ホロロギ

北海道出身のゲームクリエイター志望。シナリオ担当。週に一度、創作活動の記事を投稿してい…

ホロロギ

北海道出身のゲームクリエイター志望。シナリオ担当。週に一度、創作活動の記事を投稿している(たまに休む)。

マガジン

  • 創作物の陳列棚

    短編小説、コミックエッセイなどです。「この人、普段どんなの作っとるんだ?」と思われたら、是非覗いていってください。

最近の記事

短編小説「グッドラック」

ガソリンの準備はできている。 ライターは、さっきコンビニで買った。 包丁は、三徳と刺身用が一本ずつ。念のため、ハサミとカミソリも家から持ってきた。どっちも、糊やら髭やらがこびりついて、刃はギトギトだ。だが柔らかいものを切るくらい、造作もないだろう。俺の首の皮さえ切れれば、それでいいのだ。 駅の改札を通る時は、さすがに緊張した。駅員に気づかれたらご破算だ。ホームでのんきに電車を待つ、サラリーマンやおばさん、女子高生たちも、みんな自分のスマホの画面に釘付けになっている。俺のこと

    • 魂を削って作品を作る・後編

      画像生成AIの登場で、イラストレーター志望だった相棒は、すっかり未来を悲観するようになってしまった。 相棒が尊敬するプロのイラストレーターの作品が、とうとう画像生成AIに学習されたらしい。ネットに模造品が出回り始めたのだ。 そのアーティストが、長い年月と努力の末に生み出した、特有の美しい画風なのに、簡単に学習されて量産されてしまう。 こんなことが起きていると、のびのびと創作することができず、不安でいっぱいになってしまうものだろう。 それなのに、SNSでは理解を得られない。

      • 魂を削って作品を作る・前編

        私は今まで、さまざまなジャンルの文芸に挑戦してきた。 中でも、ものすごい力の入れ具合だった作品がある。 生き急いでいる少年を主人公とする、ライトノベルだった。 作品制作にあたり、数ヶ月間、図書館に通い詰めた。 あれこれ資料を渉猟した。分厚い本も臆せず読み、必要なら大型の本でも、リュックに入れて借りて帰って読んだ。 たった一語を調べるために、英和、和英、英英辞典を何度も行ったり来たりした。異常なまでの言葉へのこだわりがあり、納得できるまで調べた。 書き留めた情報は、キャンパス

        • パンを買うお金で物語を買ったら

          私が二十歳くらいの頃、身の回りの友人ったちは、誰も小説の価値を知らなかったように思う。 ライトノベルや純文学を書いたことのある人は、ちらほらいた。 だが、たいていは「副業にしたくて書いてます」という人や、作品を読んでみても理解できないのに、相手が文学賞を取ったとわかった途端に、その作品を褒める人などだった。 高い志を持っていたり、純粋に楽しもうと望んだりして書いているは、およそ見当たらなかった。お金や名誉のために書いている人ばかり目についた。 今は、小説を気軽に発表できるプ

        短編小説「グッドラック」

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        • 創作物の陳列棚
          7本

        記事

          最近なにか書いてる?

          年配の男性の同僚に、世間話をしていたついでに「最近、何か小説書いてる?」と訊かれた。 彼には、私がnoteに投稿した短編小説「グズの男」を、投稿前に読んでもらったことがあった。 私は「どこか気になるところ、あります?」と、小説を読んでもらった折に、その男性に聞いた。 彼は、「どこかあった気がするけど……」と言いながら、慣れていないふうに、パソコンの画面をスクロールしていた。 結局、気になるところというのは思い出してもらうことはできなかった。 私は今一度、自分で推敲し、投稿ボ

          最近なにか書いてる?

          夢も希望もなくても次はある

          私と相棒の間には、共通の友人が数人いる。 その中に、一時期一緒にゲームを作ろうと、サークルを結成した人物がいる。 去年のことだったか、いろいろな理由で、そのゲーム制作のサークルを解散した。 その後、その人がどうしているか、私は相棒に尋ねた。 すると相棒は「あいつはダメです」と呆れたふうに返してきた。 その人は、まだ二十代の若者だった。誰が見ても、人生はこれからと言えた。いろいろなことに挑戦できるし、まだまだ経験を積んだ方がいい年齢でもある。頭もいいし知識もあるという話だった

          夢も希望もなくても次はある

          「最愛カスタマイズ」第3話

          シーン1 住宅街(夕) 閑静な住宅地のただなか、一人で家路をたどる、無表情の最愛。 その後を追う不審者。正体は、春日ソフトウェアの社員で、戦闘アプリの開発担当者の間渕。 間渕「最愛ちゃん」 話しかけられ、振り返る最愛。 最愛「間渕さん」 黒っぽい服装の間渕が、やや離れたところに立っている。穏やかな微笑を浮かべている。 間渕「久しぶり」 最愛「どうしたんですか?」 間渕「社長からのお達しでね。君から、戦闘アプリの入ったガジェットを回収してほしいって。急ぎだそうだから

          「最愛カスタマイズ」第3話

          「最愛カスタマイズ」第2話

          シーン1 春日家(夕) 四月下旬の某日。 最愛の父親・小太郎が帰宅する。春日家のリビングのドアを開け、小太郎がスーツ姿でバッグを提げて現れる。 小太郎「ただいまー……」 ドアを後ろ手に閉める小太郎の前に、立ちはだかる人影。 部屋着姿の最愛が、いきなり小太郎の正面から、片手をついて凄む。 最愛「パパ、私に言うことあるよね?」 小太郎「えっ? えっ? なに怒ってるの?」 バッグを抱きしめて、徐々に腰を落とす小太郎。 暗い笑顔を浮かべて迫る最愛。 最愛「パパの戦闘アプリ

