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『海と毒薬』はたして良心は俺の心中に存在したのだろうか?

 人の道に外れる行為をした医師が、良心の呵責が起こるのを待つ。しかし、やってこない。冷えた笑みが口元にあらわれるだけだった。
 また、別の医師は、「それ」以後、別の冷えた人間になってしまった。
 裁かれても、この冷たさは姿を消さなかったのだろう。大きな生き物のような夜の海を眺め、呑み込まれたくても、突き返されるようだった二人。
 人生において、この道とは別の道もあっただろうと後悔する。後悔しても、この道から逃れることはできない。そこから余生を全うするとしたら、自分の外側に対してより良い行いをしていくことしかないのではないか。内側を塗り替えるのが無理だとしたら。

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