最近なにか書いてる?
年配の男性の同僚に、世間話をしていたついでに「最近、何か小説書いてる?」と訊かれた。
彼には、私がnoteに投稿した短編小説「グズの男」を、投稿前に読んでもらったことがあった。
私は「どこか気になるところ、あります?」と、小説を読んでもらった折に、その男性に聞いた。
彼は、「どこかあった気がするけど……」と言いながら、慣れていないふうに、パソコンの画面をスクロールしていた。
結局、気になるところというのは思い出してもらうことはできなかった。
私は今一度、自分で推敲し、投稿ボタンを押した。
あれから、何か小説を書いているかと問われて、私は苦い愛想笑いを浮かべた。
まったくご無沙汰だった。
創作に関して、私は飽きやすい性質だということもあり、他の分野に興味が移っていた。
先日、漫画原作を三話まで作って、noteの創作大賞2024に応募した。
初めて作る漫画原作は、とても楽しかった。ストーリーの設定作りに注力でき、とても良いトレーニングにもなった。
ただ、シナリオ形式で書いたため、小説を読みなれている人たちにとっては読みにくかったかもしれないと、反省が残った。
あれからしばらく、私は文章での表現から遠ざかっている。
今にいたっても、何もアウトプットらしいことをしていない。
私が正直にそう答えると、同僚は「日記とか、書いてみたら?」と言った。
児童書作家のはやみねかおるさんの著書「めんどくさがりのきみのための文章教室」を読んだことがある。
その中にも、文章が上達するには日記が良いトレーニングになると書かれていた。
200字以上の日記を、毎日書くというルールだ。
その本によると「日記と思わず、1日に2回ツイッターを更新すると思えば、書きやすいかもしれないね」だそうだ。
ちなみに、はやみねかおるさんは、小学校の教師をされた経歴のある作家だ。「怪盗クイーン」シリーズの作者で、2022年には映画化も果たした。
日記を書く習慣は、確かに文章を書く力が鍛えられるだろう。
つらい仕事をしていた時期、私は毎日日記を書いていた。
書かざるをえなかったのだ。小さなノートに、毎日10ページ。良かったことも悪かったことも、2対8くらいの割合だっただろうか。
友人も家族も、誰も頼ることのできる人がいない中、ノートに気持ちを吐き出すことでしか、平静を保つことができなかった時期だった。
あの時ほど精神的に不安定ではないものの、鍛錬として、また日記を書き始めるのは、やぶさかではない。
だが、日記よりも、ネタ帳を作ってみたいという思いがある。
自分に合ったやり方で、アイディアを採取し、深める。
言い訳は後回しにして、ちょっとでいいから試してみる。
何でも億劫になる自分を、そうやってけしかけるというのも、いいかもしれない。
そういえば、自分の作品を読んでもらった相手に「最近小説書いてる?」と訊かれたのは、生まれて初めてのことだった。
こんなふうに、他者に創作活動を気遣ってもらえるというのは、なかなかどうして、幸せなことである気がした。