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『マリッジ・ストーリー』剥き出しの痛み

 女優のニコールと夫で舞台演出家のチャーリーが結婚生活に葛藤を抱え、離婚に向かっていく。円満な協議離婚を望んでいた2人だったが、それまで溜め込んでいた積年の怒りがあらわになり、弁護士をたてて争うことになってしまう。
 お互いにわだかまりをぶつけ合う様は痛切で、ずっと観ているのが辛く、停止ボタンを押したりもした。ある円環が起こり、救われたことで後味はまだ優しいが、罵り合いの映画だった。
 アダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソンがとても魅力的なので、成り立っている映画だろう。繊細かつ強烈な演技を2人とも披露している。
 ノア・バームバックの脚本は重くなりすぎないように、適所にユーモアを交えているが、それが逆に一連のシーンを痛々しいものにしているのかもしれない。
 この映画が鏡となって、自分の結婚生活と重なるところは、観ていて苦しかった。妻とのコミュニケーションを見直す機会はこの映画に限らないが、そんな逡巡に、2時間の濃密な時間としてぶつけられた傑作。
 観終えて、家族で晩ご飯を食べて、妻との生活を希望の未来として、捉えられるのは、映画の力か?私のメンタルコンディションが良いからだろうか?家族とこの映画を生きた、味わい深い週末だった。

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