瀬尾まいこ『強運の持ち主』
主人公は占い師の女性。さまざまな人たちの相談に乗る毎日の中で、主人公の生き方や考え方が時には「再確認」になったりもしながら、お客さんの影響を受けて変わっていきます。
お客さんの人生と主人公の人生が交錯しながら各章はエンディングを迎えていきます。
この小説を読み終えて、
ーーー実は私たちは、占い師に頼らなくても自分で答えをすでに知っているのではないかーーー
と予感しました。
もし自分の決断に不安や心配があれば、「気をつけた方がいい」などという占い師の言葉として返ってきます。逆に、自分の決断に揺るぎのない信念があれば「いい運気に乗っています」、「何をやってもうまくいきますよ」などという言葉として返ってくるのではという予感です。
人は自分自身に「GO」サインをもらいたくて、行くにしてもとどまるにしても、背中を押してもらいたくて占いに行くのではないか、だとすれば、占いに行っても行かなくても、結局は自分で決めているということなのではないかと思います。
ふだんからいかに直感を受け取るパイプを自分の中にもっているか、サインを受け取るアンテナを広げているかが大事だなと感じました。
さて、小説に戻ります。
この物語には、お客さんである小学生と高校生、ある特殊な能力を持つ大学生、主人公のアシスタントとして雇われた20代のシングルマザー、そして主人公のパートナーである「強運の持ち主」が出てきます。
どの占いのエピソードにも、「なんだぁ、そういうことか!」という結末がもたらされます。その解決策はいつも、決して占いだけに頼ったものではないのです。
各章のエピソードを通して、時には占いに頼るのもよいけれど、「私たちの実生活、日々の暮らしの中にこそ答えがあり、ヒントがある」こと、そして「そうしたヒントや答えに気づいていく」こと、「そうすることが本当の解決につながる」というメッセージも含まれているのではないかと感じました。
この世界にはバイオリズムや流れというものはあると思いますが、それに主導権を奪われるのではなく、上手に付き合いながら自分の人生のかじ取りは自分でしていきたいものです。
私自身、占いは嫌いではないのですが、読了後、私の内側で誰かが
「占いに埋没して占いを頼みの綱にしながら生きるのではなくて、エンターテインメントとして楽しむくらいの気持ちでね!」
とささやいたような気がしました。
他に読まれる方の内側にはどんな言葉が響いたのでしょうか。いろいろな方の感想を伺いたいなと思いました。
ちなみに私はこの絵の挿絵を描かれている
コイヌマユキさんの絵が好きです。