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即日起案対策-司法修習で読むべき本

みなさん、明けましておめでとうございます☀️

本稿では、私が直近の司法修習を修了してみて、即日起案でA評価を取るために必要十分であると考える本を列挙します。

※私自身裁判官から任官のリクルートを受けましたが、即日起案との関係では、下記書籍を読み、修習中に受けた起案の問題を復習する以外に特別な勉強はしていません。
※即日起案はさておき、各分野別実務修習では、下記書籍から得られる知識をベースに、裁判官室においてある書籍等にも手を伸ばしてみてください。個人的には、例えば刑裁修習でしたら、山崎『公判前整理手続の実務〔第2版〕』(弘文堂)がとても勉強になりました。


民事裁判:2冊

・大島本の「上巻」
・事例で考える民事事実認定(通称「ジレカン」)

※修習の要件事実では「白表紙の類型別以上の知識があることを前提」とするとロースクールの派遣J教員が仰っていました。もっとも、「類型別」自体は理由づけが薄く説明を端折っている部分が多いこと(上級者が見直しをする分には使い勝手が良い)、類型別に載っていない情報が大島本の「上巻」で丁寧に説明されていること等から、大島本「上巻」をおすすめします。
※要件事実の問題集としては、岡口本ではなく30講をおすすめします。しかし、任官したいだけなのであれば問題集をやる必要はなく、大島本「上巻」の知識や考え方をマスターすることで必要十分です(それだけでも上位10%に入ることができます。修習生全体のレベルは思った以上に低いです)。
※起案の書き方がわからない方は、民事裁判の記録である『学習用記録』の1号〜4号(5号までありましたっけ?)を見て勉強すると良いでしょう。私も最初の即日起案の前にパラパラと見ました。
※ステップアップ民事事実認定はしなくてよいです(相当暇なのであればやってもよいですが)。ジレカンを読み込み、ジレカン掲載の事案における争点について、ある程度自信を持って自分なりの結論を出すことができるようになれば、修習生の中では相当高いレベルにいると思います。

刑事裁判:1冊

・刑事事実認定ガイド

※検察起案にも役立つ。
※刑裁起案の争点としては、犯人性、共謀の成否、事件性等の様々なレパートリーがあり、書き方が難しいです。現場で合理的な書き方を考えなければならない状況も出てくるでしょう。その意味で、刑裁起案はとても奥が深い科目といえます。私は刑裁起案が一番好きでした。

検察:1冊

・検察終局処分起案の考え方

※何度も読み込みましょう。即日起案では普通に共犯の事案が出るため(私の時は問研起案まではいずれも単独犯、集合起案以降は全て共犯の事案でした)、共犯の論じ方までしっかりとマスターしておきましょう。
※良い成績を取るため、検察教官から「終局処分起案の考え方をパソコンで写経」するよう言われました。私は検察修習の即日起案前に写経しました。
※検察起案は型がカッチリ決まっており、その型通りに論述できなければ優秀な答案と評価されることは決してないということを肝に銘じるべきです(そのこと自体の良し悪しは別として)。論じる順番や各種ルールをしっかり頭に叩き込みましょう。
※財産犯を中心に、構成要件の復習もしっかりしておきましょう。

民事弁護:1冊

・民事弁護の手引き

※民事弁護起案で優秀な成績を取るためには、要件事実を正確に整理し、代理人の立場から、とにかく有利な間接事実をたくさん挙げていくことが必要です。推認力の強い間接事実からそうでない間接事実まで、とにかく指摘する事実の分量が必要です。実際の実務では、長すぎず適切な分量で、推認力の強弱を加味して必要十分な間接事実を摘示するのが良い準備書面と考えられています。その意味で、修習中の民弁起案の上記成績評価方法は硬直的かつ安直で、しょうもないもののように感じる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、良い成績を取りたいのであれば「所詮は試験である」と割り切って、代理人の立場からとにかくたくさんの間接事実を挙げていくことに徹しましょう。
※民事弁護起案の手引きでは足りない場合、市販の金子ほか『実践演習 民事弁護起案』(日本加除出版)や民事弁護実務研究会編『民事弁護の起案技術 7の鉄則と77のオキテによる紛争類型別主張書面』(創耕舎)を使って勉強してみてください。いずれもかつて民事弁護教官であった弁護士が書いた本で、即日起案のための勉強に直結するものです。
※民事弁護起案では、裁判起案とは異なり、当事者の代理人として書面を書かなければなりません。中立的な争点整理や言葉遣いは減点対象なので注意しましょう(良し悪しは別として)。

刑事弁護:2冊

・刑事弁護の手引き
・みんなで作るケースセオリー(通称「ミンツク」)

※刑事弁護の手引きは刑弁起案における国定教科書です。隅から隅まで読み込み、全てを頭に叩き込んでください。ミンツクも(意外と)思考の整理にすごく役立ちますので、ぜひ読んでみてください。
※刑弁起案も弁護人の立場から論じるものですから、裁判起案と異なり、中立的な争点整理や、検察官の主張立証構造のまとめ直し、第三者的な認定等をすると減点対象となります(良し悪しは別として)。要注意です。
※刑事弁護が好きな方は神山『刑事弁護の基礎知識』(有斐閣)や高野ほか『刑事法廷弁護技術』(日本評論社)等まで手を伸ばしてみると良いでしょう。きっと刑事弁護に対する理解が深まるはずです。

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