コートジボワール回想録③
そもそもYOUは何しにコートジボワールへ?
ということについて、少しまとめてみたいと思います。
P4C 子どものための哲学
今回コートジボワールを訪れた最も大きな目的は、P4C “Philosophy for Children”「子どものための哲学」という活動に参加することでした。
1970年代にアメリカ人の哲学者マシュー・リップマンによって開発された哲学の教育方法で、
人が生きる上でとても大切なことだけど、普段は立ち止まって考えないことを、じっくりゆっくり考える「対話の探究」を目的とした活動です。
活動していく中で常にキーワードとして挙げられていたのは、 “problematize” という言葉。
そんなの当たり前だと思ってたよ!
というような、これまで意識して考えたこともなかったような事柄について、
「問いかける」ことで、対話をしながら自分なりの答えを探っていきます。
私たちはファシリテーターとして参加しました。
その回のコンセプトを決め、問いかけの内容や流れをある程度準備しつつ、実際に対話の中で子どもたちから出てきた意見や疑問を拾いながら臨機応変に対応していかなければなりません。
これがとても難しい。
そしてとても面白い。
その道のプロなんかでもなく、そもそもP4Cとはなんぞや?というところからだった私にとって、難しいのは当たり前。
でも、自分がどうファシリテートするかによって、その時間が持つ意味は幾様にも変化します。
だからこそ責任があるし、参加している子どもたちのために少しでも学びのある時間を一緒に創っていきたいという気持ちになります。
今回お邪魔した学校は、アビジャン中心部にあるインターナショナルスクールと、北部のAboboという地域にあるパブリックスクールでした。
ここではどちらも放課後のアクティビティの一つとして位置付けられていて、インターではprimary、secondary、そしてhigh schoolの生徒たちを対象に曜日ごとに活動しています。
一方パブリックスクールでは、英語のクラスをとっている高校生を対象に行われていました。
成績が付けられる授業とは違って、とあるテーマについて放課後に自由に対話をしながら探求する。
教え込まれるのではなく、それぞれが意見を言い合い、傾聴し、尊重する。
哲学的な探求を真面目にする。
そんな時間がP4Cには存在します。
今回実際に何回か体験させてもらって、P4Cの意義、目指すところが少し見えた気がしました。
意見を言うのが得意な子
発言するのが苦手な子
頭の中を整理するのが早い子、ゆっくりな子
対話をリードする子
他人の意見に必ずリアクションを示す子
みんなの前で話すのは苦手だけど、スモールグループなら話せる子
いろんな子どもたちがいました。
この場では、どんな意見を言っても否定されない。
安心して話せる。
そして、楽しい!
そんな気持ちになってもらうことが第1歩目だと思いました。
その上で、出た意見について深ぼってみる。
こういう場合は?こんな人にとっては?
その意見が作られた背景には何がある?
Critical thinkingを育んでいきます。
同じコンセプトでやってみても、インターとパブリックでは全く違う時間になります。
インターには様々な国籍の子達が集まっていて、裕福なご家庭のお子さんがほとんど。
いろんな場所で育ったバックグラウンドもあり、発言することに躊躇する子は少ない印象でした。
教育スタイルも影響しているのかもしれません。
一方パブリックスクールでは、1クラス50人越えが普通で、先生が一方的に教える知識伝達型の授業が多いそう。
なかなか授業の中で生徒同士でディスカッションをする機会もなく、受け身の学習だそうです。
これは日本の多くの学校にも言えることかもしれません。
そんな子どもたちにとって、P4Cはとても重要な役割を果たしていると思います。
自分の意見を整理するのみならず、
他の生徒やファシリテーターである先生とのインタラクションが多いこと、
全員が対等な関係性で対話を実施すること、
ひとりひとりの主体性も育んでいける。
Active learnerになっていければ、普段の授業でもこれまでより吸収できることが増えるかもしれません。
哲学的な問いについて探究するメリットについては、
何が正しくて何が間違っているか、
といった絶対的、普遍的な答えがないからこそ、これまで発言に躊躇していた子たちも積極的に発言できるようになるのかもしれないとも感じました。
P4C実践を通して、いろんな可能性が見えてきました。
同時に、課題や難しさも沢山ありました。
feelable, tacheable, sensableでimmersiveな活動を目指す。
そのための工夫と、その前提には楽しさやワクワクがあるということ。
ここで感じた思いや経験を忘れずに、これからもいろいろな世界を見ながら考えていきたいと思います。