『イングリッシュ・ペイシェント』戦時下の後悔と旅立ちの叙事詩
第二次世界大戦下の、北アフリカを舞台にした作品。撃墜されたイギリスの飛行機から、全身に火傷を負った男が助け出された。記憶を失っていたために英国人の患者と呼ばれることになった彼は、収容された野戦病院で看護婦ハナの介護を受け、少しずつその記憶を回想する。それは人妻との、砂漠での熱狂的な恋の物語だった。
サハラ砂漠での広大な撮影に魅せられる。見事だった。アンソニー・ミンゲラの演出に特筆すべきものは感じなかったが、俳優陣の役作りが素晴らしく、特にクリスティン・スコット・トーマスの気品のある生きた演技が素晴らしい。不倫に陥る過程も繊細に描かれている。
当時高校生だった頃、アカデミー賞の存在は大きく、本作が最多受賞したことから、レンタルビデオでわくわくして借りた記憶がある。それ以来の鑑賞だったが、不倫は傷を生み、いくら後悔してもやり直せないことに、自分の人生がフラッシュバックしながら、観ていた。私は不倫などは決してしないが、後悔は人生につきものであり、後悔のコインの裏はリスタートだと信じて、今から朝の雨の街へ足を踏み出すのだった。