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保険業界の本音を探る

保険業界の本音

保険会社・保険代理店・お客様 の本音

保険の業界は、保険会社と保険募集人とお客様、保険会社と保険代理店と保険募集人とお客様の関係で成り立っています。
メーカーである保険会社が保険商品を開発し、販売店である保険代理店や保険募集人が保険商品の販売の担い手となり、最終的なエンドユーザーであるお客様が保険商品を購入します。
そして保険という商品の市場への提供に留まらず、リスク軽減のサービスや健康増進に向けたサービスまで、保険事故の発生の前後に関わる各種ソリューションの提供を行っているのが今の保険業界です。

その保険業界で今、何かが起きています。

昨年来、保険会社や保険代理店による不祥事が後をたたず、直近でも保険会社社員や保険代理店による情報漏えいがニュースで取り上げられています。

「何かがおかしい」「何かが変だ」「大切なことを忘れている」と思える昨今の保険業界。

事業は時代とともに社会ニーズとマッチする中で変化や成長をしていくものであり、それゆえに100年以上も続く企業もできていますが、そのような大企業と言われている企業でなぜこのようなことが繰り返されるのでしょうか。

その「何かがおかしい」を保険会社や保険代理店、そしてお客様のそれぞれの立場で本音や課題を探る中で、何か見えてくるものがあるかもしれません。
それぞれの立場での本音や課題を自分なりに見てみたいと思います。
あくまでも保険会社の社員として営業現場の一線で経験した経験則や思いや気づきであり、主観的な部分もありますのでご了承ください。


今月の営業目標は!

1.保険会社の本音

①保険会社の本音

"高く売る、多く売る、支払いを少なくする”
お風呂の水の理論のような内容ですが、保険業界にとって、『出口を塞げば水かさは増える』、つまり、『保険契約を増やし保険金の支払いを少なくすれば利益は上がる』が本音の部分でしょうか。
従って、保険代理店や募集人の生産性が向上すれば保険会社の収益は伸びるというのが、保険会社の基本的な考えです。
ここに、お客様を主軸としてとか、お客様をお守りするために、という文言を加えたのが、最近の保険会社のパーパス(存在意義)と言われているものです。
また、保険会社も他の業界と同様に生産性の低さは言われ続けていますが、
保険会社の業務多忙、生産性の低さは保険代理店の自律(自立)自走ができていないため、と思っているところがあります。
労せずに仕事がしたい、今の厳しい環境は保険代理店の変革がすべてだ、と言っているようです。

②保険会社にとっての残念なこと

保険会社にとって残念なことをいくつかあげてみましょう。

ⅰ.代理店を数多く作ればたくさん売れる(マーケットシェアが増える)との幻想

今もなおマーケットシェアに強くこだわる業界ですが、米屋、酒屋までもを保険代理店とし、「保険の担い手をとにかく増やせ増やせ!」が過去の保険会社の営業戦略としてあったのも事実です。
このため、現在では、多すぎる保険代理店に対するコントロールができない、コンプラ指導が行き届かない、というのが現状です。
『質』を求めてこなかった保険業界のつけが今、表面化してきてるのでしょうか。


ⅱ.保険の販売チャネルの変革という大義名分を掲げ、小規模の保険代理店を一定規模の組織型代理店へ誘導することが保険会社の本来営業なのでしょうか?

保険代理店網のチャネル構造の変革の施策であればまだ良いのですが、目の前にある阻害要因(保険代理店の数が多い/手間がかかる)を減らすことのみ傾注しているようです。
このままでは保険代理店の未来がない、自分たち保険会社の未来もない、と思っています。


ⅲ.稼ぐ大型代理店には平身低頭、小規模代理店は上から目線といった保険代理店対応の違い

強いものには弱く、弱いものには強い、どの業界にもありますが、保険業界にも根強くあります。
ここに潜在的なリスクがあると考えます。

ⅳ.保険会社の収益の源泉はどこから?

保険会社の収益は保険代理店の1件1件の契約の積み重ねであることの意識が低い、または知らない社員がいるのではないでしょうか。
代理店との位置関係は、保険会社はメーカ(上)であり、保険代理店は販売委託会社(下)との潜在的な意識があるのかもしれません。
こどもの世界から仕事の世界まで、上と下の関係(強い⇔弱い)関係がここにもあります。
その結果、大切な事を忘れているのではないでしょうか。

ⅴ.保険会社と保険代理店の距離感

保険会社が自ら保険代理店との距離を開けているのが実態。
保険代理店との距離感の拡大は、保険会社がお客様との距離を開けている事にほかならなず、お客様本位を第一に考える保険会社にとってこれで良いのでしょうか。


ⅵ.保険会社による保険代理店支援

保険代理店との位置関係の崩れに加え、保険会社と保険代理店の知識・経験の逆転から、保険会社による代理店支援の『力』は弱くなってきているように感じます。
知識・経験の少ないない保険会社社員による、ベテランの保険代理店の指導・育成等の支援は難しい、というのが今の保険会社の第一線の姿です。


2.保険代理店の本音

保険代理店は頑張っています!

