医療・介護にこそ、バウチャー制度を導入すべき理由
私は、よく、オリンピックや大阪万博の開催やこども家庭庁の創設等、そういった政府主導の財政支出について、"そんな無駄な事にお金を使うなら、減税か現金給付をしてくれ"と思う事があります。
それと同時に、政府主体で、国民が喜びそうな事を考え、何か新しい事業を行ったり、変な箱物を作って、そこに予算を投じたりするのではなく、国民自身が、良い商品やサービスを選んで、そこにお金を投じた方が、本当に良い商品やサービスが増えていく事は間違いないとも思っております。
その上で、現在の日本の国家予算の大半が、社会保障に使われている事を鑑みれば、社会保障にこそ、そういった"バウチャー制度"のような原理を導入するべきなのではないかと考え付いた訳です。
ですから、私は過去に何回か、社会保障制度改革に関する記事を挙げており、その中で、バウチャー制度の導入について既に言及はしておりますが、本noteにおいては、改めて、バウチャー制度を、医療・介護制度に導入するメリットについて、考察し、論じていきたいと思います。
1.年金と医療・介護では、全く性質が異なる
年金制度というのは、基本的には、どの先進国も似たような制度設計となっており、政府の裁量によって、制度を変更する余地が少ないと言えます。
ただ、その一方で、医療制度や介護制度においては、極論、公的支出を一切行わないという選択も出来ますし、反対に、全国民が、無料で医療・介護を受けられる程、手厚い制度を作るというように、その制度設計について、政府側に、大幅な裁量が与えられていると考えられる訳です。
そして、実際、現在の日本の医療・介護制度というのは、利用者がどれだけいたか等の実績を鑑みる事も行いますが、実質的に、政府が、国民から資金を集め、政府自身の判断によって、国民が喜びそうな箱物(病院や介護施設等)を作り、そこに予算を投じるという形になっていると見る事が出来ると思います。
なので、年金には、政府の意向が影響する事が殆ど無い一方で、医療・介護制度については、政府の意向が強く反映されてしまうという特性がある訳です。
2.医療・介護に、バウチャー制度を導入すればどうなるか?
現状の社会保障制度においても、各病院や施設間の競争原理は十分に働くような制度設計にはなっていると思います。
しかし、バウチャー制度を導入する事によって、"そもそも、病院や施設に行かない"という選択肢が、新たに国民に与えられる事になる訳です。
具体的に言えば、現状の社会保障制度下においては、医療施設や介護施設のような供給側に対し、利用者がどの程度いたか等の実績に応じて、予算を投じている訳ですが、私が考えるバウチャー型の社会保障制度下においては、まずは、需要側である国民に、医療費や介護費を給付した上で、それを原資に、"どの病院や施設が良いのか?"という事や、"そもそも、病院や施設に行くべきなのか?"という事を選択して貰う事を想定しております。
つまり、医療費や介護費を、各事業者に配るのではなく、国民自身に、年金と合わせて配ってしまうという事です。
ですから、当然、自己負担率は、現状よりも更に引き上げる必要があるとは思いますが、その代わり、健康であればある程、病院や施設に通う必要が無くなり、その分、国民(主に高齢者)の手取りは増えますから、国民全員が、健康な生活を目指すような健全な社会が作れる訳です。
まとめ.
やはり、現状の医療・介護制度を達観すると、冒頭で述べたような、政府自身が考える理想の箱物を作って、予算を投じている事と同視出来るような仕組みになっている訳です。
そして、そういった現行の医療・介護制度下においては、不健康になればなる程、得をするような社会が形成されていってしまうと言える訳で、最終的には、誰も得をしないような制度設計になっていると言わざるを得ません。
他方で、医療費や介護費を、国民に直接配ってしまえば、医療・介護サービスを利用しない事の大きなインセンティブが産まれるので、なるべく健康体でいようとする国民を増やせる訳です。
また、最近では、物価高の影響が強まっており、高齢者の間には、"年金支給額が少ない!"という不満が高まっております。
そういった事情を鑑みても、猶更、医療機関や介護施設に対し、予算を投じるのではなく、国民に、直接現金を給付し、医療・介護サービス自体を受けないという選択肢を与える必要性が高まっていると言えるでしょう。
そして、現状の医療・介護制度においては、医療や介護のサービスを提供する事業者も得をしてしまっている訳で、"高齢者だけが得をしている"とは到底言い切れない訳です。
ですので、現在の医療・介護制度を改革し、高齢者が自由に使えるお金が増えるような形にしない限りは、今後、いくら社会保障に対し、追加の財源を投じたとしても、一生、"社会保障制度に対する高齢者の納得感"は得られないのではないかと考えております。
更に、前回のnoteにおいても述べましたが、日本の借金は年々膨らみ続けている一方で、これまで全くインフレが起こらなかった事から、元本の償却や利払い費を合わせた国債費が、27兆円に達し、国家予算の1/4を占める程巨額になってしまい、国民生活に、重く、その悪影響がのしかかっている状況にあります。
ですから、日本の借金の悪影響を軽減するためには、しっかりとインフレを引き起こす必要がある訳で、そのためには、本記事で述べたような、国民自身にしっかり給付を行い、購買力を高める施策が必要となる訳です。
以上を総括いたしまして、医療・介護制度に、バウチャー方式を導入するという事は、国民全員が健康である事を目指す健全な社会が作れる上に、国民の購買力を高め、日本経済を健全に成長させられるような、非常に国益に適った施策であると結論付けさせていただきます。