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隠岐への旅②海士町の素敵な宿Entô(エントウ)

初めての隠岐旅行。今回の旅のミッションは二つ。
①西ノ島にある国賀海岸(摩天崖)に行くこと。
②長男&彼女のイチオシのホテル「Entô(エントウ)」に宿泊すること。
二つのミッションのうち、1つ目の国賀海岸(摩天崖)についてはこちらの記事から。

(⬆この記事は西ノ島町公式noteと、note公式マガジン「国内旅行まとめ」に掲載されました!)

今回は2つ目のミッションである息子&彼女が勧めてくれた隠岐の中ノ島(海士町)にある宿、Entô(エントウ)について書きます。
実は息子&彼女は、一棟貸しの宿をビジネスとして作り上げようとしていたこともあり、全国各地の素敵な宿をいくつもリサーチし、実際に宿泊しています。そんな二人がオススメしてきた宿とは一体どんな宿なんだろうと、期待度MAXで予約を入れました。


「遠い島」という意味のEntô(エントウ)

宿の名前であるEntô(エントウ)は漢字で書くと遠島。文字通り「遠くにある島」で、その由来は遥か昔、後鳥羽上皇、後醍醐天皇などが島流しされた「遠い島」に遡ります。
今は交通網が発達しているので、飛行機やフェリーなどを乗り継げば数時間で行けますが、昔は長い時間をかけて頼りない船でやっと辿り着ける地だったのでしょう。
チェックインして窓の外を見たらこの景色。

この景色を見るためにここに来た

あまりに美しく「はぁ…」と思わずため息が出ます。久しぶりに時間が止まるのを感じました。

静謐(せいひつ)とはまさにこのこと。

海、山、島、空気以外何もない空間。「何もない」と表現してしまいましたが、正しくはそのままで「何も必要としない」完璧な美しさです。
それと同時に、この景色はあまりにも非日常で、自分が確実に「遠い島」に来たんだと感じさせてくれます。遥か昔、島流しで来た人たちは「一度来れば、もう帰ることは出来ない」と、途方もない気持ちになったのだろうなと想像しました。
この「随分遠くに来た」という感覚と、圧倒的に美しい景色が、頭の中の雑音を完全にオフにしてくれます。これこそ、まさに旅の醍醐味ですね。

この景色を見た時点で、私のEntô(エントウ)に対する満足度は100%を超えました。到着からわずか5分ほどで、もう思い残すことはない状態に。滞在中も窓に目をやるたびに、その美しさに「はぁー」とか「ひゃー」とか何度も声が出ました。しかし、Entô(エントウ)の魅力はこれだけではありません。

Entô(エントウ)は旅人と町(隠岐・海士町)をつなぐ場所

Entôのもう一つの魅力は、単なる宿泊施設ではなく、旅人と土地を結びつける役割りを持っていることです。遠島ならぬ「縁(えん)」島ですね。

隠岐ユネスコ世界ジオパーク拠点としてのEntô

隠岐の成り立ちをわかりやすく学べる展示

Entô(エントウ)はいわゆる宿泊施設ですが、もう一つの顔を持っています。それは隠岐ユネスコ世界ジオパークの拠点としての役割です。

宿には隠岐の成り立ちが学べる展示室ジオルーム ”Discover” があり、実物のジオ(地球)に触れる前にその歴史を学ぶことができます。
また、ホテル内には図書コーナーもあり、隠岐や海士町に関する本や雑誌をゆっくり楽しむことも。

隠岐や海士町に関する本、雑誌
その他も面白そうな本がいっぱい

私は図書室で後鳥羽上皇の島流しの経緯や、Entô(エントウ)のある海士町の歴史を勉強しました。ただ観光地を訪ねて景色に触れるだけでなく、その成り立ちを学んで、じっくり自分に落とし込める時間、空間がこの宿にはあるのです。