          「最愛カスタマイズ」第2話

          「最愛カスタマイズ」第1話

          《本編》 シーン1 私立古手川学院高校一年一組の教室(昼) 四月中旬、某日。 机についている最愛の手元。数本のドライバーを駆使し、ガジェットの蓋を開けて、調整をしている。 最愛M(モノローグ)『カスタマイズは、私の人生で最も大事なこと。ずっと愛せるものに囲まれていたいから』 完成したガジェットを掲げて、席を立ちあがる最愛。 最愛「できたー!」 静まり返る教室。黒板には「研究発表」の文字。 黒板消しを片手に、発表中だった菊正が、教壇に立ち尽くしている。 恩田先生や生

          「最愛カスタマイズ」第1話

          嫌われる主人公は猫を助けよ

          私は文章を書くことが好きだ。 しかし、いまだにどんなジャンルが向いているか模索している。 小説や童話、ゲームシナリオなど、さまざまな創作に挑戦し、自分の適性を探ってきた。 シナリオの書き方に限ってみると、映画だのゲームだの、いろいろな媒体の本が、本棚に取り揃えられている。ハリウッド脚本術の本だけでも、三巻まで揃っている。 結果は出せていないものの、我ながら足掻いてきたのだなぁと感慨深くなるものだ。 私は、本を一読しただけでは、内容をすぐに理解することができない。 おそらく生

          嫌われる主人公は猫を助けよ

          この世で最もピュアな承認欲求

          承認欲求との付き合い方は、未熟で自信のない創作者にとって、大きな課題なのではないだろうか。 社会に出ると否が応でも、自尊心をズタズタにされる出来事に見舞われる。そうなると、もう自分のことが好きではいられない。自己嫌悪がむくむくと湧いてきて、さいなまれる。 私も承認欲求にたびたび振り回されている一人だ。 自分はこういうものが好き。こんなものを作りたい。そういった自分の好みのジャンルや方向性を、明確に自覚している。 しかし、それが世の中のトレンドとかけ離れていたら、ダメかもしれ

          この世で最もピュアな承認欲求

          鳥山明に感動して体調を崩す

          私の相棒は、良質な作品に触れると、必ず体調を崩す。 最初にその現場を目撃したのは、アニメーターでありイラストレーターの米山舞さんの作品集「EYE」を書店で手に取った時だった。 あまりにも画力と表現力が高く、作品は美しくて自然。デジタルイラストでありながら、アナログな趣向もあり、親近感を覚える。そして高度なデフォルメの技術には、サブカルの可能性を思わずにはいられなかった。 相棒はすっかり打ちのめされた。情緒不安定になり、家に帰るのもやっと。翌日も寝込んで、仕事を休んでしまう

          鳥山明に感動して体調を崩す

          AI対策でバスキアに助太刀を頼んだ

          あてどなく、アート関連の動画をあさっている。 イラストレーター志望の相棒が、画像生成AIの台頭によって、自分の積み上げてきた知識や技術が水泡に帰すのではと、苦悩することが増えた。 SNSでは、他のイラストレーターの作品が、勝手にAIに学習され、イラストレーターが創作者生命を絶たれるようなことが横行していると耳にする。 もし相棒の作品も、悪意のある人に盗まれてAIに学習されたり、創作者生命を絶たれたりするようなことが起きたら、私も平静ではいられない。 なんとか活路を見いだすこ

          AI対策でバスキアに助太刀を頼んだ

          君の意見は聞いてませんという出来事

          若い頃は特に、職場の上司に「君の意見は聞いてませんよ」という態度を取られることが多かった。 十九歳の時、一年間、事務のアルバイトをしていた。 当時、係長のもとに、六十代くらいの男性が、しばしばお客さんとして顔を出していた。 その日も男性はやって来て、立ったまま係長と何かを話していた。 どういう経緯だったのかは覚えていないが、「グスベリ」って何だろう、という話題になった。 「グスベリ」というのは「グーズベリー」の通称である。 ジーニアス英和大辞典によるとgooseberryと

          君の意見は聞いてませんという出来事

          創作者クラスチェンジ!

          創作を円滑にするための型を、いろいろと試したり、使いやすく微調整したりしている。 例えば、物語を作る上で「起承転結」という型がある。 これを「起承転転」にして、「結」を読者に意識させないくらい、あっさり控えめにした方が収まりがいい、とか。 そういう型の試行錯誤をしている。 前は、こういう理論を、自分の創作に適用することをしなかった。 書きたいものを、書きたいように書いていた。 他者の創作論などを読むと、「自分の書きたいものを書くのではなく、読みたいものを書きなさい」という

          創作者クラスチェンジ!

          魔王ホロロギと鼻の孔のデカい勇者

          作家が小説を書くにあたって、最初にテーマを決める。 その後、どういう表現をするかを考える。ストーリーやキャラクター、結末などを決めていく。 角田光代さんや辻村深月さんといったプロ作家のインタビューを拝見すると、それぞれ決まった創作のプロセスがあるようだ。 いくつか創作論の本を読んだところ、ドラマが生まれるのは多くの場合、誰かと誰かが対立した時だ。 いや、対立とまでいかなくてもいい。ただ一緒に行動するだけでも、互いに影響し合い、ドラマが生まれる。 人間関係というものは、軋轢も

          魔王ホロロギと鼻の孔のデカい勇者