寺地隆成捕手(シドニー/千葉ロッテ)インタビュー
「キャッチャーとしてここで感じたことを生かし、バッターとしても確かな成長を遂げたい」
ルーキーイヤーの昨季、ストロングポイントの打撃を生かし、一軍で2試合の先発出場を果たした寺地捕手。投手陣とのコミュニケーションが必要なキャッチャーという難しいポジションながら、ABLでも先発マスクを被り、投手陣の信頼を得た。この経験を2年目のステップアップにどうつなげるか、楽しみだ。
監督の助言で初心に返った
――まずはNPBでの今季を振り返って。どんなシーズンになりましたか?
バッティングのほうでは結構いい結果が出せたんじゃないかなと自分の中で思う半面、やはり守備の面でなかなかレベルアップが……。多少はできたと思うんですが、まだまだ自分が考えている以上のレベルには到達できなかったので、そこをこれからの課題として向き合っていきたいです。
――とはいえ、高卒1年目で一軍を経験。ご自身のいいところは出せましたか?
最後の2試合ではありますが一軍の試合に出させていただいて、1打席目でプロ初ヒット(10月3日の日本ハム戦で、達孝太投手から)も打てましたし、2試合目はキャッチャーとしてスタメンマスクも被らせていただきました。 1年を通してファームでやってきたことを、全力でしっかり全うできたのではないかと思います。
――寺地選手なりに、一軍で生き抜くための秘訣といいますか、「こういうことが大切なんだな」と感じたところはどこですか。
負けん気といいますか。一軍の正捕手の方や、キャッチャーの先輩方の中でも負けないよう、自分も食い込んでいかないと、ずっと一軍に帯同することも、ましてや試合に出場することはできないと思いますから。
――今回、ABLでどんなことを学んでこようと思って来ましたか?
(NPBの)シーズンが終わってから試合をできる機会というのはなかなかないですが、 1年目からこうして機会をいただいたわけですから、バッティングの課題に取り組んでこようと思いました。僕はインコースがなかなかうまく打てないので、この1カ月、少しでも打てるように、意識して取り組んでいます。
――実際そのへんは……例えば相手投手陣の攻め方はどうなんでしょう?
日本と比べたら、やはりちょっとアバウトなところがありまして。日本ではコントロールのいいピッチャーが多いので、外なら外、インコースならインコースと同じコースをずっと攻められることもあるんですが、こちらでは球の強さで勝負している感覚はあります。
――その中でも、インコースの勉強はできていますか?
たまに来ることもあるんですが、まだ(ボール球に)手を出してしまったり、ファウルにしたりしている部分があるので、このあと数試合でなんとか1本か2本、自分の中でキレイにというか、しっかりバットを出してインコースを確実に振っていきたいなと思っています。もちろんいろいろな投手への対応も、勉強していきます。
――こちらの監督やコーチも、アドバイスをくださることがありますか?
シーズン 1週目、2週目になかなか結果が出なかったとき、「バットを最短で出したほうがいいんじゃないか」「肩に力が入り過ぎているよ」とアドバイスをいただきました。日本にいたときは自分でも気付けていたことが、こちらに来て気付けなかった。もう一度初心に返るじゃないですけど、大切なことを思い出すことができました。そこから少しずつ、調子が上がってきたんじゃないかと思っています。
食の大切さをオーストラリア生活で改めて実感
――ではバッティングのほうは、残り2週間ちょっとで仕上げをして(取材日は12月7日)、という感じですね。キャッチャーとして、ピッチャーとのコミュニケーションはどうしていますか?
最初はなかなか自分から言い出せることがなかったんですが、マリーンズから同行してくださっているスタッフの方に通訳していただきながら、徐々に会話も増えてきました。
――対戦相手の細かい情報はもちろん、自チームのピッチャーの情報も一から知らなければならない中、どんなふうにリードしているのでしょう?
1巡目は基本的にピッチャー主体の配球というか、ピッチャーのいい球をどんどん選んでいき、2巡目、3巡目には打者の1巡目のバッティングや見逃し方を見て、「この打者にはこの球が合ってないんじゃないかな」と思う球を投げていくようにしています。
――それは、データに基づいてリードしていくより難しいですか?
難しいですね。データがあれば、それを参考にしつつ、試合の中で感じたことを配球に組み込んでいく形になるんですが、こちらでは試合の中で感じることを基にして、あとはピッチャーの投げたい球を選択しなければいけないので、なかなか1巡目で「今日の配球はこういうパターンで」と判断するのは難しくなります。
――でもデータに+αする「感じること」の部分をこちらで磨ければ、日本に帰ってからも生かせそうですね。
外国人選手の場合、「合っていなかったな」と思って続けると、次は合うこともたまにあるので、そういうときどうしたらいいのか、自分の中で迷い中というか、考えているところです。
――特に投手陣で、仲のいい選手はできましたか? なんかよく絡んでくれるとか、話しかけてくれる選手は誰ですか。
先発投手陣を中心に、仲良くさせてもらっています。中継ぎではコーエン(・ウイン投手)、ジョシュ(・ガイヤー投手)の2人もフレンドリーに話しかけてくれるので、結構やりやすいというか。自分もリードしやすい感じがしています。みんな、結構僕に気を使ってくれるんです。もちろん、時には首を振って、自分の投げたい球を投げることもありますが。基本はサインに頷いて、投げてくれますよ。
――じゃあ、投手陣の心をがっちり掴みつつありますね。
最初はチームメイトに絡みづらい部分もあったんですが、みんなとてもフレンドリーでめっちゃ話しかけてくれるので、それに助けてもらっている感じです。
――オーストラリア生活全体で学んだことはありますか? あるいはここでの生活を通して、何かちょっと自分が変わったなと思えることとか。
日本にいると、食事を出されて自分は食べるだけという感じですが、こちらの生活では基本、自炊することが多いので、食の大切さは強く感じました。いずれ寮を出たら、こうやって自分で生活していかなければいけないんだなっていうことが、結構身に染みています。
――この経験をどう生かして、来季はどんなシーズンにしていきたいですか?
キャッチャーでいうと、「試合で感じること」ことが一番だと思うんですけれども、それをしっかりここで感じて、日本に帰ってもリードに生かせるようにすることと、2月、3月のキャンプ、オープン戦でブロッキング、送球などレベルアップしたところを見せていくこと。そして、バッティングのほうも今年より成績を残せるように頑張ります。
――今、正直なところ、キャッチャーとしてとバッティングのほうとでは、どちらでアピールをすることが一軍定着に近いと思っていますか?
一番はやはり、自分の売りとしているバッティングだと思っています。キャッチャーとしての技術が未熟な分、まずは人よりバッティングを伸ばしていかないと、一軍には帯同できないし、さらにそこで生き残れないと思います。