただきます。
<事業計画のチェックポイント>
会社の目指す世界観、経営環境、経営戦略を踏まえたものになっているか。(*1)
年度ごとのマイルストーン(イベント)はイメージできているか。(*2)
短期(特に直近1年間)は解像度の高い事業計画を描けているか。(*3)
売上高の因数分解(単価×数量)、KPI設定はできているか。(*4)
売上高を達成するために必要なコスト(原価、経費、投資、開発、etc…)は織り込まれているか。(*5)
資金繰りに問題はないか。また、想定される資金調達方法の実行可能性に問題はないか。(*6)
ボトムアップ(直近実績からの積上の観点)とトップダウン(市場規模と取り得るシェア等の観点)の両方の観点から問題はないか。(*7)
業績水準やガバナンス体制等、求められる要件がある場合にそれらを考慮しているか。(*8)
ベンチマーク企業の業績と比較して、自社の計画が何故この数値になるのかを説明できるか。(*9)
自社でコミットしていく計画として、納得でき、他者に説明することができるか。(*10)
現場責任者との共有は適切になされているか。(*11)
実績を踏まえて、定期的に見直しを行っているか。(*12)
(*1)Ⅲ.で記載したように、①世界観の確認、②経営環境分析、③経営戦略立案を踏まえたものになっている必要がある。
(*2)事業の成長に関わる事象を年度ごとに大枠でイメージし、ストーリーを立てる。
(*3)短期(特に直近1年間)は、足元の状況を踏まえて、精度の高いものが要求される。
(*4)単に前年比の何倍といった想定をするのではなく、単価と数量のそれぞれに分解したもので考える。また、特に重要な指標をKPIとして設定することで、予実比較によって経営分析に役立てることができる。
(*5)必要なコストに漏れがないか注意する。また、想定外のコストがかかることを考慮し、計画上は保守的に多めの金額を積んでおくとよい。
(*6)資金ショートしてしまうと、会社が存続できない。また、資本調達における資本政策上の観点や借入時における財政状態や経営成績の観点など、実行可能性も検討する。
(*7)直近実績からの成長率に問題はなくとも、市場規模に対するシェアの観点からは合理的でないといったことがある。両方の観点から現実的な水準かを検討する。
(*8)例えば、IPOを想定している場合、上場審査における形式要件として、利益の額や事業継続年数等の基準が設けられている。そういった要件を考慮した事業計画となっているかを確認する。
(*9)自社とベンチマーク企業との間の類似点・相違点を踏まえた計画となっているか検討する。
(*10)自社にとって、手触り感、腹落ち感のある計画になっていて、他者に説明できるかを確認する。 また、外部専門家等に依頼した場合、丸投げにならないよう留意する。
(*11)トップのみならず、現場とコンセンサスの取れた計画の方が、計画の達成意欲が湧き、実行可能性が高まる。
(*12)計画は一度立てて終わりではなく、実績と比較して、定期的にメンテナンスを行う。
まとめ
合理性のある事業計画を策定するためには、
といったステップを踏み、川上から川下までの一貫性に留意する必要があります。
また、チェックポイントとして記載したような多角的な視点で検討を行うことが大切です。
なお、当社におきましては、財務に強いコンサルタントを有しており、多くの事業計画策定の実績があります。
事業計画の策定にお悩みの際は、ぜひご相談ください。
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