米国決済サービス大手StripeCOOに習って、創業メンバー取扱説明書を作った話
株式会社shizaiの油谷です。
本日は創業フェーズである私達shizaiが組織として取り組んでいる唯一の組織施策「創業メンバーの取扱説明書」がとっても良かったので、取組の内容をお伝えすべく、久しぶりにnoteを書いてみました。
# 簡単に自己紹介
私は新卒で入社した会社(インテリジェンス)で法人営業責任者を経験したのち、Azitというスタートアップ企業で人事責任者をしておりまして、数名規模から100名以上になっていく組織作り全般を担当しておりました。そのためこれまで規模が大きくなる段階での組織や採用のtipsをnoteを書くことが多かったのですが、現在は株式会社shizaiを代表鈴木とともに共同創業しましたので、組織を0から作っていく創業者の立場でnoteを書いています。
創業メンバーの採用もシード期の組織作りの経験は初めてで、手探りですので、これまでの組織づくりの経験を一旦、アンラーニングし(いつでも取り出せるように引き出しに置いておいて)、シード期に導入すべき最もレバレッジが効く組織施策を考えた結果、「創業メンバーの取扱説明書」を作ることに至りましたので、その背景や内容を公開してきます。
事業を立ち上げていく段階における組織づくりの考え方の一つとして参考になれば嬉しいです。
目次
1.前提の状況
2.なぜ創業メンバーの取扱説明書を作ることにしたのか
3.創業メンバー取扱説明書に期待する効能
4.どのように取り組んだのか
5.取扱説明書を導入してみた結果
1.前提の状況
私達、株式会社shizaiは2020年10月に創業しまして、2021年4月にプロダクトローンチ及び.資金調達のリリースを出させていただきました。
「テクノロジーと人の最適再配分により日本の巨大産業を再構築する」というミッションを掲げて、ミッション達成にむけた入り口として、EC/D2C事業者向けの梱包資材のプラットフォーム事業を運営しております。
創業時は代表の鈴木と私、2名でスタートし、2021年3月〜5月で合計5名のフルコミットメンバーの採用が決定し、創業フェーズのメンバーが集まりつつある段階です。(もちろんまだまだ採用はしていきますよ!)
創業フェーズで参画してくれているメンバーは、UI/UXデザイナー、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニア、Bizdev、PMMとなっており、それぞれのメンバーが各領域で活躍しています。
2.なぜ創業メンバーの取扱説明書を作ることにしたのか
創業期に取り組むべき組織施策は多くない
Nyleの高橋さんのTweet(いつも勝手に参考にしています・・!)でもまさに書いてあることですが、シードフェーズは組織に対して多くのルールや仕組み、施策を重ねることが良い打ち手ではないと考えており、
創業メンバー全員が東西南北を自分の全責任で持って向き合い、圧倒的な連携で事業を前に進ませつづけることが必要だと考えています。
すなわちチームレベルでのエグゼキューションの品質を高めることこそが最重要だと思っており、組織施策に期待する一番の効能は「意思疎通を円滑にする実践的な相互理解」だと考えました。そのフレームワークとして創業メンバーの創業説明書施策を活用しました。
"google初期のシニア・バイスプレジデントだったウルス・ホーズルは、
「ウルスの取扱説明書」という彼と仕事をする最適なアプローチ方法、コミュニケーション手段を説明する資料を作りました。何をするべきかが明確になり、一緒に働く人たちは仕事がしやすくなりました"
※引用元:爆速成長マネジメントより
という記述が「爆速成長マネジメント」という本に記載されております。
(凄まじいほどの良書でバイブル化して持ち歩いてます。)
また、それを受けて 米決済サービス大手StripeのCOOであるクレア・ヒューズ・ジョンソンも
最善手であり、誰もが作るべきだと思います。
と話しており、偉大な企業のCOOが最善手という施策なのであれば、実践してみようと思ったのもきっかけです。(偉大なスタートアップの先人が最善手って言うんだから絶対やったほうが良いじゃんという発想です。最善手って言うんだもん!)
