短編小説「大卒ぼんくら」
最後に、彼女は言った。
「あなたは、きっと何言われても、わかんないよ」
顔はこちらを向いているのに、まともに目を合わせともしない。
うんざりしたような表情を背けて、玄関のドアノブをひねる。
その華奢な背中に、俺の影が必死にすがりついている。
だけど彼女はひとりで玄関を出る。まばゆい白日が、彼女を迎え入れるように陽射しを下ろしている。
そんな光景も束の間。容赦なく閉められたドアが、俺の鼓膜をびくっと震わせた。
ベッドにぐったり横たわったまま、ずぅっと天井を眺めていた。
他にで