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森沢明夫『たまちゃんのおつかい便』

この本は、女子大生のたまちゃんが、
過疎化が進む故郷の、買い物弱者と言われる高齢者のために
移動販売で起業しようとするところから始まります。

かつての同級生である、父子家庭で過ごして
父親の車屋を継いでいる男の子と、
東京に出たものの失意のうちに帰郷して
引きこもっている女の子、
その二人とたまちゃんで
起業のアイデアが共有されていきます。

家族や地域の人たちの人間模様が絡まり合いながら
たまちゃんが成長していく姿が描かれています。

登場人物たちが、時おり、
ハッとするような言葉をプレゼントしてくれます。

ぜひぜひ、小説の文脈の中で出てくる
すてきな言葉に出会ってください。

ここからは、私が小説から学んだことの備忘録です。


★たまちゃんのお父さんから学んだこと。

人に期待するのではなく、自分自身に期待しよう。
心のままに、自分だけの道を歩いていけばいい。
そして人にはただ感謝をすればいい。
そうすれば死ぬときに後悔をせずにすむ。
人生にあるのは成功と失敗でなくて、成功と学びだけがある。
たとえ身近に亡くなった人がいても、
悲しみにくれるのではなくて、
その人が人生で味わうはずだった楽しいことや幸せなことを、
生きている私たちがまるごと背負って生きるのが本当の弔い。
太く長く全力で人生を楽しむ覚悟をすること。
人生、何があってもいい気分でいるという覚悟を。


★たまちゃんのお母さんから学んだこと。

人生なんてあっという間なんだから、
一分一秒を惜しんでなるべくいい気分で過ごすことが大事。
そして人は人に喜ばれた時に
いちばんいい気分になるということ。
裕福と幸福は違うということ。


★たまちゃんのお祖母ちゃんから学んだこと。

(母の記憶が染みついた場所で、父親と後妻が
 仲良くする姿を見て意地悪な気持ちが
 芽生えてしまったたまちゃんに対して・・・)
「たまちゃん、自分のお母さんを馬鹿にしちゃダメ。」
というおばあちゃんの言葉は突き刺さりました。
お母さんはそんなちっぽけな人じゃないよってことですね。

いいことと悪いこと、すべてをひっくるめてこそ、
人生は絵のように美しく輝くということ。
写真や絵画が光と影で描かれるように、
幸福と不幸は、人生をより美しく、深く、
彩るための大切な素材であること。
寿命とは、「命をことはぐ」こと。
命が最期を迎えるということは、おめでたいこと。

森沢さんの描く、おばあちゃんの最期は
私の理想の最期でもあります。


光も影も含めたあらゆる事象と、
そこから生まれる周りの人からの言葉という宝物が、
たまちゃんの心を震わせ、
たまちゃんを成長させていく。
そのあらゆる体験をたまちゃんと一緒に
経験していける物語でした。

二度目ましてでしたが、
一度目よりも違うところにグッときました。
何度も読み返したい小説です。

たまちゃんのおつかい便


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