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枯葉

暑さが過ぎ去り訪れた秋。

秋の気配が静かに何かを包み込んでいく。

日中は若干の暑さを残す。

朝晩は少し肌寒く感じるほどに。

その塩梅は程良いものだ。

穏やかそのもの。

空を見ると散り散りになってしまった雲達が、頼りなく浮かんでいる。

空気は澄み切っている。

外の明るさのニュアンスは柔らかく、緩やかだ。

「寒露」

露が冷たく感じられるころのこと。

夜空に凛と月が輝く時期でもある。

これから冬至にむけてどんどんと日は短くなっていく。

「釣瓶落とし」

秋の深まりとともに、日の傾きが何かに急き立てられるかのように短くなる。

その日の沈む様子を、井戸から水を汲み上げる滑車を使った桶(釣瓶)に例えて表した言葉。

何かに急き立てられるかのようにして季節が進んでいく…。

日が沈む様子に合わせるかのごとく、寒さも増していく。

やがて訪れる冬。

この穏やかさの先には枯れた浸潤の季節が待っている。

寒さが景観に浸透していく時間。

その深まりは人の心に一種の寂しさのようなものを与える。

色付く木々の葉っぱや、遠くにそびえる山々達。

その色付きはやがて「枯葉」となり散っていく。

その時はもう少し先の話だが…。

人生を言い表わすような四季の移ろい。

木の葉は無言で人の一生を代弁する。

そして人の心さえも。

枯葉が舞うころに冬が訪れる。

あの熟した黄金色の葉っぱたちが散っていく時

一種の孤独を感じ

侘しく寂しくなるのかもしれない。

ただ、それは熟れきったからこそ訪れる、成熟した感情なのかもしれない。

季節の移ろいとともに描かれる人の寂寥感。


When  autumn leaves start to fall
Yes I miss you most of all my darling 
When autumn leaves start to fall

AUTUMN LEAVES
歌詞一部

落ち葉を見つめていると
思うは君のことばかり
枯葉が舞いはじめた今

「クラプトン」ライナーノーツ
和訳参照

エリック・クラプトンが、ソロ40周年に発表した作品「クラプトン」に収録されたラストナンバー。

ジャズのスタンダードをクラプトン流にカバーしている。

年を重ねた人間にしか出せない渋みや柔らかさ。

歌う声には人生が過ぎ去っていく、一種の深みのようなものを感じる。

その深みは在りし日の心情を描き出す。

静かに、淡々と。

かつての恋人が去り、枯葉の季節の寂寥感が胸をしめつける。

その物悲しさは枯葉が舞う様子と共鳴するかのように、侘しく曲が進行していく。

「思うは君のことばかり」

クラプトンが弾くギターのビブラートが感情の揺らぎを呼び起こし

丹念に引き継がれてゆくフレーズが感情に浸透していく。

悲しくもあり、心に宿る孤独さを枯葉に映す…。

渋く、成熟した「枯葉」。

枯葉の季節にはちと早いが、深まっていく秋の気配とともに「AUTUMN LEAVES」は全てを投影していくだろう。

これからの季節にじっくりと味わいたいナンバーだ。





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