①保険代理店の本音

ⅰ.保険代理店は保険料ではなく収益(代理店手数料)が一番の関心ごと

保険会社が求める営業目標は営業成績(保険料/補償額)ですが、保険代理店の一番の関心ごとは代理店手数料(収益)です。
ここの思いに大きなギャップがあるため、保険会社の声が代理店に届きません。
保険代理店に寄り添い、保険代理店の『心』に灯をともすのは保険会社の皆様方なのです。


ⅱ.保険会社と喧嘩はしたくない

保険代理店は、代理店指導や支援ができない保険会社を疑問視していますが、メーカである保険会社とは喧嘩ができないジレンマがあります。
本当はもっとお互いに建設的な意見をぶつけ合いたいのに、保険代理店はぐっと我慢しています。
でも保険会社は気づいていません。


ⅲ.一人で定年もないバラ色のような職業という誘いの未来にあったものは?

保険会社が強くこの業界に誘引し、指導や支援をしてきた現在の保険代理店。
今では一人での保険代理店経営の困難さや「いつまでやるんですか」、といった定年論争までおきていいます。
「今更言われても」と言う保険代理店の声が聞こえきます。

②保険代理店にとっての残念なこと

ⅰ.募集人はプレイヤー

保険代理店はその成り立ちからみても多くはプレーヤー。
組織の運営(経営者になること)は苦手である保険代理店も多いのが実情です。
そこに寄り添ってくれるのは、保険会社なのか、あるいはそれ以外の第三者なのでしょうか。


ⅱ.契約の更新業務で手がいっぱい

組織化されていない多くの代理店では、事務も営業もすべてが一人ないし少人数でこなしているのが現状。
いわばスーパーマンですが、お客様向けの新しい価値提供をしたくてもその時間もなく、更新業務が価値提供との思いに至ってしまっています。
保険代理店は課題が山積しています。


ⅲ.大型代理店への参画は?

大型の組織型代理店への参画後、こんなはずではなかったとの悲しい現実が待っていることが多いのではないでしょうか。
参画した代理店が幸せであればよいのですが、保険会社はそこまでは思いが届いていません。


3.お客様の本音

お客様の本音!

① お客様の本音

ⅰ.保険料について

保険契約者にとって、保険契約に関わる「保険料は安く、補償は広く」が本音です。
同じ補償であれば保険料が安い保険商品、保険会社を選択します。


ⅱ.補償より保険料

保険という商品(補償)は保険契約の締結時には顕在化していないため、見えないもの、顕在化していないものにはコストをかけたくない、という思いが強くあります。


ⅲ.商品が顕在化していれば高くても質の良い商品は購入したい

保険代理店や保険募集人から、十分な時間をとって保険商品の説明を受けることによって、保険料の高い・安いがあっても補償重視で高い保険料の保険商品を選択することも多いです。
保険商品は見えない商品だからこそ、商品内容等をより見えるかする工夫が保険会社・保険代理店に求められています。


ⅳ.リスクが高いから保険に入る

リスクが高いから保険に入りたい、というのが大前提ですが、100%事故が起こる可能性があるから保険に入る、起こるか起こらないかでは保険は入らない、という声もお聞きします。
ただ考えて見てください。
100%事故が起こる保険では、保険会社は商売になりません。
起こるか起こらないかのリスクに対して、保険商品が販売されています。
従って事故がなければ保険料は「掛け損」のように思われがちですが、その間、"リスクに対する補償が提供され続けてる”ということに気づけば、「事故がなくてよかった」となります。

ⅴ.事故の時はすべて補償してほしい!

事故が起きたらすべて補償してほしい、早く保険金を払ってほしい、賠償事故の場合、相手ともめたくない、というのがお客様の大きな願いです。
事故時、お客様は保険金が支払われることが大前提の意識が強くありますので、保険契約時の補償の有免責の説明は保険会社・保険代理店は必須です。

②お客様にとっての残念なこと

ⅰ.保険の加入の目的

リスクがあるから、その必要性により保険に加入しますが、"事故の際には必ず補償される”との意識が強く、保険には事故状況により有免責があることを意識していないお客様も一定数はいるようです。


ⅱ.保険に関する知識

保険代理店まかせの保険契約になっていませんか。
「今まで通りで良いのでやっておいて…」、まだいるかもしれません。
保険商品もお客様のおかれている環境も変わっているのに、
・保険とはどのようなもので
・自分はなぜ契約をするのか
・その契約内容に納得しているのか

保険契約者としての意識、知識の向上は欠かせません。


4.保険業界の伴走者と伴奏者

①保険会社の営業の第一線が好きな「伴走者」

保険代理店は知識が少なく忙しくて行動できないがマーケットはある、との前提にたち、保険会社の社員が「手本となって保険代理店とともに走ります」(伴走者)、と保険会社が保険代理店向け好んで使う言葉です。
でも保険会社は保険代理店もお客様のこともよく知しません。

実は自分たちの営業施策目標をやるための施策のための行動が第一にあることが多いのが現状です。
本当にお客様や保険代理店のために、と考えて行動している保険会社社員がどれだけいるのでしょうか。

②保険会社は「伴奏者」となりえるのか

『伴走者』ではなく『伴奏者』へ。
保険会社には、保険代理店と伴に走るのではなく、走る代理店を縦横斜め横から支援する、そしてお客様に本当に必要な保険という安心をお届けする、そのようなことを期待しています。
あくまでも主役はお客様と接点のある保険代理店であり、その先にいるお客様です。
この保険の世界をコディネートする役割が保険会社と考えます。
保険を売る側と購入する側の双方の意識や知識のステップアップが保険の正しい普及につながります。

保険会社は『伴奏者』となりえるのでしょうか。
期待しています。

保険の「伴奏者」たれ

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