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勝又温史選手(キャンベラ/横浜DeNA)インタビュー

「ABLのベンチで味わった“次、頑張ろう”の
切り替えを胸に、日本一の外野陣に挑みます」


プロ野球選手としてのスタートは、投手だった勝又選手。一度は戦力外通告を受けながら、打撃力を生かして野手に転向、育成選手から昨オフ、再び支配下契約を勝ち取った。野手転向3年目の今オフ、ABL派遣に自ら手を挙げ、現地で学んだものは?


実戦だからこそできるチャレンジ


――これまで(横浜DeNA)球団からABLへの選手派遣については、どんなふうに見ていたのですか?

自分は環境が変わったところで、すぐに自分の力を発揮するのがとても苦手なので、どちらかというと日本で、自分の知っている場所で野球をしていたいという気持ちのほうが強かったんです。だから、海外で野球をしてみたいとは、あまり思っていませんでした。

――それが今季、自らABL派遣に手を挙げたのはなぜですか?

一軍に行ったら、自分の慣れているファームの環境ではなく、大きく環境が変わった中で、打席に立ってすぐに結果を残さなければなりません。その環境の変化に適応するための練習をしたいと思いました。言葉も通じない、知らない場所で野球をすることは、自分としては苦手な部分。そこに敢えてチャレンジしてみたい気持ちと、もう1つは、オフシーズンになると実戦の数が減りますが、実戦でまだ試しておきたいことがあったので、ABLはいい機会だと思いました。

――もちろんABLでもチームの勝利のために野球をするわけですが、日本にいるときよりは結果を気にせず、チャレンジできる部分もありますよね。

10月に宮崎のフェニックスリーグに行ったんですけども、そこはまさに結果より自分がチャレンジしたいことに取り組める場所ではありましたね。ABLはフェニックスに比べるとチームの成績も出ますし、皆が勝敗にこだわって試合をしている環境ではあるので、やはりチームのためにできるプレーを確実に行いながら、自分のチャレンジしたいことにもチャレンジするという形です。

――今のところ(取材は12月11日)、そのチャレンジはできていますか。

できています。打席の中で「目付け」(編集部注・打つ前にどこにポイントを合わせておくかという意識付け)ということをするのですが、目付けをどのコースにするとか、対戦するピッチャーのタイプによって目付けの場所を変えるとか、ここに目付けをしておけば、別のコースに来た球にも体が反応できるとか、そういったことをいろいろ試してみています。

――実際打席に立って、相手投手や捕手の組み立て、自分の打席の中での相手の反応など、いろいろなものを感じ取りながら行う作業なんでしょうね。

そうですね。打席の中でなくても、ベンチやネクストバッターズサークルから見ていても得られるものもあります。キャンベラは左バッターが少ないので、左の自分と同じ攻め方は少ないんですが、自分なりに他の打者の打席も見て勉強しています。あとはチームメイトの髙田(琢登選手)がピッチャーなので、「こういう場合、ピッチャーはどう考えるのかな?」とか、気になったところは髙田に聞くようにしています。

――試合が週末の4連戦しかないABLで、1週間の調整はどんなふうに工夫していますか?

ホームゲームでない場合は、練習日が3日間あるんですが、こちらの練習時間は結構短いんです。だからアーリーワークの時間を取って、そこで自分の体の疲れ具合によってフォームがどうなっているかなどをチェックしています。あとはグラウンドでのバッティング練習のとき、1日目に方向を決めて打ったら、2日目は反対の方向に打って、3日目は出力を出すための意識を持つなど、各日課題を持って練習しています。ほかに、練習前には必ずジムに行くとか。この環境の中でできる範囲の練習に取り組んでいます。

守備、走塁も堅実にこなした勝又選手
(photo: Baseball Australia)

優しくて陽気で、野球に対する意識も高い


――オーストラリア野球のレベルや特徴については、どんなふうに感じていますか?

日本と違って、打撃が主ですね。自分が思っていたよりも打撃、打撃、打撃なんだなと感じました。とにかく打ち勝つんだ、という。打撃のパワーやパンチ力も、日本では見たことがないようなものがあります。日本のように細かい野球ではない分、守備をしていても相手の隙が見えることが多いですし。ただ、野球に取り組む姿勢や意識の高さは非常に感じますね。

――そうした話を、チームメイトからも聞きましたか?

キャンベラでショートを守っているジョージ(・カリル選手)は日本語を話せるので、こちらの野球のことをいろいろ聞いています。あとは見ていて感じたんですが、こちらの人たちのバッティングは、「押す」要素が強いですね。その分、やはり力がないと打球も飛んでいかないので、自分には真似できないなと思います。日本人のバッティングは、体を使ってしならせて飛ばすというか、柔らかさが大切な要素になります。ただ、その「押す」バッティングも引き出しに入れておけば、自分のバッティングが崩れてきたときに、ドリルの一つになるなとは思いました。

――ここで学んだこと、気付いたことを生かして、来季にどうつなげていきますか?

今取り組んでいる目付けの部分は、やはり実戦でしか養えない部分ではありますし、今すごくいい収穫も得られているので、それを次のキャンプやオープン戦で生かして、いい結果につなげられればいいなと思っています。日本に帰ったら実戦はなくなるので、フォームなど別の部分の課題に取り組めればいいですね。

――オーストラリアで生活してみて、文化の違いに驚いたとか、なんかこの国面白いな、好きになったなと思えるところはありましたか?

あります。皆さん、人がいいですね、とても優しいですし、陽気です。一番いいなと思ったのは、凡退した後などに、ベンチで誰もその人に話しかけないとか、微妙な空気にならない点。凡退したりエラーしたりしてベンチに戻ってきたときでも、ハイタッチで「次、頑張ろう」と迎えてくれる。ベンチの中の雰囲気が、とてもいいんです。日本に帰っても自分の中でこの雰囲気を思い出して、「次、頑張ろう」と切り替えられればいいなと思っています。

――ベイスターズは今年、日本一に輝きました。あの日本一のメンバーにレギュラー争いの戦いを挑む、勝又選手の一番の武器は何になりますか?

やはり自分は打撃を頑張って、打撃で挑むしかないと思っています。そこはずっと、意識しています。

――勝又選手のインスタグラムを拝見して、お誕生日の日の「生まれてきて良かったぁーーーー!」というコメントがとても前向きというか、素敵な一言だなあと思って、感激していたんです。

自分はあまり前向きなタイプではなかったというか、考えてしまうタイプで、どちらかというとネガティブな要素のほうが強かったんです。でも周りの人たちに助けられて前向きになれているので、本当に感謝しています。来季こそ、一軍で結果を出して、皆さんの応援に応えたいと思います。

ⒸYDB


Profile
かつまた・あつし●2000年5月22日生まれ、東京都出身。日大鶴ヶ丘高から19年、ドラフト4位で入団。180cm83kg。右投左打。外野手。今季は一軍キャンプでスタートし、オープン戦まで帯同した。イースタン・リーグで57試合に出場し、打率.246、本塁打3、打点24。ABLでは19試合に出場、打率.233、二塁打2、打点7。外野守備でもノーエラー、たびたびの好返球で、チームに貢献した。


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