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財務省は、何故緊縮財政に拘るのか?

財務省と言えば、日本のGDPが30年間伸び悩み、実質賃金も年々低下しているという状況の中に居ても、頑なに、緊縮財政を辞めようとはしない訳です。

なので、今回は、"何故、財務省が、緊縮財政を辞めないのか?"という事について、私なりの考察を述べようと思います。


1.従来の緊縮財政

従来までの緊縮財政とは、1930年代の世界恐慌1997年代のアジア通貨危機等、各国が、経済危機に見舞われた際、税収が大幅に低下する事から、歳出を徹底的に削減する事によって、財政再建を目指そうという政策指針である訳です。

しかし、歴史を見れば、明らかな通り、世界恐慌で言えば、緊縮財政を行ったハーバート・フーヴァー大統領と、ニューディール政策によって、アメリカ経済を立て直したフランクリン・ルーズベルト大統領との対比や、そして、アジア通貨危機で言えば、積極財政を続けたマレーシアと、IMFの勧告に従って、緊縮財政を続けたフィリピン、タイ、韓国との対比を見れば、"不況の時には、積極財政をした方が、明らかに、経済や税収を立て直す効果が高い"という事が、これまでに何度も証明されてきた訳です。


2.現代の緊縮財政

そして、現代の緊縮財政とは、"国家歳出に占める社会保障費や国債費の膨張によって、その他の予算がひっ迫する状態である"と言われる事があります。

言わば、日本程では無いですが、各先進国も、同様に、社会保障費やそれを支えるための国債費の増大によって、その他の一般歳出の額も節約せざるを得ない状況であり、アメリカに至っては、公教育は、殆ど壊滅している状況にあると考えられており、イギリス北欧においても、医療従事者や介護職員、公立教員等、公的セクターの人材が、安い外国人労働者に置き換えられるという状況が続いております。


3.何故、財務省は、緊縮財政を続けるのか?

そして、"何故、財務省が、緊縮財政を続けるのか?"という問いに対しても、私は、将来の社会保障制度維持のためであると思っております。


給付と負担について

例えば、上図で見ると、今の社会保障制度は、その原資の27.9%が、国の歳出で賄われており、当然、その中には、赤字国債による補填も含まれている訳です。

ですから、仮に、今後、財政赤字が拡大し続けた場合、それに伴い、国家予算に占める国債費の割合が増加していき、社会保障費に割り当てられる財源が減る事に成りますから、そうなれば、結果的に、国民健康保険国民年金制度後期高齢者医療制度等、企業やサラリーマンの社会保険料だけでは賄えない社会保障制度は、次々に撤廃されてしまう可能性が高いと言えます。

そうなってしまうと、国は、"今、社会保険料を払っておけば、安泰な老後を送れます"という建前の下、社会保険料を徴収している訳ですから、その社会保障制度を崩壊させる事に繋がりかねない財政赤字の拡大については、慎重になっていると考えられる訳です。


4.赤字国債が発行出来なくなった場合、社会保障制度はどう改悪されてしまうか?

年金制度の改悪

年金保険の財源

まず、年金制度の場合は、2017年時点で、国民年金の46%厚生年金の20%が公費で賄われておりますから、新規の赤字国債の発行が行えなくなった場合、国民年金の支給額は半分に減ってしまい厚生年金の支給額は、4/5に減る事が考えられます。

また、人口減少によって、保険料収入が下がり続ければ、特に、厚生年金に至っては、支給額が、更に減り続ける事が考えられます。


医療制度の改悪

負担どうする?社会保障「医療」各党の違いは…【#きっかけ解説】

そして、医療制度に至っては、原資の37.9%が公費で賄われております。

ですから、後期高齢者医療制度高額療養費制度等は撤廃され、社会保険加入者であるサラリーマン以外は、基本的に、プライマリーケア以外は、全額自己負担になってしまう事が考えられます。


ですから、消費税増税等、税収を高める事を怠ったり財政赤字を闇雲に拡大させ続けた場合、将来的に、歳出削減のため、上記のような社会保障制度の改悪が行われる可能性が高いと言える訳です。


5.結局、階級間の対立である

しかし、"将来の社会保障制度に期待している"と言えるのは、大企業やそれなりの中小企業に勤めるサラリーマン達だけであり、それ以外の層の人々にとっては、将来の社会保障制度を維持する事に対するインセンティブが低いと言える訳です。

ですから、確かに、財政赤字が拡大し、社会保障制度の改悪ハイパーインフレ預金封鎖等、そういった悪影響が起こる事は、日本人全体に対して、マイナスである訳ですが、それでも、安定して企業に勤められるサラリーマン以外の層の人々、特に、万年非正規労働者であるような国民は、"将来の社会保障制度が崩壊しても良いから、今、積極財政を行って欲しい"と考えると言えるでしょう。

何故なら、国民年金等、非正規労働者が加入できる社会保障制度では、律儀に、満額払い続けていたとしても、安泰の老後を送る事は出来ないと言えるからです。

なので、大企業やそれなりの中小企業に勤めるサラリーマン達のように、"将来の社会保障制度に期待する人々"は、緊縮財政を支持し、かたや、"将来の社会保障制度に全く期待してない人々"は、積極財政を支持する方が、それぞれ、メリットの最大化が図れると言えるでしょう。


6.このままでは、日本は滅びる!!

しかし、いくら高品質な社会保障制度が維持出来たとしても、優秀な人材や企業が減り、経済力が維持出来なければ、元も子もないと思っております。

特に、近い将来、社会保障を提供する公的セクターの人材が不足すると考えられておりますから、保険が手厚くとも、誰も、医療や介護を提供してくれないのであれば、全く意味が無い訳です。

そして、若い人口が減り続け、基本的に、高齢者しかいない状態になれば、必ず、中国やロシア等の外敵の侵略を招き、日本は滅亡する事は間違いないと思っております。


まとめ.

ですから、結論としては、"財務省は、社会保障制度を、可能な限り、維持し続ける"という目的のために、特に、緊縮財政に拘っていると言えるという事です。

なので、必然的に、政権交代が起こり、現行の社会保障制度が、改革されるという事になれば、将来掛かる社会保障費が削減されるため、それに伴い、財務省の緊縮財政指向も修正される事が見込まれます。


しかし、私は、どんな理由があれ、30年以上続いたデフレ不況を、放置し続けていい理由にはならないと思っております。

そして、このまま、デフレ不況を放置し、社会保障費の増大を止める事が出来なければ、やがて、国債費自体が、国家予算の50%~100%に到達し、日本の財政は破綻します


ですから、滅びるのをただ待つのではなく、可能な限り、社会保障費の徹底的に削減し、それと同時に、積極財政を徹底的に行うによって、適度なインフレや経済成長をしっかりと起こし続け、国家債務を目減りさせるというような、攻めの姿勢こそが、今の日本には、最も求められていると言えると思います。


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