島の食材、島の人々と繋がれるダイニング

滞在中、一泊目の夕食は近くの隠岐牛のレストランへ(隠岐牛、めちゃくちゃ美味しかった)。二泊目はホテルのダイニングでお食事をしました。

海士町のブランド岩牡蠣 春香
隠岐誉(日本酒)を使ったソースで鯛をいただく
隠岐牛に添えられているのは島の調味料「こじょうゆ味噌」

島で採れた野菜、魚介類や肉、お酒、調味料をふんだんに使ったコース料理。一品一品スタッフが丁寧に説明をしながら料理を運んでくれます。どれも新鮮で、素材の味を生かしつつ工夫を凝らした味付け。何より盛り付けが美しく、一皿一皿じっくり楽しめました。窓から見える海と、眩しい夕映えが料理を照らしてくれます。

夕焼けを見ながら食事

デザートは、海士町の「野草取り名人」のおばあちゃんが摘んだドクダミとゲンノショウコの入ったケーキが出てきました。

野草のパウンドケーキ 海士町で採れたビワのコンポートと

料理一つ一つのエピソードをスタッフから聞いていると、この宿は地域(海士町)にしっかり溶け込んで宿づくりをしていることが伺えます。
訛りのないスタッフの女性に、「どこから来たの?」と訪ねてみると、東京からだそう。聞けばここで働くスタッフは、全国からこの地・この宿に魅かれて移住してきた人が多いとのこと。そういう思いが伝わってくるお料理でした。

ホスピタリティ溢れる若いスタッフが魅力の宿

ダイニングの壁には地球のカケラが

Entô(エントウ)もう一つの魅力はそこで働く人々。スタッフは20代から30代の若い人たちが中心です。接したスタッフは皆感じが良く、「教育されている」というより「自分の仕事が好きで一生懸命働いている」という印象でした。

夕食担当のスタッフは、私が食事を終えて席を立っとすかさず駆け寄ってきました。
「夕食の量、お味はいかがでしたか?」
私がどれも工夫が凝らされて美味しかったこと、量も十分満足出来るものだったことを話すと、嬉しそうな安堵したような表情に。私からすると娘ほどの年齢の方ですが、思わず「頑張ってね」と心から応援したくなりました。

私達が帰る日に、もう一つ印象的な出来事がありました。空港の島に渡る船が機材トラブルで欠航になるというアクシデントが発生。飛行機に間に合うのはその便だけで、船が出ないと私達は帰れないのです。そこからのフロントスタッフの対応が素晴らしかった。
「今から船をチャーターします。島にある他の宿と連絡を取り、同じ船に乗るはずだった他の宿のお客さんと一緒にチャーター便を借りて、料金がなるべく安くなるようにします。調整は私がやりますのでご安心ください」
しっかりとした口調で、テキパキ調整を進めます。しばらく待っていると船の手配が出来たと連絡が入りました。
結局、そのスタッフはチャーター便の出る港まで私達に同行、船が港を出るまでしっかり見送ってくれました。急なトラブルにも大変手際良く、ゲストを不安にさせないように対応してくれたのが、なんとも頼もしかったです。

他にも、図書室にスタッフがオススメの本を紹介しているコーナーがあったり、すれ違った清掃スタッフが気持ちよく挨拶してくれたりと、宿の随所にゲストが心地よく過ごせるような心遣いが見られます。夜にはホテルの前庭で、宿泊者が自由に参加できる焚き火も開催されました。お客さん同士がコミュニケーションを図れるよう、スタッフがさり気なく声掛けしていたのも好印象。

ゲストの交流の場にもなる焚き火

Entô(エントウ)は、若い人たちが誇りを持って働ける場所という意味でも魅力的でした。海士町は、全国からの移住者を積極的に受け入れる施策を進めているそうです。世界に誇れるジオパークというこれ以上ない観光資源がある町に、若い力を活かしていくのは大正解ですね。若い人たちが頑張っている姿を見られるのは、本当に嬉しい。この素敵な宿と彼らが成長するのを、陰ながら応援したいと思いつつ宿を後にしました。

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