髙島泰都投手(メルボルン/オリックス)インタビュー
「ABLでの学びを引き出しに入れ、先発ローテーション争いに挑みます」
(明治)大学2年のとき準硬式野球の遠征でアデレードを訪れていた髙島投手にとっては、二度目のオーストラリア。5年の時を経て、プロ野球選手としてABLの公式戦に臨んだ今回は、どんな学びがあったのか。ABL最後の登板の翌日、オーストラリア生活の集大成を聞いた。
日本野球のよさを改めて実感
――NPBでのプロ1年目に感じた収穫と課題を教えてください。
1年目に中継ぎと先発の両方で投げて、いろいろな場面を経験できたことが、大きな収穫でした。一方先発としては、長いイニングを投げる体力や、勝負球の精度が課題だと感じました。
――ABLへの派遣を球団から告げられたとき、どういうことを勉強してこいとか、どういう経験ができるといいねといったひと言はいただきましたか?
「もう1種類ぐらい勝負できる変化球を習得してきなさい」というアドバイスはいただきました。
――こちらに来て、先発ローテーションで回ると言われたとき、髙島投手自身は何をその中での目標にしましたか?
僕の中ではいろいろ試せる時期でもあるので、試合でも練習でも、キャッチボールやブルペンから、考えたことを次々試してみました。実際に試してみないと、それが自分に合うかどうか分からないことが多いですから、さまざまな部分を変えていきながら、自分に最も合った形をオーストラリアで見つけようと思いました。
――先ほどの「勝負できる変化球」については、ご自分の中で「もう1つ身につけるならこれかな」みたいな球種が元々あったのでしょうか。
元々今年の終盤ぐらいから日本でもツーシームを投げ始めていましたが、まだそこまで安定していなかったんです。僕の中ではそれを安定させてストライクが取れたり、 ゴロを打たせたりできると楽になるので、ツーシームを完成させたいなと思っていました。
――実際ここまでのピッチング、練習や試合でも、いろいろなことは試せていますか?
そうですね。結構できているなと思います。例えばプレートを踏む位置を一塁側から三塁側に変えてみるとか、チェンジアップやカットボールの握りも、アドバイスをもらいながら、いろいろ試しています。試してみたことがよかったか悪かったかは日本でキャンプに入って、実戦で投げてみないと分からないところもありますが、現状の目的は果たせています。
――アドバイスをいただいたのは、メルボルンのピッチングコーチですか?
はい、ピーター・モイランコーチ(編集部注・元オーストラリア代表、アトランタほかMLBで13年活躍)にアドバイスをもらいました。モイランコーチも現役時代、右のスリークォーターからサイドぐらいの投げ方だったんです。僕もスリークォーター気味で、ちょっと似たようなところがあるので、チェンジアップにしても、ツーシームにしても教えられることがたくさんあったのだと思います。あと、僕は悪いとき、球が全部右方向に抜けていくことが多いので、そこをどう修正していくか。リリースポイントを一定にするためにはこうしたほうがいいよとか、ブルペンでこういうことをやってみたらどうかといったアドバイスもいただきました。
――そうしたアドバイスを試してみて、何か掴めたところはありましたか?
実はそれを最後の試合前の練習で教わったので、昨日(12月19日のキャンベラ戦)しか実戦する機会がなくて……。だからまだ安定してないところはあるんですが、そこそこ手応えはあったかなと思います。
――ABLでの経験は数字や結果以上に、日本とは違った環境の中で、何かを感じて帰ることが非常に大切だと思うんです。髙島投手は今回、そういう部分はありましたか?
日本から通訳の方とトレーナーの方を合わせて5人で来ていまして、毎日が完全な共同生活、集団行動みたいな形になっているんですね。日本だったらチームで動くとき以外は自分のペースで自主練習もできるんですが、こちらでは必ず5人全員で動くんです。そうした意味でも、改めて協調性が養われたというか。それからここに来て、いかに日本ではいい環境の中で野球ができているかを、身に染みて感じました。だから日本に帰国後は、また球団のいい施設で野球ができることに感謝しながら、しっかりやっていきたいなと思いました。それからもう一つ、やはり日本の野球のレベルは結構高いんだなと感じましたね。野手の人たちがバックでガッチリ守ってくれるからこそ……僕はあまり三振が取れるピッチャーではなくて、テンポよく打たせて、というところが持ち味なので、そこで野手との信頼関係をさらに築いていけたらいいなと感じました。
最後のマウンドで気付けたこと
――ABLの野球で何か面白いなとか、こういう世界ってあるんだなとか、思った点はありますか?
やはりパワーがありますよね。球場がそこまで広くないこともあるとは思いますが、バッターのパワーは、投げていて一番感じるところです。あとは、外国人選手って結構バッティングが粗いのかなと思っていたんですが、当てるのも上手いですし、ツーストライクに追い込んだ後、ファウル、ファウルで粘ってくることもあって、そこは意外でした。
――昨日の試合でいうと、2回にファウルで粘られたシーンがありましたね。三番のシミントン選手の打席の途中、一度キャッチャー(=エドワーズ選手)がマウンドに行きました。あれは何があったのですか?
あのときは、「サインを変えよう」と言われました。こちらでは日本と違ってセカンドランナーがサインを見てバッターに伝えても問題がないようで、他の試合でもイニング途中、たまに「サインを変えよう」と言われることがありました。
――2回までに3点を取られましたが、その後は相手に粘られることもなくなり、ピッチングも上向いてきました。何か修正できたのでしょうか。
修正というよりは、(ABLでは)最初から最後まで試合で打たれ続けたんですが、先発で「長いイニングを投げよう」と思うあまり、序盤からペース配分をしすぎたところが正直ありまして。僕みたいなピッチャーが最初からペース配分をしすぎると、逆に打たれることが多いなと試合中に思ったんです。「それだったら1イニング、1イニング、全力でしっかり投げて、そこで体力が尽きたら交代、みたいな感じでいこう」と思い直しました。打たれすぎて少し弱気になっていたようなところもありましたし、最後のマウンドでヤケクソじゃないですけど、「もう本当に最後なんだから」と思って、真っすぐも変化球もしっかり腕を振って投げ始めてから、真っすぐもそれほどファウルにならなくなりましたし、カットボールも多少ボール球でも手を出してもらえるようになりました。本当に最後の最後ですけど、いろいろ気付けましたね。
――だから、昨日はもう少しマウンドでの姿を見ていたかったなと思いました。野球でも、これからの髙島投手の人生にとってでも、オーストラリアに来て一番の収穫はなんでしたか?
野球のことでいうと、今回僕があまりうまくいかないことが多かったので、モイランコーチが僕を結構気にかけてくれて、いろいろ教えてくれたことがありがたかったし、僕の引き出しになりました。日本に帰ってもまたいいとき、悪いときがあると思うんですが、悪くなったときに今回教わったことを試してみたら、もしかするとよくなるかもしれない。そうした引き出しが増えたのは、大きな収穫だったと思います。
――この経験を生かして、来年はどんな年にしたいですか。
今年はチームにケガ人が多かったので、「1年目だから経験させてみよう」というところで僕が投げさせてもらえた部分もあったと思うんです。来年はもう社会人出の2年目ですし、自分で掴みにいかなくてはなりません。先発に関しては補強もありましたし、古田島(成龍投手)の先発転向もあってライバルは多いですが、そこを勝ち抜いて、1年間しっかり先発で回れたらいいなと思います。