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Lessons no.37「教育と社会①」

こんにちは、「だんすまん」です。

既にある原稿から、note用に編集した書籍の一部を載せます。
タイトルに番号を振って、小見出し毎に載せています。
予定投稿数を数えてはいませんが、おそらく
100回くらい切り分けて投稿することになりそうです。

「あなたが社会に届く」少し長いツアーへようこそ

教育の「弱点」を取り上げる

私自身は、教育課程における教師ではないことから、
現場における子供の学力や心理面のケアに携わったことはありません。

同様の方が大半を占める中で、教育論をぶつけることに
ためらいを覚えますが、ここでは、理想とするものを
掲げるアプローチではなく、少し引用を挟みながら、
今の社会における既に長期間にわたってシステム化されている

教育の弱点を見つめたいと思います。

教育というテーマは、切り取り方が様々であり、
現場で奮闘されている方々の苦労と歯がゆさに、
私の私見を挟む余地は多くはありません。

ただ、私が案じているのは、その苦労と奮闘が社会の中で
急速に役割を失うまでに行かなくても、
機能を果たさなくなる可能性があることです。
現場の方々の苦労と奮闘に意味を見出すために、
いくつかの視点を展開するという趣旨であることをお伝えします。

切り口は3つ、その違い

①「モデル無き社会」における教育の方向性
②「日本3.0」における時代に合った人づくり
③ 公教育が持つ弱点を克服するリスト

上に取り上げた3つの視点のうちのひとつ目では、
no.07「2017年に共有された危機感」にガイドした
経済産業省上梓の「不安な個人 立ちすくむ国家」において、
貧困と格差の固定等によって個人の選択が歪められている
「モデル無き社会」と呼ばれる社会の液状化
起こっていることが共有されたことに触れました。

共有されたレポートでは、私たちが取りたい方向性として

『子供や教育の行ける投資を財政における最優先課題に』

という方向性を掲げています。スライドを転載し、中身を確認します。

ふたつ目については、ソーシャル経済メディア「News Picks」
編集長(当時、2020年4月編集長退任)佐々木紀彦氏が2017年にまとめた
「日本3.0 2020年の人生戦略」(幻冬舎,2017年)の一項にある
教育の方向性を掲載して、若干補足をしつつ、
時代に合った人づくりの確認をします。

みっつ目については、「思考は現実化する」で著名な成功哲学者の
第一人者ナポレオン・ヒル博士が1938年に作成し、
1970年に亡くなった後も含め72年もの間、
書籍化されてこなかったと言われる原稿を訳した
「悪魔を出し抜け!」(きこ書房, 2013年)にある
「公教育が持つ弱点を克服するリスト」を引用紹介します。

複数の視点を一つに乗せる理由は、犠牲者が誕生し、
量産されている原因は「今の教育」であるが、
犠牲者の価値を解放することができるのは

「未来の教育」だと見出しているからです。

成長投資を通して、人生のデザインにつなげる視点

まず、最初から取り上げている経産省上梓の
「不安な個人 立ちすくむ国家」から確認していきます。

①「モデル無き社会」における教育の方向性

「不安な個人 立ちすくむ国家」では、一通り課題点を展開した後、
では私たちはどうすれば良いかと舵が切られます。

(1)一律に年齢で「高齢者=弱者」とみなす社会保障をやめ、
 働ける限り貢献する社会へ
(2)子どもや教育への投資を財政における最優先課題に
(3)「公」の課題を全て官が担うのではなく、
 意欲と能力ある個人が担い手に(公共事業・サイバー空間対策など)

この3つの提案を実行することで、個人の帰属・つながりを回復し、
不確実でも明るい未来を実現したいと書き込まれています。

不安な個人 提案スライド

これらを子供へのケアや教育を社会に対する「成長投資」として捉え、
下に掲げたような提案を実現する段階としています。

・教育バウチャー ・こども保険
・海外留学奨学金 ・就学前義務教育化

子どもへのケア・教育投資の充実によって、子どもたちが
自ら人生を選択しデザインし、不確実な状況においても
子どもたちが抱く不安を克服し、
明るい未来につながっていくことを期待していますが、

(教育)投資 = 一人ひとりの人生のデザイン

という方程式は、教育そのものの目標・理念が曖昧であることからも、
教育への提言として印象が弱く、一人ひとりを取り巻く
不安や不満として挙げられている
「早すぎる変化」「あふれる情報」「変わらない仕組み」「見えない将来」
に対して、直接手を掛けない限り、

「投資先が違う」のではないかと見立てています。

先に掲げられているいくつかの制度の実現を図ることが、
不安と不満に対するケアであることを説明はしていません。
加えて「教育が社会にどう貢献するか」という視点もないため、
残念ながらこの経産省の提言には、創りたい教育像はありません。

