短編小説「グズの男」
これは、後から聞いた話だ。
俺も、そいつの身の上については、何も知らなかったよ。だって、ろくに会話したことなかったもの。
あるとしたら、そいつが俺の店にやって来て、一番安いラーメンを注文する時だけ。食って、会計して立ち去るまで、雑談なんかする余裕なんかない。こっちも、住宅地の真っただ中にある食堂とはいえ、仕事帰りの若いやつらが、そこそこやって来る。一人で営んでいるんだから、客と話しているゆとりなんか、これっぽっちもありはしないよ。
そいつを見た限り、いつもげっそりした顔で、