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城平フリーク兼螺旋ファンが読む「ソードマスターの犯罪」
希代のヒットメーカー城平京氏の代表作にしてキャリア初期の傑作、それが「スパイラル~推理の絆~」である。
1999年~2005年連載ながら2020年に20周年記念コラボカフェ、21・23年オンラインくじ、来月には25周年記念ミュージアムが控えるリメイクアニメ化フラグ立ちまくり&作画の水野英多氏直々毎年キャラクターの誕生日に新規絵を描き下ろしてくれる(なんと贅沢な!)作者読者双方から愛されまくりな本作。
本記事は「螺旋ファンは読んどいて損はない」との呼び声高い原作者自ら書き下ろしたノベライズについて熱く語っていこうじゃないか!といった趣旨でお届けする正確にはただの感想垂れ流し備忘録です。まぁ、有意義な暇つぶしにでもなったら幸いです。では、さっそく参りましょう。まずは表題作となっているコチラ
ソードマスターの犯罪
実はこれには制作秘話がありまして、当時ソードマスター執筆と同時進行で本誌では理緒編、WEBでは外伝くるみ、ガンガンWINGに向けてアライヴ第1話を仕上げるという超過密スケジュールをかせられていた。その上理緒編再戦プロット全ボツ食らうわ、38度以上の熱は出るわ、薬の副作用でぶったおれるわ、二度と味わいたくない修羅場の中完成した代物なんだとか。
しかし、そのような土壇場から限界突破しないと辿り着けない境地は存在すると思っていて、理緒編やソードマスターがまさにソレである。いや~自身はあまり手応えを感じないものほど評判が良かったり、崖っぷちからしか傑出した作品は生まれなかったり…まったくクリエイターは辛いぜ。おっと、このままだとどんどん脱線していきそうなので、ここらであらすじへ移ろう。
新聞部部室にて歩とひよのは、一人の少女から兄の仇を討つために力を貸してほしいと懇願される。そして、歩は過去の殺人事件をめぐり剣の達人・黒峰キリコと対決することに…。『少年ガンガン』連載コミックのノベライズ。
時系列でいうと本編8~9話あたり。この頃のまだ悟りを開いてない等身大の歩好きだわ~。ひよののペースに呑まれ引くに引けない状況に追い込まれる展開たまらん。プラトニック成分多めなのも最高。
基本的に学園生徒に依頼されるスタイルなので、貴重な学園生活が垣間見えるのがノベライズでしか味わえない醍醐味の一つ。特にガイドツアーさながらの校内暇つぶし巡りは、その都度挟まれる説明文を読めば読むほど月臣学園は世を忍ぶ仮の姿なのは知ってたけどその規格外度がハンパなすぎて変な笑いがこみ上げてしまう。
ミステリ面は、序盤の段階で「誰かを庇ってるオチで真犯人は別にいるんやろな~」と予想はついてたので真相でびっくり仰天はしなかった。逆に私の立てた仮説に比べたらよほど平和で安心した(笑)
こういう相手の矜持を保つ、又は義を重んじる精神…侠客魂とでも言いましょうか、会得すればどんなジャンルにも応用が利き色褪せない物語を創りだせる(単に好みの問題かもしれないが)物語を創る上での必須科目だと痛感しますね。要は古典も捨てたもんじゃないってことよ。
毎度のことながら歩の巧みな心理術には舌を巻く。徹底したプロファイリング、ここぞという場面ではったりをかまし、自身の推論へ相手を誘導している節さえある。城平作品ほど会話の切り返しが面白いのもそうそうないんですわ。もはや推理やトリックはおまけで、腹の探り合いを見たくて読んでるまである。
ところで、風の便りによるとノベライズは歩がヒロインを落としていく話と聞いていたが、ひよのが嫉妬こそすれ緋芽子は落ちてはいないような…( ゚д゚)ハッ! キリコがヒロイン枠か!
外伝 名探偵 鳴海清隆 ~小日向くるみの挑戦~
次期総裁の椅子と恋愛の自由を守るべく奮闘するくるみと共に犯人を当てようという問題・解答編に分かれた本格ミステリ+まどかおねーさんとの馴れ初め物語(いや待てよ、実は既に付き合っていて殴る蹴るはイチャラブスキンシップの可能性も…)を楽しめる一粒で二度おいしい連作短編集。
にしても、くるみお嬢様の心の声もとい地文が、これまた歩とは違うベクトルでキレッキレなの草。このウィットに富んだ地文や台詞回しを堪能できるのは活字だからこそよなぁ。
本編既読勢が外伝を読むと、必ずと言っていいほど驚く清隆のブっ飛び具合はアライヴでの着ぐるみ姿を知っている身からすると、これでもまだまともに思えてくる。
また、本短編は早々に変更せざるを得なかった本格ミステリ路線の雪辱を果たすというか原点回帰な側面もあるだろうが、ぶっちゃけ本編で思ったように活躍されられない推しを摂取したいがために書いている風に思えてならんのは私だけだろうか…(笑)
怪奇クラゲ二重奏
クラゲ伝説にあやかりたいと言う心の弱みに付け込んだ犯行の凶器に利用されるクラゲが只々不憫。しっかしゾルゲがゾルダに空目したり、ゾルと読んだらゾルディックが先に脳内変換されてしまったり読むのに少々苦労した。
ワンダフル・ハート
個人的にはそこまで報われない話だとは思わなかった。想いや願いなど形のないものを繋ぐのは本編ラストに通ずるものでもあり城平ワールドの根幹でもある。ただ、想いや願いといった類はともすれば呪いにもなるわけでこの話は呪いの部類だよなぁ、と思ったり。
総評
まず驚いた点は推理小説って妙にこねくった文体で反芻しないと飲み込めないものが多いのに読みやすいこと。意図的かと思ったらやっぱりそうで、あとがきで述べている通り「推理小説やミステリ一般に特別興味のない人でも楽しく読めるもの」(ターゲット層が10代なんだから当然っちゃ当然だが)に仕上がっている。尚且つ、三大ダニット揃い踏みと正に本格ミステリ入門書に相応しい一冊。
そしてこの備忘録、ノベライズ全4巻コンプリートする予定ですゆえ、まだまだ続きます(笑)少しでも魅力が伝わったり、興味を持って頂けたら何よりです。最後までお読みいただきありがとうございました。それでは「鋼鉄番長の密室」でお会い出来ることを願って。ノシ