来てしまった時代、その人づくりの方向性

一方、「日本3.0」に書かれている「時代に合った人づくり」では、
時代の変遷について触れていることから、
未来の教育の方向性が、より明確になっています。

②「日本3.0」における時代に合った人づくり

2017年1月にNews Picksから発刊された「日本3.0」(発行:幻冬舎)では、
2020年前後から、日本近代の新しいフェーズとして

「日本3.0」が始まると書かれています。

明治維新、敗戦に続く「第3の革命」が到来し、
下剋上と人材の大移動が起こるという未来予測が、
2020年初頭からの感染症の大流行によって
スタートを切ったともいえるかもしれません。

著作にある予測を一つ一つ検証することも良いのですが、
ここでは「教育」に絞ってポイントを列挙することにします。

といっても、著作中の「日本3.0と教育」という項目は60ページもの
ボリュームがあるので、そのまま転記をするわけにも行きませんが、
項目冒頭にまとめられている課題提起と、
論旨を要約した10のポイントを欄内に引用掲載します。

「日本3.0」第5章 日本3.0と教育 要旨

課題提起
日本の教育は「日本2.0」時代から脱皮できていない。
初等・中等教育は復活しているが、大学は世界から
完全に置いて行かれている。

大学教育、とくに教養教育の復活なくして、
「日本3.0」時代に合った人づくりはできない。
今の日本に必要なのは、ハーバード、スタンフォードなど
正解最先端の教育と日本古来の教育の融合だ。

本章の10のポイント

1.日本の高校までの教育はトップレベル。
 2020年の改革でさらに進化する。
2.日本の教育のガンは大学である。
 東大もついにアジアトップの座を失った。
3.「日本3.0」時代の大学教育のカギは、教養教育。
 日米エリートの差も教養にある。
4.まず学ぶべきモデルは、ハーバード、スタンフォード等の
 一流大学の教育。
5.教養を高めるには、「知の千本ノック」が不可欠。
 徹底的に読み、書き、話す。
6.ハーバードの最新の教養教育。
 3本柱は「外国語」「説明文」「8つの一般教養」
7.スタンフォードが目指すのは「T字型人間」。
 哲学、文学、生物学、ITまでを網羅。
8.明治の志士は、西洋と東洋の智恵を兼ね備えた
 ワールドクラスの教養人だった。
9.西郷隆盛、大久保利通、東郷平八郎を生んだ、
 薩摩の郷中教育にヒントがある。
10.「日本3.0」の教育が目指すべきは、
 世界最先端の教育と日本古来の教育の融合。

私は、ここに書き込まれている詳細な理論武装をそのまま
受け売りをしてお届けすることを意図しているわけではありません。

提言に終わる立場と変化を担う立場

最初に取り上げた「不安な個人 立ちすくむ国家」の課題提起と、
「日本3.0」のそれとは全く異なります。前者は、近年の各種統計に現れた
社会構造のひずみに対する危機感を共有したに留まり、後者は、
近代150年が到来するなかで、複合的に引き起こされる
社会変動に対して、社会のシステムが根底から変わり、
人員配置がすっかり変わることを示すものです。

2017年春に著作を購入しましたが、2020年4月に改めて見直してみると、
未曾有の感染症まん延による社会変動の渦中にある時期に
示唆に富む内容が書かれているとは思います。

教育についても、大学教育が世界の比較の中で、
教養人の排出に成功していないことについて、
世界のロールモデルを取り入れるとともに、
日本独自の体系も融合するといった方向性を挙げています。

私との相違点を挙げるとすれば、ここで私が展開しようと挑む
「一人ひとりに備わる価値の解放」アプローチとは異なり、
今後の社会変動の中で今までチャレンジしなかった人に
奮起を促すアプローチをとっているところです。

予測し、提唱する役割を担う「ニュースメディア」と、
プロセスを創造し、犠牲者がそのプロセスを経由すると
犠牲から解き放たれるといった

「変化を担うメディア」とは役割が違うことを確認します。

次回は、「③公教育が持つ弱点を克服するリスト」をガイドします。
最近書かれた「日本3.0」と異なり、1938年という
約80年前に既に指摘された「公教育の弱点」について取り上げます。


筆者から補足

ここまで、ご覧いただきありがとうございます。
次は、no.38「教育と社会②」
という小見出しを掲載します。

参考リンク:ここに触れたNewsPicksでは、
現在下のサービスを行っています。
NewsPicks アカデミア

知を補充したい方にとっては好奇心を満たすかもしれませんが
筆者は、知を満たすことを目的とするわけではなく
共に変化を担う方に出会いたいと思っています。

全文について

no.07から毎回貼り付けることにしました。
目次を見て興味あるところからご覧ください。
よろしくお願いいたします。


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