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二度と忘れることなき焔

 ひさしぶりのランニング。外に出ると冷たい空気に少し震える。ただ陽光の暖かさは確かにある16時前。
 U2の『The Unforgettable Fire』を通しで聴きながら、走ることにする。好きなタイトル。そして、冬の田舎道にもジャストフィットする。
①A Sort Of Homecoming
   この頃から数年のU2のライブは、ボノの感情過多さで苦手なのだが、この曲の魂の叫びは振り切れた感情が完璧に表現されている。
 ただラリーのドラムが、このアルバム通してなのだが、アタック感があまりにもなく、変な聞こえ方をする。その違和感はずっとあった。次作『The Joshua Tree』のラリーのドラムは最高なので。
 ボノの詩情は味わい深くもあり、良いランニングになる予感しかなかった。
②Pride(In The Name Of Love)
  大名曲。ボノは自分の限界まで感情を出し切っているが、ライブであるような感情過多は全くない。力強い愛と生の讃歌。
③Wire
  エッジのギターがこのアルバムの曲群の中で一番興味深い。ギターだけでイけるのだが、後半ボノのラップと叫びの間のようなスタイルも大好きだ。
④The Unforgettable Fire
  この流れのなかでは、抑制された曲だが、このエッジのサウンドスケープは美しく、シングル曲としても強く、またロマンチックでもある。
⑤Promenade
  小品だが、儚い煌めきがあり、アブストラクトさが魅力。文脈のはっきりしないボノの詩が素晴らしい。
⑥4th Of July
  バンドのセッションを盗み聴きしたような曲。エッジのディレイサウンドが綺麗で、そのミニマルさにランニング中魅せられた。
⑦Bad
  歌詞が世界を作り上げている。ボノは自らのたくさんのボーカルスタイルを披露し、その全てにおいて成功している。
⑧Indian Summer Sky
  歌詞もサウンドもランニングに最適で、スピードが速まる。今日は特に印象に残らなかったが、この曲の曲内に風が吹いているカンジが好きだ。
⑨Elvis Presley And America
  ボノがセクシーに自分の感情を表出していて、ラリーのドラムの加工も成功している。U2の中でこのような実験大作は他になく、特殊な美曲。
⑩MLK
 キング牧師に捧げられている。'彼の上に雨よ降れ'というラインがとても感動的だ。
 ここでランニングを終える。そこまで完成度は高くないが、ここがイーノとU2の旅路の始まりで、未完成な魅力に包まれ、弱点が目についても、それを超えるパワーと美しさがある。ここから、音楽史に刻まれる『The Joshua Tree』『Achtung Baby』が生み出されていく。
 このnoteもこのアルバムを振り返る良い機会だった。今まだランナーズハイの余韻の中にいて、良い休日だった。

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