短編小説「グッドラック」
ガソリンの準備はできている。
ライターは、さっきコンビニで買った。
包丁は、三徳と刺身用が一本ずつ。念のため、ハサミとカミソリも家から持ってきた。どっちも、糊やら髭やらがこびりついて、刃はギトギトだ。だが柔らかいものを切るくらい、造作もないだろう。俺の首の皮さえ切れれば、それでいいのだ。
駅の改札を通る時は、さすがに緊張した。駅員に気づかれたらご破算だ。ホームでのんきに電車を待つ、サラリーマンやおばさん、女子高生たちも、みんな自分のスマホの画面に釘付けになっている。俺のこと