『アイズ・ワイド・シャット』キューブリック最終作にして彼の新たな魔法
数多の傑作を世に出してきたキューブリックの遺作。夫婦の関係性についてのドラマでありつつ、正体の分からない敵からの恐怖を描くサスペンスとしても一級。
また、トム・クルーズの魅力でいっぱいの作品でもある。彼の表情、仕草はとても繊細で、彼自身の優しさが役に表出している。
ポルノとしての側面では、官能的に思えるシーンと、性的に何も感じないシーン、グロテスクなシーンと、様々だったが、これはもちろんキューブリックの示唆するところだろう。
クリスマスのニューヨークの夜景を捉えた映像も見ものだ。トム・クルーズがそこを歩くだけで絵になる。
トムとニコールの最後の会話は本作の答であろうし、この会話でキューブリックがキャリアを閉じたのは、なかなか感動的だ。
新型コロナウイルスに初めてかかったなかで鑑賞したが、そんなときも映画は私を助ける。早く隔離から解けて、また大切なもののために生きていきたい。