※ALL STAR SAAS FUNDの前田ヒロさんの記事にも記述がございました。
クレアの原文も記載されています。
3.創業メンバー取扱説明書に期待する効能
前提
米決済サービス大手のStripeCOOのクレア・ヒューズ・ジョンソンは創業フェーズに大事なこととして、チームの仕事を円滑にするため、創業メンバーそれぞれが自身の取扱説明書を作ることを最善手と話している。
期待する効能①:実践的な相互理解
創業メンバーが自身の取扱説明書を直接仕事をする仲間に共有することと、誰でも見れるように公開することで、
- 誰がどんな領域に興味を持っているのか
- 好ましいコミュニケーションはなにか
- どんなことを求めているのか
- 常に情報を得ておきたい業務領域はどこか
などの情報がわかり、仕事がしやすくなることが期待されます。
期待する効能②:カルチャーの言語化
- ゆくゆく会社のカルチャーの礎になることを早めに言語化することにもつながる。
- 今後入社する社員へのオンボーディングの一要素(相互理解を早めること)として効果を期待する。
中長期の言語化を助ける礎としても期待できます。
という形で期待する効能を整理し、シードフェーズの今こそ実践すべきと考え、GWの宿題として、創業チーム全員で取り組むことにしました。
4.どのように取り組んだのか
4-1.章立て
爆速成長マネジメントに記載されているクレアの取扱説明書の全文は一部経営と執行が分かれて以降のことや、MGRをマネジメントする前提で書かれている内容があるので、経営と執行やマネジメントとプレイヤーが明確に分かれていないshizaiのフェーズでは一部修正を行って章立てする必要があると考え、
1.「ワークスタイル」
2.「コミュニケーションスタイル」
3.「1年スパンで得たいこと」
で、各創業メンバーに自由記述での記載を依頼し、1週間の納期で、全員の取扱説明書を記載してもらい、事前に読んでもらった上、GWの全社ロングMTGの時間を一部を活用して、1時間ほどでシェアを行いました。
4-2.取扱説明書に記載されていること
ドキュメントの公開はnotionで行い、各メンバーの取扱説明書を上述の章立てに従って、記載してもらいます。
その中でどんな事が書かれているかはすべては公開できないのですが(私のは全文公開できるので気になる方は言ってください!wいないか!w)、創業それぞれメンバーのそれぞれの創業説明書抜粋してみます。
1.「ワークスタイル」
創業メンバーA:洗練されたオペレーションが好き
- 磨かれたオペレーションを好みます。仕組み化や習慣化が大好きです。
- 本来オペレーションは、分散した情報やアクションを抽象化し、あらゆるケースにあてても適合する強度をつくり、誰がやっても同じようなアウトプットになるような標準化をするという類のものと捉えています。
創業メンバーB:ユーザーの喜びを感じることが好き
- 困っていることを解決することが好きである。顧客の課題解決がなされた瞬間はとても幸せ
- フィジカルに解決することは得意なので、同時にスケーラブルでははない解決法にならないように気をつける必要もあると考えている。
創業メンバーC:プロダクトに対する考え方
良いプロダクトは、仕様・デザイン・フロント・バックエンド・オペレーションが境目なく連動した時にしか生まれないと思っています。そのため、常にプロダクトを取り巻く情報を知りたいと思っています。僕が面倒な質問をする時はなぜそうなっているのかを単純に知りたいだけです。
2.「コミュニケーションスタイル」
創業メンバーB:メンションに関して
- 自分はメンションを何時受け取っても別に気にしないが、周りには気を使ってしまう。(夜とか休みとか)なので、特に気にしなくても良いとわかれば問題ない。
創業メンバーD:依頼の背景や意図やニュアンスを把握したい
- Slackとかでのコミュニケーションでは、細かい情報を確認したくいろいろ聞き返しちゃいます
- 場合によっては会話をしたいです
- テキストでのコミュニケーションには限界があると思っています
創業メンバーE:フィードバックについて
ホントに歓迎。フィードバックに反論したことは無い。とは言え暫くして改善が見られなかったらお手数だが1度は改善されていないことを伝えてほしい。具体的にクリティカルになる可能性がありそうな「こいつマウントを取ってくるなー」「このまま放っておくと間違った方向に突っ走りそうだなー」「ごちゃごちゃうるさい」の3種類に関しては、軽微にでも感じた瞬間に即フィードバックしていただけると嬉しい。
3.「1年スパンで得たいこと」
創業メンバーF:魅力的な人材になりたい
経営資源となる優秀な人材の採用ができるようになりたい。
圧倒的な成果につながる大きなアライアンスを生み出したい。
このような形で、各メンバーに自由に記述をしてもらい、みんなでそれぞれの取扱説明書を作り上げます。前提として、今後変わっていくものでもあるので、書き足しや変更は自由です。
また上記の内容の補足を1時間のMTGで行いました。
5.取扱説明書を導入してみた結果
1.短い時間で相互理解によるチームパフォーマンスの向上が期待できた
相互理解で1泊2日の合宿をするなどの施策に時間を割くことができないかつ、コロナの影響もあり、物理的なコミュニケーションが減る可能性がある中で、個人ワーク+共有1時間で相互理解を圧倒的に実現することができました。
2.相互理解の向上により、組織の生産性の向上ができた。
その後の仕事をする中で創業メンバー同士の考え方、価値観、強み弱みが明らかになり、どのようなパスを出せば最高の仕事をしてくれるのかお互いにわかった状態で仕事ができ、ストレスなく、進めることができています。
「トリセツに書いてあったからこんな形で依頼するね」
という会話が自然と出てきています。
もちろん本当の結果はまだ出ていないのですが、創業フェーズに取り組む組織施策としてはクレアの言う通り、最善手だった気がしています。
またこれからshizaiに入社される未来のメンバーにもシェアして、オンボーディングの要素として重要な相互理解を促進していきたいと思っています。
というnoteを書いていたら、出資いただいているANRIのアンリさんのツイートにもトリセツが!トリセツとっても大事ですね。
長くつたないnoteでしたが、読んで頂きありがとうございました!
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https://twitter.com/ABU_mj