![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/170581922/rectangle_large_type_2_3fec632d92a524ed3d8fa8214cc22f00.jpeg?width=1200)
ネイサン・デービソンさん(アデレードGM)インタビュー
“2つのジャイアンツ”の関係がより長く、より広がりを見せながら続くことを願っています
読売ジャイアンツが今季、アデレード・ジャイアンツに京本眞、山田龍聖、秋広優人の3選手を派遣。2010年に亀井義行選手ら6人をメルボルンに派遣して以来、実に14年ぶりのABL参加だった。同じ“ジャイアンツ”からの選手派遣に数年来、力を注いでいたアデレード・デービソンGMに話を聞いた。
3選手は今回の経験を楽しんでくれた
――最初に読売ジャイアンツと選手派遣に関する話し合いを始めたのは、いつごろでしたか?
コロナ禍の前だったので、2019年ごろでしょうか。巨人軍の事務所を訪ね、当時のフロントスタッフの方々とお会いしました。でも、その年は非常にタイミングが悪かった。すでに巨人は、他国のウインターリーグへの選手派遣を決めたところだったのです。間もなくコロナ禍が訪れ、さらにタイミングを逸してしまいました。そこで、また時期を改めて話し合いをすることになり、その後も連絡を取り続けました。
――そこから今季、選手派遣が実現するまでには、どんなことがあったのですか?
一昨年の1月、巨人軍のフロントスタッフが10日間ほどアデレードへ視察に訪れました。私たちはそこで(シーズン中の)チームの動きをひと通り、お見せしました。球場、ウエイト・トレーニングの施設、ホテル、食事……。またスポーツ・インスティテュート、アデレード・フットボールクラブ、クリケットのアデレード・オーバルも案内しました。彼らはそれを日本に持ち帰り、球団に報告しました。しかし、その後(巨人の)フロントスタッフの異動等もあり、話を進めるのに少し時間を要しました。
今年6月、巨人の新しい球団社長と会ったときには、先方も派遣に前向きでした。次の段階は、ではどんな選手を何人派遣するか、ということ。そこから交渉が始まりました。ただ、アデレードの選手枠には、もうあまり余裕がありませんでした。オーストラリア人選手、提携しているフィリーズの選手との兼ね合いがありましたから。そこで私たちとしては、3選手を受け入れ可能だと回答しました。
それから、どんな選手を派遣してもらうかの話し合いですね。私たちは投手2人と内外野いずれかの野手1人を希望しました。そして今回の京本眞投手、山田龍聖投手、秋広優人選手の派遣が決まりました。今回が初めての派遣でしたので、今後の両球団の話し合いのうえではありますが、こちらとしてはもう少し選手枠を増やし、巨人から4人派遣してもらえるようになれば理想的ではないかと考えています。
――巨人から今回の派遣後、何かリポートは上がりましたか?
クリスマス前に3選手が帰国して間もなく、今回のフィードバックがありました。まず選手たちはオーストラリアでの時間を楽しんでくれたようです。彼らはより力を伸ばせるよう努力し、それを助けるために私たちが行なったことを喜んでくれました。また、私たちがどのようにデータを管理し、どうトレーニングの戦略を立て、実際どのようなことを行なったか、その経験を楽しんでくれましたね。
今回の派遣は、両球団にとって良い経験になったと思いますが、巨人とは今後も話し合いを続け、双方向により良好な関係を築きたいと考えています。巨人がアデレードへの選手派遣から何を得たいのかをさらに深く理解し、私たちもそれをきちんと提供できるようにしたいのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1737185256-MfWZi13CPXIdAnE2sojT9Nz7.jpg?width=1200)
(Photo: Baseball Australia)
巨人との提携でアデレードの信頼度もアップ
――今回派遣されてきた3選手について、デービソンさんはどう評価していますか?
3人とも、とても優れた選手でした。すでにNPBでプレーしているレベルの選手なので、次回はこちらとしてもより良い準備をして迎えたいと思います。今回はNPBのプレーオフに巨人がかかわっていたこともあり、こちらの想定より4、5日遅くのアデレード入りになりましたから。
秋広選手の打撃は素晴らしかったですね。彼は、オーストラリアがどんなところか理解するのに少し時間がかかりました。日本の球場でプレーする野球とは、ここの野球は少し違った競技なのです。しかし、彼は自分のやりたいことに一生懸命取り組み、(アデレードの)クリス・アダムソン監督は、情報をどう処理するか、彼がどんな選手になりたいかという点で、同じ言語で話をしようと、彼と一緒に取り組みました。私たちが少しでも力を貸すことができれば、彼らの目標は達成できるのです。
京本投手はずっと素晴らしいピッチングを見せてくれて、おそらく今季のABLでも最高の投手の一人になりました。彼は自分の武器となる球種をたくさん持っている。とても能力の高い投手ですね。それから山田投手も私たちの球場にぴったりの、完璧な左腕でした。とにかく3人ともチームにとてもよくなじみ、英語があまり話せなくても、愛すべき素晴らしいチームメイトになってくれました。
――チームのSNSや、オンライン中継の日本語放送のゲストに来た際のお話を聞いても、3人とも明るくて楽しい選手だったようですね。
そうそう、3人ともとてもフレンドリーで明るい選手でしたね。私たちも彼らをとても歓迎していましたし、彼らがチームの一員であることを実感してほしいと思いました。この2カ月間だけでなく、彼らは永遠にアデレード・ジャイアンツの一員であるということをね。
――巨人軍とのこの関係は、今後アデレードに何をもたらすと思いますか?
世界でも有数の、最も大きな野球チームの1つと提携することによって、アデレードの信頼性も高まるでしょう。それは私たちにとって誇るべきこと。私たちは、巨人とどのようなパートナーシップを結ぶにしても、それを長期的なものにしたいし、巨人もできる限り長く続けたいと言ってくれています。だからこそ、今回の派遣までに十分な準備期間を費やし、彼らが何をしたいのか、こちらサイドに十分理解してもらおうとしたのだと思います。
私たちは、両球団のこの関係が、これからさらに拡大していくことを願っています。そうすれば、より多くの選手、より多くのスタッフ、より多くの理学療法士、より多くのフロントオフィススタッフが、この派遣に関わりたいと考えるようになるでしょう。そして今度は、私たちが日本に行って、トレーニング施設やトレーニング内容など、日本野球の隅々までしっかり見てきたいですね。そうすれば、いよいよお互いから多くを学び合うことができるでしょう。
――逆にアデレードから巨人軍へ、選手を送り込むこともありえますか?
NPBは日本人以外の選手を一定数しか登録できないうえ、世界中から優れた選手を探してきますから、簡単なことではないですが……。でもそうですね、アデレードかオーストラリア代表選手の中から、誰か巨人軍でプレーする選手が出るといいですね。例えばラクラン・ウェルズ(投手=アデレード)とアレックス・ウェルズ(投手=メルボルン)兄弟とか。より多くの人やチームを巻き込んで、協力し合い、野球を通した日本とオーストラリアの関係を広げていければいいと思います。
Profile
Nathan Davison◎1992年、南オーストラリア大学卒。旧ABL時代のアデレード・ジャイアンツで10シーズン、プレー。392試合に出場し、打率.312の成績を残す。コーチを務めたあと、南オーストラリア野球連盟のディレクター、MLBフィリーズのオーストラリア担当スカウトなどを経て、アデレード・バイト(ジャイアンツの旧名称)のアシスタントGM、GM、CEO。19年からジャイアンツGM。